システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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 大絶叫タイムから暫くして、ようやく応接室は静けさを取り戻した。
 地震のとうな先程の大音声は、屋敷中の人々…と、妖精さん達を応接室に緊急招集するのには打って付けだった様だ。
 この刺して広くも無い応接室に大集合させた。
 いや、狭くは無いな。
 日本で言えば俺の実家近くにあったお寺の本堂ぐらいはありそうだから、ざっと30畳ぐらいかな? 
 おっと、今はそれはどうでもいい。
 兎にも角にも、屋敷中の人々が押しかけてきているのだ。
 何故かコルネちゃんとユリアちゃんのペットである、黒猫又のノワール君もみんなの足元に居る。
 そもそも、父さんの屋敷には、メイドさんや執事さんだけでなく、門を護る門兵さんや庭師に馬丁といった下働きの人達だけでなく料理人も居るわけで、その数ざっと40人近く。
 多いな…俺の家なんてドワーフメイド衆&ユズユズ&使えないサラと、ちょっと使えるリリアさんぐらいなもんだ。
 妖精関連とペットは無視してって事でね。
 また横道に逸れた…。

 ってなわけで、全員集合した応接室の真ん中で、母さんが仁王立ちして宣言した。
「我がアルテアン侯爵家は、新たなる命を授かりました!」
『うおぉぉぉぉぉーーーー!』
 ぱちぱち…ばちばちばばばばばばばばっばばばっばば!
 このぎゅーぎゅー詰めの応接室の人達全員の歓声と拍手で耳が、きーーーん! ってなった。
 暫し歓声と拍手の波の中心で、天に両手を高々と上げ、目を閉じてそれを受け止めていた母さんが、両手を大きく振った。
 すると歓声と拍手が一瞬で止まる。
「ちょうど来年の今頃には、この屋敷に大きな産声が響く事でしょう。皆にはこの先色々と迷惑を掛けるかもしれませんが、どうか協力して欲しい」
『はいっっ!』
 パチパチパチ!
 使用人さん達が、めちゃめちゃやる気になって母さんの言葉に頷き返答した。
 それを聞いた母さんも、満足気に頷き、
「では、新たなる命の父であり、この屋敷の主であるアルテアン侯爵に挨拶をして貰いましょう!」
 いきなり父さんに話を振った。
 ってか、ソファーで感無量って顔で母さんの話を聞いていた父さんは、「え、俺!?」って吃驚してるけど、大丈夫か?
「え…あぁ…うん、ごほん! 皆の者、今ウルリーカが言った通り、新たなる命を我が家は授かった。これは大変喜ばしい事だ。我が家の長兄であるトールヴァルド…は、もう独立しているから、どうでもいいが…」
 立ち上がって話し始めて、最初の言葉がそれかよ!
「おい、こらっ!」
 思わず父さんの言葉に文句を言おうとしたのだが、嫁ーずに取り押さえられ、『もが! もがががが!』口を塞がれた。
「常より、皆に愛情を注がれている令嬢のコルネリアとユリアーネと同様に、今後は新たなる命の世話をして貰う事になるだろう。それは楽な事では無いのは、私も子育てを経験してきたので十分に承知している」
 使用人さん達は、黙って父さんの言葉に頷く。
「だが、それでも皆に頼みたい。私はこの場にいる、我が家で働く皆を信じている。その知識と経験と愛情を、どうか新たなる命にも存分に注いで欲しい。どうか、よろしく頼む」
 そう言って、深々と腰をおり頭を下げた。
 その横に母さんも並び、頭を下げる。
 すると、コルネちゃんが、「どうぞよろしくお願いします」と、母さんの隣に立って頭を下げる。
 もちろんその横にはユリアちゃんが、「おねがいしましゅ!」と、ちょっと噛みながら、頭を下げた。
 って、俺も並ばなきゃダメ?

 え、メリル何? あ、長兄として挨拶が必要? 嫁ーずもする? 分ったよ!
 仕方なく(?)俺は父さんの横まで歩いて行き、挨拶を行った。
「王都のアルテアン侯爵家を陰で支えてくれている皆へ。アルテアン家の長兄であるトールヴァルドだ。皆も知っての通り、私は伯爵位を賜っており、我自身の領地と我が父の領地であるアルテアン領を護る為、そして聖なる女神であるネス様を祀るため、この王都にはなかなか足を運ぶことが出来ない。我にとっても、新たな妹か弟か妹か妹が生れ来るのに、それに立ち会えるかどうかさえ不明であると言うのに、新たなる我が妹か弟か妹か妹の育成に立ち会えない事は、非常に非常に非常に残念だ!」
 え、妹って何回言うのかって? もちろん飽きるまでさ!
 弟はどうなんだ…って? だって妹の方が良いもん!
「しかし! 私は新たなるアルテアンの子供の育成に関して、一切心配などしてい無い! この屋敷で我が家族を支えてくれている皆はとてもとても優秀だ。我が父母、愛する妹達が健やかなる事を見れば、それは明らかだからだ! どうか、新たなる命にも、皆のその愛情を注いで欲しい。我が母に宿る、新たなるアルテアンに、聖なる女神ネス様のご加護の有らん事を!」
『女神ネス様の加護の有らん事を!』
 何故か全員がそこだけ唱和してくれた。
 こういう時に声が揃うと、何というかメッチャ気持ち良いな。

 俺が深々と頭を下げると、俺の後ろに並んだ嫁ーずも、一斉に頭を下げた。
 侯爵、伯爵自信が、使用人に向かって頭を下げる。
 いや、侯爵家、伯爵家の全員が頭を下げるなど、絶対にありえない事なのだが、そこは元々が一般ぴーぽー出身の両親と、爵位すら無かった貧乏上級勲民家に生まれた俺だ。
 その性質を受け継いだコルネちゃんは勿論、その色に染まった元王女様のメリルも、目覚めた時から公爵令嬢だったユリアちゃんも、普通に頭を下げる。
 貴族社会では、一見すると華やかな侯爵家。
 それを影となり日向となり支えてくれているのは、この使用人さん達だ。
 寝る間も惜しみ、王都の屋敷を護り尽くしてくれる使用人さん達。
 だからこそ、そういう事が理解出来ているからこそ、俺達は頭を下げるのだ。
 屋敷の使用人一同は、そんな光景に感動しきりで、先程の様な怒涛の勢いの拍手では無く、大きな暖かい拍手がアルテアン家の一同を包むのであった。
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