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訓練終了
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「あ奴らは楽しんでおるかのぉ…」
薄暗い地下のいかにも実験室という様相の部屋の片隅で、ボーディはぼんやりと目の前の器具を見つめ乍ら呟いた。
「大奥様だったら、喜々として突撃すると思いますけどね、迷路に」
その呟きを聞きつけたサラは、ウルリーカが高笑いしながら迷路に跳び込んで行く様を頭に描きながら、そう返した。
「まあ、想像に難くないですね。それに奥様方では大奥様を止める事も出来ませんから、きっと勢いのまま吶喊している事でしょう」
サラの言葉を補完するかのように、リリアが言葉を重ねる。
「ふむ…そうであれば良いが。せっかく此処まで来たんじゃからのぉ。お、この反応は…サラよ、どうじゃ?」
目の前に並ぶ実験器具の様な物から、淡いオレンジ色の光が漏れたのを見たボーディがサラに確認を取る。
「ん~…そろそろ…かな?」
チラッとボーディの方を見たサラがそう応えると、
「また貴女はいい加減な事を…ボーディ様、その反応が出たのでしたら、もう完成間近です」
サラを冷たい目で見ながらも、リリアはボーディへと答えを返した。
「おお、そうかそうか。楽しみじゃのぉ…カジマギーを造り出した時とは違う行程じゃが、これはこれで趣があって良いな!」
嬉しそうに器具を覗き込むボーディ。
その器具の中は液体で満たされており、裸の少年が液体の中を漂っていた。
「私としては、カジマギーちゃんやもふりんちゃんを造り出している製造プロセスの方が気になりますけれどもね」
輪廻転生管理局で現地活動用サイバネティックス・ボディの製造・管理を行っているリリアにしてみれば、あの2人を造り出す行程そのものが謎であり、今後のサイバネティックス・ボディの製造のためにも、是非ともご教授頂きたいところだった。
「ん? カジマギーかや? あれば妾の分身体じゃから、言ってみればダンジョンその物じゃ。ダンジョンのモンスターであれば、この様な工程で製造する事もあるが、カジマギーであればダンジョン製造と同じように、念じれば造り出せる」
液体の中を漂う少年を見つめながら、ボーディがカジマギー製造に関して説明を始めた。
「どうやって造り出しているのかと問われると、感覚的な物じゃから性つめいが難しいのじゃが…ダンジョンを拡張する様な感じかの」
明確な回答ではないが、何となく眷属を造り出している事は理解出来た。
「なる程…私達が製造しているサイバネティックス・ボディは、種族を考慮した基本素体の選択や、能力の不可や肉体をどこまで成長させるかなど、各ステップでのプロセスを予めプログラムしなければなりませんが…感覚的な物なのですね…」
眷属の作成が感覚的な物だと理解したリリアは、遠い目をしていた。
「モフリーナがもふりんを造り出したのも同じ感じじゃと思うぞ?」
そんなリリアに、追い打ちを掛ける様に、ボーディが第9番ダンジョンのマスターの話をする。
「そうでしょうね。同じダンジョンマスターですものねえ…」
予想は出来ていたとはいえ、感覚でホイホイと眷属を造り出すボーディとモフリーナに、リリアはちょっと納得できない物があった。
ユーザーからの雑多な要求を製造プロセスに盛り込み、汗と涙と長期間にわたる徹夜での努力によって生み出される現地活動用サイバネティックス・ボディを製作している身としては、羨ましくも有り妬ましくもあるのだ。
そんなリリアの気持ちなど一顧だにせず、ボーディは自らが造り出す、このダンジョン大陸の王となる少年の名前を考えながら、楽しそうに見つめていた。
「み、みなちゃま…こんかいは、ここでおわりでちゅ」
