システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

文字の大きさ
上 下
782 / 1,466

昔から…?

しおりを挟む
「わ~~~~~♪ おしろがちっちゃくなったぁ~~~~~♪」
 飛行船がゆっくりと浮上すると、ユリアちゃんが窓にへばりつき、徐々に遠く小さくなって行く王城に元気に手を振りながら、歓声を上げた。
 もちろんユリアちゃんがへばりついているキャビン後部の窓ガラスはとても頑丈でそうそう割れる事も無いし、結界も展開しているのだが、何せスーパーウルトラ幼女のユリアちゃん。
 心配なのか、コルネお姉ちゃんは、ユリアちゃんにぴったり貼り付いて、
「ユリアちゃん、窓を叩いたり押したりしたらだめですからね?」
 などと注意をしている。
「はぁ~~~い!」
 そんなコルネお姉ちゃんの心配など、どこ吹く風のユリアちゃん。
 元気に返事をしつつ、高度が上がり雲の上に飛行船が出る頃には、ちょっと飽きたのかソファーに座る母さんの横に、たたたと駆けて行って、ポスッと座った。
 そんな自由なユリアちゃんの行動に苦笑いしながらも、コルネお姉ちゃんもユリアちゃんの隣に上品に腰かけた

 コックピット後ろの少し広い場所は、最近嫁ーずが新調したでっかい応接セットが置かれている。
 前方…ゆまり、俺が座る飛行船の下部と前後方向及び飛行船の上方向が映るカメラ映像(かどうか分からないけど)が良く見える様にコの字に配置された、余裕を持って5人は座わる事が出来るソファーが3台。
 そしてその真ん中に置かれた木目も美しい巨大なローテーブルはソファーに合計15人座ったとしても十分に茶器や食器を並べられる物で、どうやら嫁ーずの特注発注した品らしい。
 どちらも落ち着いたダークブラウンの色調なのだが、白系統の多い無機質な飛行船内部で空間とのアンバランスさが、逆にすっきりとしつつも落ち着いた雰囲気を醸し出している。
 飛行船の飛行は、元々あまり揺れないのが特徴なのだが、ホワイト・オルター号は空気抵抗すら結界で打ち消しているため、全くといって良い程に揺れない。
 ミルシェとマチルダとナディアがテーブルに真っ白い茶器を並べてお茶を淹れても、そのお茶には波紋すら立たない。
 そんなお茶を、優雅にソーサーごと持ち上げて愉しむ母さん。
「ミルシェさん、マチルダさん、ナディアさん、また腕を上げましたわね」
 そんな母さんの感想に、嬉しそうに微笑むミルシェとマチルダに、静かに礼をするナディア。

 まあ、いつも往復している王都とアルテアン領なので、もう浮かび上がってしまえば全自動なのだが、今はちょっとあの中に入る勇気がわかない。
 だって、俺の背後は、全員女。
 どっかの、『ドキッ! 丸ご○水着 女だらけの水〇大会!』 じゃないけど、あの中に飛び込む勇気は流石に無いぞ。
 だって、例のアルテアン家の女会議の内容だって知らないし…いや、怖いから知りたくないけど…そんな会議をしていた女性陣の中に無策で飛び込んだら、何を言われるか分からない。
 呼ばれるまでじっとここで操縦を…、
「トールちゃん、もう大丈夫なんでしょう? こっちにいらっしゃいな」
 しておこうと思ったけど、母さんから呼ばれてしまった。
 ここで逝かない…いや、行かないという選択肢は俺には無い。
「あ、うん…ちょっと設定だけするから、少し待って」
 別に何をするわけでもないけれど、呼吸と気持ちを落ち着ける時間がちょい欲しい。
 すーーーはーーーーすーーーはーーー…うん、落ち着いた。
 操縦席からゆっくしと立ち上がり振り返ると、全員の視線が俺に集中した。
 怖! 怖すぎるよ!
 別に怒ってたりしてる雰囲気でも無いから、出来る限り表情を変えずにソファーセットへと向かう。
 少しだけ口元に笑みを…上手く浮かべる事が出来てるかな?
 数段だけ高いその場所にゆっくりと歩み寄り、ソファーの端っこに俺はそっと座った。

「それで、トールさまが人魚さん達の為に、大お見合いパーティーを開催したのですわ、お義母さま」
 メリルが何か言ってるなあ…。
「そ、そうです…そのために…大きなホテルを造ったのです…」
 ああ、その話題にミレーラも乗っかるのかあ…。
「おっきなほてる!」
 ユリアちゃん、そこに食いつくの?
「確かにあのホテルからの眺めは最高だな」
 イネスも参加してきたか。
「お義母様、とても美しい滝の流れが見えるんですのよ?」
 マチルダの言う通り、あの滝はホテル自慢の景色だからな。
「そのホテルって、私達も宿泊できるのですか?」
 コルネちゃんが望むなら何泊でも出来ますよ。
「ええ、可能ですけれども、今は私達が企画したブライダル・プランで予約は結構埋まってますので、スィートは難しいかと…」
 何を言うか、ミルシェ! そこは可愛い妹の為に最上階のスィートフロアを貸し切りにすべきだろう!
 俺が心の中でそう答えた時、何故か全員の視線が俺に集まっていた。
 黙ってお茶をすすりながら、アルテアン家の女性陣の会話に黙って聞き入りつつ、俺は脳内で返事をしていたはずだが?

「いえ、マスター…全部声になっておりますけれども…」
「な、なんだとー!?」
 ナディアの衝撃告白に俺が恐れおののくと、
「あなたって、本当に隠し事が出来ないわよねえ…昔から…」
「……………」
 呆れた様に母さんがそう言い、ぐるりと嫁ーずもナディアを見回すと、全員が黙って頷いていた。

 俺って、昔からそうだったっけ?



※ こっそり新作投稿しています。
  【姫様はおかたいのがお好き】
  不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!


※ 第15回ファンタジー小説大賞 に参加させて頂いてます。
  もしも気に入って頂けましたら、是非ぽちっとして頂けますよう、 
  よろしく <(_ _)> お願いします By 大国 鹿児  

しおりを挟む
感想 725

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

処理中です...