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あと少し
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街道を走る蒸気自動車は、速度を上げるごとに、しゅぽしゅぽというどこかのんびりした音から、しゅしゅしゅしゅ…と少しだけ力強い音へと変化し、それに伴って自動車の後方側面の底部から噴き出す蒸気も増えていった。
まあ、噴き出した直後の蒸気をじっと触ったら火傷もするが、すれ違ったぐらいでは、ちょっと暖かい湯気が肌を撫でたかな? って程度まで温度を落としているので、まあ危険度的には前世での車のマフラーとそう変わりはない。
座席なんだが、俺の横にはコルネちゃんが座り、その膝の上にユリアちゃんが座っている。
俺の後ろの座席には母さんがにこにこしながら座り、ナディアはその隣だ。
その他の座席や荷物スペースにはは荷物がぎゅーぎゅー詰め。
さて、俺の横に座るコルネちゃんのお膝に座っているユリアちゃんは、あまり動くとコルネちゃんに迷惑が掛かるのでじっとしては居るのだが、それでも車窓の外を流れる風景から目が離せない。
やがて蒸気自動車が父さんと俺の領地を隔てるあの山脈への裾野へと差し掛かると、ユリアちゃんは大興奮。
先程までとはうって変わり、コルネちゃんのお膝の上と言う事も忘れて、手をバタバタしながら、身体全体を揺らしているので、ちょっとコルネちゃんの顔が歪んでしまった。
あれは、太腿が痛いだろうな…コルネちゃん…。
ユリアちゃんが、お外の何を見て興奮したのか? 賢明なる諸兄はお気付きかもしれないが、それは山脈のこちら側、つまり父さんの領地側に悠然と建つ第9番ダンジョンの、天を突くほどの威容を誇る巨大な塔だ。
このモフリーナが支配する巨大な第9番ダンジョンの塔は、最初の頃は綺麗な円筒型だったのだが、最近でもどんどんデカくなっていて、今ではすぐ近くの山裾を含む森を飲み込み、低層は歪な形となっている。
前世で見たTVに、どっかの国の蟻塚が付近の樹木を取り込んで変な形になってるのを見た事があるけど、あれに近いかも。
もう、一体内部がどういう構造になっているのか、想像もつかない。
「あらぁ…随分様変わりしたわねえ…ダンジョン…」
母さんも、後ろの席でダンジョンを見てぽつりとそう溢した。
「ユリアちゃん、ちょっと落ち着いて…お姉ちゃん、足が痛いから…」
あ、コルネちゃんがとうとう我慢できなくなったらしい。
「あぅ…ごめんなさぁい…」
お姉ちゃん大好きユリアちゃんは、しゅんとなって動きを止めたが、
「大丈夫よ、ユリアちゃん。また、お義姉さま達と遊びに来ましょうね」
何か、俺の嫁ーずを巻き込んで、無茶苦茶な約束をしていた。
もちろんユリアちゃん、大喜びで「やったー!」と、万歳してた。
コルネちゃんが、チラッと俺を見ながら、目で段取りしろって言って来てるのが雰囲気で分った。
仕方ない…今度モフリーナにお願いしとくよ…。
ま、巨大とは言っても、パンゲア大陸のダンジョン塔よりも直径は小さいんだけど、それはどうでもいっか。
そんな巨大なダンジョン塔を横目に通り過ぎると、山脈を貫通するトンネルが見えて来る。
入り口と出口は衛士が護っていて、必ず朝と夕方には数人の衛士が最初と最後にトンネル内を衛士が巡回して設備の異変や変な奴が居座って無いかをチェックしてる。
精霊建設さんとこのトンネルを造ってから(俺は何もしてないけど)今まで、事故と言えばトンネル内で馬車同士が接触したり、どっかの馬鹿がトイレを我慢できなくて隅っこで大きい方をやっちゃって、それを踏んずけ馬車がスリップしたぐらいで、それ以外に問題は起きてない。
だけど事故は事故。
トンネル内部を少々広げ、中央分離帯っぽくブロックで左右を仕切る事で、左側通行を徹底して接触事故を防止。
あと、公衆トイレも各所に設置している…有料だけど。
光の魔道具は高価ではあるが、増設した事でトンネル内とは思えない程に明るい。
この明るさの中、公衆トイレを使わずにお尻を出して、その辺で用を足す奴は居ないだろう。
こういった改良のおかげで、近年は事故の報告は受けていない。
トンネルに入る時、ユリアちゃんの目は期待でキラキラ輝いていたが、何時まも変わらない景色に飽きたのか、やがてすやすやと眠っちゃった様だ。
コルネちゃんは、そんなユリアちゃんを抱っこしながら、いいこいいこと頭を撫ぜていた。
後席の母さんも、どうやら呼吸が一定になった所から、寝ちゃった様だ。
どうも、ナディアも寝てるっぽい。
同乗者が寝ちゃうと、どうしても運転手も眠くなってしまうのだが、ここは気合で重くなる瞼を押し上げて運転した。
遠くにトンネルの出口が見えてくると、俺もコルネちゃんも、少しだけほっとした顔になった。
さ、あと少しで俺の領地だ。
頑張って運転しますかね。
※ こっそり新作投稿しています。
【姫様はおかたいのがお好き】
不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!