ワイバーンを圧倒したアルテアン一家の女性陣に向かって、カジマギーが本日の戦闘訓練の終わりを告げた。
「お疲れさまでした。今回、ご用意させて頂いた魔物のストックが切れましたので、申し訳ありませんが終了とさせて頂きます」
カジマギーが、魔物のストック切れによる訓練終了を告げた。
「そうなのね…少し物足りないわねぇ」
それを聞いたウルリーカは、まだまだ動き足りないと不満を漏らす。
「確かに、ワイバーン戦があんなに簡単に終わったのでは…ねぇ…」
メリルも、先の先頭を思い浮かべながら、同意を示す。
「あ、でもお義母さま、地下だから分り難かったですけど、そろそろいい時間なのでは?」
ダンジョン大陸とトールの領地を瞬時に転移した事のあるミルシェは、時差の事を考えていた。
「今…何時なんでしょう?」
ミレーラも、今の時間が気になる様だ。
「こちらに来てから約半日と言ったところでしょうか。であれば、トール様の家はすでに夜中かと」
マチルダが、この迷路型ダンジョンでの時間経過と時差を考慮して、そうウルリーカに伝えた。
「遅くなったら、ここに泊まればいいんじゃないか?」
イネスは何でも無い事の様にそう言うが、よそ様のダンジョンにお邪魔している身。
自らの領地の商店でも無いのだから、そう簡単に泊まるなど…
「いいでちゅよ、とまりまちゅか?」
もふりんが簡単な事だと告げる。
「宿泊施設は…最初に転移して来た時のあの部屋に、簡素ではありますが、お着換えとお風呂とトイレと…あとはベッドをご用意いたします。食事は別途お持ちいたします。どうぞ、ごゆるりとお休みくださいませ」
カジマギーが、あの見晴らしの良い部屋を提供してくれるという。
「あら、そう? それならお願いしようかしら。あ、トールちゃんにも連絡しなくちゃね」
ウルリーカは、もふりんとカジマギーの言葉を聞き、本日は宿泊する事を即断即決した。
勿論、一部始終を黙って見ていたナディアは、またまた大きくため息をつくのであった。
薄暗い地下のいかにも実験室という様相の部屋の片隅で、ボーディはぼんやりと目の前の器具を見つめ乍ら呟いた。
「大奥様だったら、喜々として突撃すると思いますけどね、迷路に」
その呟きを聞きつけたサラは、ウルリーカが高笑いしながら迷路に跳び込んで行く様を頭に描きながら、そう返した。
「まあ、想像に難くないですね。それに奥様方では大奥様を止める事も出来ませんから、きっと勢いのまま吶喊している事でしょう」
サラの言葉を補完するかのように、リリアが言葉を重ねる。
「ふむ…そうであれば良いが。せっかく此処まで来たんじゃからのぉ。お、この反応は…サラよ、どうじゃ?」
目の前に並ぶ実験器具の様な物から、淡いオレンジ色の光が漏れたのを見たボーディがサラに確認を取る。
「ん~…そろそろ…かな?」
チラッとボーディの方を見たサラがそう応えると、
「また貴女はいい加減な事を…ボーディ様、その反応が出たのでしたら、もう完成間近です」
サラを冷たい目で見ながらも、リリアはボーディへと答えを返した。
「おお、そうかそうか。楽しみじゃのぉ…カジマギーを造り出した時とは違う行程じゃが、これはこれで趣があって良いな!」
嬉しそうに器具を覗き込むボーディ。
その器具の中は液体で満たされており、裸の少年が液体の中を漂っていた。
「私としては、カジマギーちゃんやもふりんちゃんを造り出している製造プロセスの方が気になりますけれどもね」
輪廻転生管理局で現地活動用サイバネティックス・ボディの製造・管理を行っているリリアにしてみれば、あの2人を造り出す行程そのものが謎であり、今後のサイバネティックス・ボディの製造のためにも、是非ともご教授頂きたいところだった。
