システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

文字の大きさ
上 下
803 / 1,466

あくびちてぇ~

しおりを挟む
 保護地区の門を通り抜けた俺達は、門の近くに車を停め、コルネちゃん達の姿が見える場所まで物陰をこそこそと移動した。
 この場所は拓けているとは言っても、そこかしこに大樹が生えているので、見つからない様に移動するのもそう難しくない。
 バス停はそんな樹齢千年はあろうかという、大樹の根元の洞の前にある。
 この世界、平地では滅多に雨は降らないんだが、それでももしも雨が降った時の為、この場所にバス停を設けたのだ。

 さて、俺達はこそこそと大樹の陰からコルネちゃん達を監視…もとい見守っていたのだが…。
「めっちゃナディアが挙動不審だな…」
 視線の先では、ナディアがわたわたしていた。
 まあ、ナディアは俺の思考を読めるわけなんで、俺達の行動は全部筒抜け。
 俺達がこの場にいる事も、そして自分達を監視…もとい見守っている事も全部知っているナディアなのだから、それも当然か。。
 しかも、それがコルネちゃん達にばれない様に隠している分けなのだが…見てる限りでは、挙動不審すぎる。
 俺達は大樹の陰から、そっとそんな4人を見ていたのだが…ん? ユズカが、こっちに向かって手を振ってる…何故に?
 ユズカが手を振っている相手は一体誰だ? もしや浮気相手か? 
 俺は背後を振り返ってみたのだが、誰もそこには居ない。
 あれ?
 何となく嫌な予感がして、大樹の反対側からコルネちゃん達を見ていたユズキの元へと行くと…手、振ってやがる…。
 こいつかよ! こいつが元凶かよ!
 思わず拳を握っちまったぜ、殴りたくなって!
 すると、当然だがコルネちゃんも、ユリアちゃんも気付く…そりゃ当然だわな!
「おにいちゃーーーーーん!」
 ユリアちゃんが大声で叫んだ。
 ナディアが、遠くからでも分かるぐらい、大きなため息を付いていた。
「はやくこないと、おいてっちゃうよーーーー!」
 めっちゃ呼ばれた。
 嫁ーずも苦笑いしながら、「それじゃ…行きましょうか」と大樹の陰から出た。
 うん、もうしょうがないな…陰から見守り隊は、もうここで解散だな。
 俺も大樹の陰から、手を振りながらユリアちゃんとコルネちゃんの元へと向かって歩いた。

「それで、どこへ行くつもりだったんだ。コルネちゃん」
 バス停で4人と合流した俺は、取りあえず行き先をコルネちゃんに訊いてみた。
「行先はですね…あ、バスが来ましたね。取りあえず乗ってから話します」
 コルネちゃんが答えようとした時、森の大樹をぬう様に、音も無く虎バスがやって来た。
 にゅぃーーんっと、胴体の一部が開いて俺達が乗りやすいように低くなってくれる虎バス君。
 そこに、先客のエルフやドワーフや人魚さんが乗り込んだ後に、俺達も続いて乗り込む。
 中はふわふわでとても乗り心地は良い。
 全員が乗り込んだのを確認した後、にゅぃーーんと入り口が閉まって、虎バスは樹海を走りだす。 
 さすが猫科の動物をモデルにしただけあって、変な揺れも無く足音もしない。
 正確には多少の上下の揺れはあるのだが、クッションが滅茶苦茶良いシートが揺れを吸収してくれているのか、我慢できない程の揺れでは無い。 
 ただ風を切り裂く音だけが聞こえる。

 そんな虎バスの車内で、再度コルネちゃんに訊いてみた。
「んで、目的地は?」
 するとコルネちゃんが口を開くよりも早くユリアちゃんが、
「うみいくの!」
 その言葉に、俺と嫁ーずは、大きな疑問符を頭に浮かべ首を傾げながら一言。
『うみ?』
 すると、ユリアちゃん、両手を上げて、
「うみにあくびちてぇ~っていうのつくってるの! きょうはできたってきいたから、おためしなの!」
『あくびちてぇ~』
 さらに俺達の頭の上に疑問符が増えた。
 あくびしたいのか? 
「ユリアちゃん、あくびちてぇ~じゃ無くて、アクティビティよ。お兄さま、今から向かいますので、行けば分かると思いますわよ」
 言い間違えたユリアちゃんの言葉を、コルネちゃんがやんわりと訂正し、俺に教えてくれたが、
「アクティビティ? って、どんなの造ったの? ってか、そんな言葉どこから?」
「あ、いえ…私では無く、アクティビティはユズカさん発案です。それでドワーフの親方さんと一緒に計画してたそうです。なのでアクティビティの詳細は、彼女に直接確認していただけたらと…」

 そう言ってコルネちゃんがユズカへと顔を向けたので、俺もユズカへと視線を向ける…すると…。
「もう、こっそり後をつけて来て…そんなに心配だったの?」
「あ、当たり前じゃないか! 僕は柚香が…浮気してるんじゃないかって心配で…」
「するわけ無いでしょう。馬鹿ね…私は柚希一筋よ」
「柚香…」「柚希…」
 こいつら、ここがバスの中だって分かってんのか?
 バスのお客さん、全員の注目の的になってんぞ?
「「愛してる…」」
 互いの顔が近づき…って、待て待て待て!
「すとっぷすとっぷすっとーーーーーっぷ! 場所を弁えろ、この馬鹿夫婦!」
 俺は2人の唇が触れる寸前で止めたのだが、何故かバスの中は大ブーイング。
 え、皆…もしかしてチュー見たかったの?
 え、ユズカ…何で止めるんだって? そりゃ止めるだろーが!
 
「もう、トール様は無粋ですわねえ…」
「ですね。キスぐらい、別に構わないと思うけど」
「で、でも…ユリアちゃんには…ちょっと早いかも…」
「ミレーラさん、これも勉強です」
「仲良きことは美しき哉」
 嫁ーずも好き勝手言ってくれる。
 え~メリルさん、俺って無粋なんですか? あ、そうですか…無粋ですか…。
 ミルシェよ、ぐらいって何だぐらいって! ほっとくと、あの夫婦は、それ以上も始めちゃうぞ?
 ミレーラ君、良い事言った!
 マチルダさん、俺はまだこっち方面の勉強は早いと思います。
 んでイネスよ…どこでそんな言葉覚えたんだ? それは、武者小路実篤大先生のお言葉ではなかったっけ?
  
 こんな風にバスの中は賑やかではあったが、そんな事に関係なく、虎バスは音も無く樹海の中を疾走していた。


※こっそり新作投稿しています。
 姫様はおかたいのがお好き
 不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!
しおりを挟む
感想 725

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

処理中です...