833 / 1,466
深く集中
しおりを挟む
うむ、昨夜は良く眠る事が出来た。
疲れが溜まってたんだろうな…色々と…本当に色々と…。
多分、地球時間で言えば12時間近くは寝てたはずだ。
前世、地球では毎日せいぜい6時間程度しか眠れてなかった。
若い頃はもっと眠れていたはずなのだが、離婚した後ぐらいから段々と眠れなくなってきて、病院で眠剤を貰うようになった。
医者が言うには、過去の自分の行いを悔いたりする事が、精神的にストレスとなっていて、それが不眠に繋がったのではとの事。
言われてみれば思い浮かぶ事もあったし、色々と後悔していたことも間違いなかったから、その通りなのだろう。
結局、医者に言われるがままに眠剤を常用する事となってしまった。
それでも睡眠時間は長くて6時間程度だったのだが…。
この世界では人々は陽が出る頃には起き出して仕事をし、陽が沈むと家に帰り、床に就く。
TVで観たどこかの原住民の様な生活だな。
これは、遅くまで起きている事が、経済的負担となっている為でもある。
俺の領地や父さんの領地では、街に街灯が設置されていて、夜間も明るい。
特に温泉スパリゾートでは、深夜まで煌々と照明が点いているのだが、一般的な市民の家や他領では、その様な光景はまずお目にかかる事は出来ない。
昔、アルテアン領の隣領である町に行った時…えっと、確かあそこの領主はアルビーン男爵だったっけ? の街では、一部の飲食店でのランプの明かりや、兵舎や街門付近で、夜間の警護用に篝火がたかれているぐらいなもんだ。
その明かりが届かない場所では、夜間は真っ暗だった。
あの男爵、確か物理的にこの世から消えたんだったっけ? ま、それはいいや。
一応、男爵が治める街とは言っても、そんなもんだ。
この世から物理的にバイバイしちゃった馬鹿男爵の屋敷は夜でも煌びやかだったが、あの馬鹿の領地である街は真っ暗だった。
つまりは、暗闇に乗じて悪だくみする奴らにとっては天国とも言える。
妖精さんや精霊さんが、あの馬鹿男爵の不正の証拠や金銀財宝を屋敷から全部奪って来させることが出来たのも、この暗がりのおかげでもあるけれど。
おっと話が逸れたな。
だが、この世界に転生して来た俺は、不眠症など縁遠いのだよ。
あ、睡眠不足は常々感じてますよ?
嫁ーずが毎夜のごとく張り切りすぎたりするもんで…。
んんっ! それはおいといて…何の話だっけ?
あ、そうそう、昨夜はゆっくり眠れたって事だ!
起床した俺は、まずは毎朝の日課である鍛錬のため、動きやすい服装に着替えて裏庭に向かう。
廊下ですれ違うドワーフメイドさんたちと、軽く挨拶を交わして裏口から外に。
すーはー、すーはー…。
うむ、静謐かつ清閑な早朝のこの空気、俺は好きだ。
さて、ではまずは身体を解し、ゆっくりと全身の筋肉や骨格、関節の動きを意識しながら、空手の型をなぞっていこう。
足運び、呼吸もしっかりと意識し、だんだんと深く型へと没頭していく。
無断な動きは削り落とされ、型はより一層洗練されてゆく。
より早く、より正確に、どこに力を入れ、どこで力を抜くのか…それだけを意識して、深く集中する。
集中すると周囲の物音などが聞こえなくなるとかいう人もいるが、俺の場合は深く集中すればするほど、周囲の小さな気配も感じる事が出来る。
…今、イネスが剣を持って屋敷から出て、どうやら素振りをする様だ。
小鳥が裏庭の木で2羽囀っているな?
2階の窓辺にはメリルとミレーラが顔を出しているのかな?
3階の窓からは母さんとコルネちゃんか…ユリアちゃんはまだ寝てるのか?
1階の廊下の窓辺にはミルシェとマチルダ、それとユズキかな? ユズカはまだ寝てるようだ…妊婦だから仕方ないか。
厨房ではドワーフメイドさん達が忙しく動き回っている。
そんな事すらも手に取る様に感じられる。
ん? ユズカはまあ良いとして、サラとリリアさんは?
妖精さん達は完全に気配を消せるから感じないのは不自然ではないけれど、あの2人は地下か…?
いや、地下からも2人の気配は感じない…だとしたら、あの2人はどこ行ったんだ?