「ん? カジマギーかや? あれば妾の分身体じゃから、言ってみればダンジョンその物じゃ。ダンジョンのモンスターであれば、この様な工程で製造する事もあるが、カジマギーであればダンジョン製造と同じように、念じれば造り出せる」
液体の中を漂う少年を見つめながら、ボーディがカジマギー製造に関して説明を始めた。
「どうやって造り出しているのかと問われると、感覚的な物じゃから性つめいが難しいのじゃが…ダンジョンを拡張する様な感じかの」
明確な回答ではないが、何となく眷属を造り出している事は理解出来た。
「なる程…私達が製造しているサイバネティックス・ボディは、種族を考慮した基本素体の選択や、能力の不可や肉体をどこまで成長させるかなど、各ステップでのプロセスを予めプログラムしなければなりませんが…感覚的な物なのですね…」
眷属の作成が感覚的な物だと理解したリリアは、遠い目をしていた。
「モフリーナがもふりんを造り出したのも同じ感じじゃと思うぞ?」
そんなリリアに、追い打ちを掛ける様に、ボーディが第9番ダンジョンのマスターの話をする。
「そうでしょうね。同じダンジョンマスターですものねえ…」
予想は出来ていたとはいえ、感覚でホイホイと眷属を造り出すボーディとモフリーナに、リリアはちょっと納得できない物があった。
ユーザーからの雑多な要求を製造プロセスに盛り込み、汗と涙と長期間にわたる徹夜での努力によって生み出される現地活動用サイバネティックス・ボディを製作している身としては、羨ましくも有り妬ましくもあるのだ。
そんなリリアの気持ちなど一顧だにせず、ボーディは自らが造り出す、このダンジョン大陸の王となる少年の名前を考えながら、楽しそうに見つめていた。
「み、みなちゃま…こんかいは、ここでおわりでちゅ」
ワイバーンを圧倒したアルテアン一家の女性陣に向かって、カジマギーが本日の戦闘訓練の終わりを告げた。
「お疲れさまでした。今回、ご用意させて頂いた魔物のストックが切れましたので、申し訳ありませんが終了とさせて頂きます」
カジマギーが、魔物のストック切れによる訓練終了を告げた。
「そうなのね…少し物足りないわねぇ」
それを聞いたウルリーカは、まだまだ動き足りないと不満を漏らす。
「確かに、ワイバーン戦があんなに簡単に終わったのでは…ねぇ…」
メリルも、先の先頭を思い浮かべながら、同意を示す。
「あ、でもお義母さま、地下だから分り難かったですけど、そろそろいい時間なのでは?」
ダンジョン大陸とトールの領地を瞬時に転移した事のあるミルシェは、時差の事を考えていた。
「今…何時なんでしょう?」
ミレーラも、今の時間が気になる様だ。
「こちらに来てから約半日と言ったところでしょうか。であれば、トール様の家はすでに夜中かと」
マチルダが、この迷路型ダンジョンでの時間経過と時差を考慮して、そうウルリーカに伝えた。
「遅くなったら、ここに泊まればいいんじゃないか?」
イネスは何でも無い事の様にそう言うが、よそ様のダンジョンにお邪魔している身。
自らの領地の商店でも無いのだから、そう簡単に泊まるなど…
「いいでちゅよ、とまりまちゅか?」
もふりんが簡単な事だと告げる。
「宿泊施設は…最初に転移して来た時のあの部屋に、簡素ではありますが、お着換えとお風呂とトイレと…あとはベッドをご用意いたします。食事は別途お持ちいたします。どうぞ、ごゆるりとお休みくださいませ」
カジマギーが、あの見晴らしの良い部屋を提供してくれるという。
「あら、そう? それならお願いしようかしら。あ、トールちゃんにも連絡しなくちゃね」
ウルリーカは、もふりんとカジマギーの言葉を聞き、本日は宿泊する事を即断即決した。
勿論、一部始終を黙って見ていたナディアは、またまた大きくため息をつくのであった。
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