※ 第15回ファンタジー小説大賞 に参加させて頂いてます。
もしも気に入って頂けましたら、是非ぽちっとして頂けますよう、
よろしく <(_ _)> お願いします By 大国 鹿児
まあ、噴き出した直後の蒸気をじっと触ったら火傷もするが、すれ違ったぐらいでは、ちょっと暖かい湯気が肌を撫でたかな? って程度まで温度を落としているので、まあ危険度的には前世での車のマフラーとそう変わりはない。
座席なんだが、俺の横にはコルネちゃんが座り、その膝の上にユリアちゃんが座っている。
俺の後ろの座席には母さんがにこにこしながら座り、ナディアはその隣だ。
その他の座席や荷物スペースにはは荷物がぎゅーぎゅー詰め。
さて、俺の横に座るコルネちゃんのお膝に座っているユリアちゃんは、あまり動くとコルネちゃんに迷惑が掛かるのでじっとしては居るのだが、それでも車窓の外を流れる風景から目が離せない。
やがて蒸気自動車が父さんと俺の領地を隔てるあの山脈への裾野へと差し掛かると、ユリアちゃんは大興奮。
先程までとはうって変わり、コルネちゃんのお膝の上と言う事も忘れて、手をバタバタしながら、身体全体を揺らしているので、ちょっとコルネちゃんの顔が歪んでしまった。
あれは、太腿が痛いだろうな…コルネちゃん…。
ユリアちゃんが、お外の何を見て興奮したのか? 賢明なる諸兄はお気付きかもしれないが、それは山脈のこちら側、つまり父さんの領地側に悠然と建つ第9番ダンジョンの、天を突くほどの威容を誇る巨大な塔だ。
このモフリーナが支配する巨大な第9番ダンジョンの塔は、最初の頃は綺麗な円筒型だったのだが、最近でもどんどんデカくなっていて、今ではすぐ近くの山裾を含む森を飲み込み、低層は歪な形となっている。
前世で見たTVに、どっかの国の蟻塚が付近の樹木を取り込んで変な形になってるのを見た事があるけど、あれに近いかも。
もう、一体内部がどういう構造になっているのか、想像もつかない。
「あらぁ…随分様変わりしたわねえ…ダンジョン…」
母さんも、後ろの席でダンジョンを見てぽつりとそう溢した。
「ユリアちゃん、ちょっと落ち着いて…お姉ちゃん、足が痛いから…」
あ、コルネちゃんがとうとう我慢できなくなったらしい。
「あぅ…ごめんなさぁい…」
お姉ちゃん大好きユリアちゃんは、しゅんとなって動きを止めたが、
「大丈夫よ、ユリアちゃん。また、お義姉さま達と遊びに来ましょうね」
何か、俺の嫁ーずを巻き込んで、無茶苦茶な約束をしていた。
もちろんユリアちゃん、大喜びで「やったー!」と、万歳してた。
コルネちゃんが、チラッと俺を見ながら、目で段取りしろって言って来てるのが雰囲気で分った。
仕方ない…今度モフリーナにお願いしとくよ…。
ま、巨大とは言っても、パンゲア大陸のダンジョン塔よりも直径は小さいんだけど、それはどうでもいっか。
そんな巨大なダンジョン塔を横目に通り過ぎると、山脈を貫通するトンネルが見えて来る。
入り口と出口は衛士が護っていて、必ず朝と夕方には数人の衛士が最初と最後にトンネル内を衛士が巡回して設備の異変や変な奴が居座って無いかをチェックしてる。
精霊建設さんとこのトンネルを造ってから(俺は何もしてないけど)今まで、事故と言えばトンネル内で馬車同士が接触したり、どっかの馬鹿がトイレを我慢できなくて隅っこで大きい方をやっちゃって、それを踏んずけ馬車がスリップしたぐらいで、それ以外に問題は起きてない。
だけど事故は事故。
トンネル内部を少々広げ、中央分離帯っぽくブロックで左右を仕切る事で、左側通行を徹底して接触事故を防止。
あと、公衆トイレも各所に設置している…有料だけど。
光の魔道具は高価ではあるが、増設した事でトンネル内とは思えない程に明るい。
この明るさの中、公衆トイレを使わずにお尻を出して、その辺で用を足す奴は居ないだろう。
こういった改良のおかげで、近年は事故の報告は受けていない。
トンネルに入る時、ユリアちゃんの目は期待でキラキラ輝いていたが、何時まも変わらない景色に飽きたのか、やがてすやすやと眠っちゃった様だ。
コルネちゃんは、そんなユリアちゃんを抱っこしながら、いいこいいこと頭を撫ぜていた。
後席の母さんも、どうやら呼吸が一定になった所から、寝ちゃった様だ。
どうも、ナディアも寝てるっぽい。
同乗者が寝ちゃうと、どうしても運転手も眠くなってしまうのだが、ここは気合で重くなる瞼を押し上げて運転した。
遠くにトンネルの出口が見えてくると、俺もコルネちゃんも、少しだけほっとした顔になった。
さ、あと少しで俺の領地だ。
頑張って運転しますかね。
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