システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

文字の大きさ
上 下
699 / 1,466

最高級ホテル?

しおりを挟む
 そこは、ダンジョン大陸にある塔の中とは思えない様相だった。
 外界と室内は巨大なガラスによって隔てられており、雄大な大自然を一望できた。
 この大陸では間もなく夕刻となるため、遥かな地平に陽が沈む様子すらも見る事が出来る。
 塔の反対側では、日の出も見る事が出来るだろう。
 また、振り返ると、反対側も壁一面がガラスの壁があり、塔の中とは思えない程に美しく整えられた中庭が視界に入ります。
 中庭には、日本庭園風の美しい大きな池泉庭を中心に、数多くの植物がその影を水面に落とす。
 池の中には、一見すると武骨な角張った岩や、角の取れた女体を感じさせるような岩などが、計算し尽くしたかのような配置で並び、中庭というそんなに広くも無い空間に、まるで大自然を凝縮したかの様な、見る者の感性を刺激してくれる様な、そんな美しい姿を現していて、これぞ正しく庭園と呼ぶに相応しい物だと言える。
 このガラスに囲まれた空間が、まるで穴の開いたドーナッツの一部を切り取ったかのような造りとなっている事で、訪れた人には確かにここが塔の中であると実感できだろう。
 このガラス張りの空間は、ロビーというか居間というか、そういった共用のスペースとなっている様だ。
 この空間は、絶景の外の風景と調和のとれた美しい中庭の景観の邪魔にならぬ様、極々シンプルなインテリアで設えてある。
 色使いもモダンな白と黒でまとめられ、この部屋を設計した者の美的センスが非常に高い事を物語っている。
 次に、この部屋の左右には、円形に造られている中庭に沿って廊下があり、幾つもの部屋が並んでいる。
 それら各部屋は、王都…王城の謁見の間よりも豪華な造りとなってはいるのだが、それが嫌味に感じる事は無い。
 確かに応接セットやベッド、調度品などは豪奢な物となってはいるが、全体的に白で統一された室内は、実にシンプルでいて清潔感溢れていて、宿泊する女性をすべて貴婦人に変えてしまうのではないかと言う程に気高い。

 そして食堂となっているスペースでは、これも王城もかくやと思われる…
「トール様?」
 何だよ、今このホテルの解説をだな…
「ちょっとトール様?」
 ガイドブックに載せれる様なレヴューを…
「聞いてますの、トール様!?」
「いえ、聞いてませんでした」
 めっちゃオコなメリルが、俺の服の裾を摘んで声を掛けて来た。
「聞いてなかったんですの!? 部屋割はどうするのですかとお尋ねしたんですのよ?」
 ああ、そっか…そうね、部屋割り…って、
「泊まる気なの!?」
「ええ、それは勿論ですわ」
 メリルの背後で話を聞いていた嫁ーずは、コクコクと頷く。
「いや…お仕事が…」
「帰ったら、皆で手分けしますから、大丈夫ですわ」
 あ、そですか…
「ドワーフメイド衆とユズユズは?」
「ドワーフさん達は、カジマギーさんと中庭見てますよ」
 俺の問いかけに答えたのはマチルダ。
「何でも、もう少し詫び寂びを取り入れた方が、趣があって良いのではないかと、ドワーフさん達がカジマギーさんにレクチャーしてました…水に動きが無いから滝を造った方が良いとか、すごく具体的でしたね」
 ドワーフさん、完全に日本庭園を意識してるな…どこからそんな知識を持ってきたんだろう。
「そう言えば、カレサンスイがどうとか言ってましたが…何でしょうね、カレサンスイ」
 枯山水!? そりゃマチルダだって知ってるわけ無いよ。
「な、なんだろうねぇ…カレサンスイって…あははは…」
 ってか、そんな物をこの中世ヨーロッパに近い文化圏に造っても良いのか? 
 あ、いや…ここはダンジョンの中だったな…しかも特別な客室…招待されない限り見えないんだから、大丈夫か…?
「それじゃユズユズは?」
「太陽が沈むのを…あっちの部屋で眺めてました…いちゃいちゃしながら」
 ミレーラが、ちょっと恥ずかしそうに教えてくれた。
「うんうん。新婚旅行だとか言ってたわよ。どんだけ新婚生活が続くんでしょうねえ、あの2人」
 ミルシェは笑いながらそう言っているが、あの2人は一生新婚とか言ってそう。
 ってか、結婚して1年以上経ってるのに、まだ新婚旅行かよ! 何回したら気が済むんだ?
 ブレンダーとクイーンは、どこいった?
 あ、ホワイト・オルター号で寝てるのか…相変わらずマイペースな奴だなあ…。

「それでは、そろそろおゆうはんにちまちょう!」
 俺達がわいわいとホテル風に仕立てられた塔の階層を見て周っていると、どこからともなくもふりんとカジマギーがやって来た。
 そっか、そろそろ晩飯の時間か。
「皆様、食堂にご案内いたします。今宵自慢のシェフが腕を揮いました、自慢のディナーをお楽しみくださいませ」
 カジマギーが幼女に似合わない口調で、この宿泊層に気圧された俺達を先導して食堂へと導いた。
 もふりんは、カジマギーの後ろをちょこちょこついて行くだけ。
 うん、なんかホッコリするよ。
 
 あれ? 自慢のシェフ? ダンジョンにシェフ!? 
しおりを挟む
感想 725

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...