俺は両足を揃え、拳を両の腰に付け、目を閉じ横隔膜を意識しつつ、ゆっくりと胸に吸い込んだ空気を丹田へと落とす様に呼吸し、そしてそれを今度はゆっくりと吐きだした。
何度かこの腹式呼吸を繰り返し、体の隅々にまで酸素を送り込み、身体を落ち着かせ、目を開けた。
隣では、イネスがまだ裂帛の気合で素振り用のデカい剣を振っていたが、俺へと顔を向けると、イネスも剣を収めた。
「トール様、もう朝の鍛錬は終わりですか?」
イネスがそう語りかけてきたので、俺は小さく頷きながら、
「ああ、今朝はこのぐらいで終わろう。それよりも、ちょっと気になる事がね…」
俺の言葉に、首を傾げていたイネスだったが、気になる事の内容を言ってないから、そりゃそうだろうな。
さて、それでは俺の気になる事、あの輪廻転生管理局の馬鹿局員2人組がどこ行ったか、きっちり突き止めようではないか。
疲れが溜まってたんだろうな…色々と…本当に色々と…。
多分、地球時間で言えば12時間近くは寝てたはずだ。
前世、地球では毎日せいぜい6時間程度しか眠れてなかった。
若い頃はもっと眠れていたはずなのだが、離婚した後ぐらいから段々と眠れなくなってきて、病院で眠剤を貰うようになった。
医者が言うには、過去の自分の行いを悔いたりする事が、精神的にストレスとなっていて、それが不眠に繋がったのではとの事。
言われてみれば思い浮かぶ事もあったし、色々と後悔していたことも間違いなかったから、その通りなのだろう。
結局、医者に言われるがままに眠剤を常用する事となってしまった。
それでも睡眠時間は長くて6時間程度だったのだが…。
この世界では人々は陽が出る頃には起き出して仕事をし、陽が沈むと家に帰り、床に就く。
TVで観たどこかの原住民の様な生活だな。
これは、遅くまで起きている事が、経済的負担となっている為でもある。
俺の領地や父さんの領地では、街に街灯が設置されていて、夜間も明るい。
特に温泉スパリゾートでは、深夜まで煌々と照明が点いているのだが、一般的な市民の家や他領では、その様な光景はまずお目にかかる事は出来ない。
昔、アルテアン領の隣領である町に行った時…えっと、確かあそこの領主はアルビーン男爵だったっけ? の街では、一部の飲食店でのランプの明かりや、兵舎や街門付近で、夜間の警護用に篝火がたかれているぐらいなもんだ。
その明かりが届かない場所では、夜間は真っ暗だった。
あの男爵、確か物理的にこの世から消えたんだったっけ? ま、それはいいや。
一応、男爵が治める街とは言っても、そんなもんだ。
この世から物理的にバイバイしちゃった馬鹿男爵の屋敷は夜でも煌びやかだったが、あの馬鹿の領地である街は真っ暗だった。
つまりは、暗闇に乗じて悪だくみする奴らにとっては天国とも言える。
妖精さんや精霊さんが、あの馬鹿男爵の不正の証拠や金銀財宝を屋敷から全部奪って来させることが出来たのも、この暗がりのおかげでもあるけれど。
おっと話が逸れたな。
だが、この世界に転生して来た俺は、不眠症など縁遠いのだよ。
あ、睡眠不足は常々感じてますよ?
嫁ーずが毎夜のごとく張り切りすぎたりするもんで…。
んんっ! それはおいといて…何の話だっけ?
あ、そうそう、昨夜はゆっくり眠れたって事だ!
起床した俺は、まずは毎朝の日課である鍛錬のため、動きやすい服装に着替えて裏庭に向かう。
廊下ですれ違うドワーフメイドさんたちと、軽く挨拶を交わして裏口から外に。
すーはー、すーはー…。
うむ、静謐かつ清閑な早朝のこの空気、俺は好きだ。
さて、ではまずは身体を解し、ゆっくりと全身の筋肉や骨格、関節の動きを意識しながら、空手の型をなぞっていこう。
足運び、呼吸もしっかりと意識し、だんだんと深く型へと没頭していく。
無断な動きは削り落とされ、型はより一層洗練されてゆく。
より早く、より正確に、どこに力を入れ、どこで力を抜くのか…それだけを意識して、深く集中する。
集中すると周囲の物音などが聞こえなくなるとかいう人もいるが、俺の場合は深く集中すればするほど、周囲の小さな気配も感じる事が出来る。
…今、イネスが剣を持って屋敷から出て、どうやら素振りをする様だ。
小鳥が裏庭の木で2羽囀っているな?
2階の窓辺にはメリルとミレーラが顔を出しているのかな?
3階の窓からは母さんとコルネちゃんか…ユリアちゃんはまだ寝てるのか?
1階の廊下の窓辺にはミルシェとマチルダ、それとユズキかな? ユズカはまだ寝てるようだ…妊婦だから仕方ないか。
厨房ではドワーフメイドさん達が忙しく動き回っている。
そんな事すらも手に取る様に感じられる。
ん? ユズカはまあ良いとして、サラとリリアさんは?
妖精さん達は完全に気配を消せるから感じないのは不自然ではないけれど、あの2人は地下か…?
いや、地下からも2人の気配は感じない…だとしたら、あの2人はどこ行ったんだ?
俺は両足を揃え、拳を両の腰に付け、目を閉じ横隔膜を意識しつつ、ゆっくりと胸に吸い込んだ空気を丹田へと落とす様に呼吸し、そしてそれを今度はゆっくりと吐きだした。
何度かこの腹式呼吸を繰り返し、体の隅々にまで酸素を送り込み、身体を落ち着かせ、目を開けた。
隣では、イネスがまだ裂帛の気合で素振り用のデカい剣を振っていたが、俺へと顔を向けると、イネスも剣を収めた。
「トール様、もう朝の鍛錬は終わりですか?」
イネスがそう語りかけてきたので、俺は小さく頷きながら、
「ああ、今朝はこのぐらいで終わろう。それよりも、ちょっと気になる事がね…」
俺の言葉に、首を傾げていたイネスだったが、気になる事の内容を言ってないから、そりゃそうだろうな。
さて、それでは俺の気になる事、あの輪廻転生管理局の馬鹿局員2人組がどこ行ったか、きっちり突き止めようではないか。
1
お気に入りに追加
1,833
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?
後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。
目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。
日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。
そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。
さて、新しい人生はどんな人生になるのかな?
※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします!
◇◇◇◇◇◇◇◇
お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。
執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇
9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます!
9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~
はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま)
神々がくじ引きで決めた転生者。
「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」
って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう…
まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる