システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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ワイバーン戦

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「ミルシェ、スーパー・クレイモア! イネスはクリムゾン・ストライク! 羽を狙って!」
 ウルリーカが大声で次々に指示を出す。
「マチルダはワイバーンの弱点を調べて! メリルとミルシェはガード!」
 そして、その指示を出している本人はと言うと、
「私は、吶喊!」
「お義母様!?」
 ワイバーンへと走り込むウルリーカの後姿を見たメリルが、驚きの声をあげた。

 青龍偃月刀とは、実際には長い柄が付いた太刀といった形状であり、大薙刀に非常に似通っていて、扱い方もそれに近い。
 つまりは、斬撃に特化した長柄武器であり、一般的な槍の様に突きを目的とした長柄武器では無い。
 とは言っても、目的としていないだけで、突きが出来ないという分けでは無い。
 斬撃が得意な武器ではあるが、刺突も可能であるし、その大重量を生かして石突での打突や柄での打撃も可能だ。
 トールの嫁ーずの中で、接近戦が最も得意なのは大剣を使用するイネスであるが、ウルリーカは超接近戦から中距離戦まで、その青龍偃月刀でこなす。
 何が言いたいのかと言うと、それだと長距離攻撃は無いのかと言うと、そうでもない。
 トールが意図しなかった事なのだが、実は穿牙【せんが】と言う装備の名に恥じず、遠距離でも穿つ攻撃が出来る。
 ウルリーカが持つ青龍偃月刀は、極小のヘキサゴン・シールドが無数に集まり形作った物。
 あくまでもプログラムに従って青龍偃月刀を形作っているだけであり、穿牙の装着者の意思によって、その形状を多少変える事も可能になっていた。
 ワイバーンへと駆けていたウルリーカが、ワイバーンの攻撃が届くか届かないかのギリギリの距離を見極め、迷路の床を削るかのような勢いで左足を前に強く踏み込み急ブレーキをかけると、右手で持っていた青龍偃月刀を軽く後ろに引き、勢いをつけて頭上で回す様に動かす。
 その石突が正面に来た時、左手でそれを掴んで勢いよく頭上からワイバーンに向かって振り下ろす。
 勿論、斬撃が届く距離であるはずが無い。
 だが、ウルリーカに迷いはない。
「穿て! 神滅穿!」
 その声と共に、真っすぐワイバーンへと伸ばした偃月刀の刃が光の粒子に分解され、どこまでも真っすぐ鋭く伸びる。
 その光の粒子は、実は刃を構成している極小のシールドの集まり。
 青龍偃月刀の先端にある巨大な刃が光り輝き、その形を崩すと同時に、光は鋭く真っすぐな円錐状となって敵を貫く。
『グギャ――――!』
 空を飛ぶワイバーンの1体が、その翼を貫かれて絶叫した。
 
「お義母様…凄い!」「ああ、負けてはいられないぞ!」
 ミルシェとイネスは、自分達を追い抜き走って行ったウルリーカの背中から、その戦いを見ていた。
 そして、奮い立った。
「まとめて堕ちろーーー! スーパー・クレイモア!」
 ミルシェが手にする巨大なタワーシールドは、トール謹製の盾であり、装備では無い。
 だがその盾から2匹纏まっていたワイバーンに向かい、ミルシェは無数の光弾を放った。
「喰らえーーー! クリムゾン・ストライク!!」
 イネスが手にする巨大で幅広な両手剣は、トール特製の武器であり装備では無い。
 しかし、溜めに溜めたエネルギを真っ赤に燃やし、その剣に乗せて残る1匹のワイバーンへと叩きつけた。
 ウルリーカ、ミルシェ、イネスの3人の攻撃は、ワイバーンを地面へと叩き落とし、苦悶の唸り声をあげさせた。
「今よ! 皆、全力で叩き潰しなさい!」
 それを勝機と見たメリルが、自ら走り出しながら全員突撃の指示を出す。
 弱点を調べていたマチルダは、天空の覇者であり強大な敵であるワイバーンが何も出来ずに墜落した事に驚きはしたが、メリルの言葉に背中を押されたように走り出した。
 イネスはその巨大な剣で、ミルシェは巨大な盾で吶喊し、またウルリーカも光の粒子を青龍偃月刀へと戻すと、ワイバーンへと吶喊して行った。
 ワイバーンは得意の火の球を吐きだす事も出来ず、アルテアンの女性陣によってタコ殴りにされてしまった。

「あのひとたち…つよすぎまちぇん?」
「ええ…あのワイバーンは、戦闘力だけでしたら、このダンジョンでも上位です。知能を低く設定していますから、動きは単調ではありますが…まさかここまで簡単に地に堕とされるとは…」
 ワイバーンをタコ殴りにしている女性陣を見た、もふりんとカジマギーの声を聞いていたのは、傍にいたナディアだけである。
「マスターは、奥様方を何と戦わせようとしているんでしょうかねぇ…」
 ナディアも、あまりにも過剰戦力である装備を製作したトールに呆れていた。
「あ、おわりそうでち…」
「いえ、もう終わりました…」
 ダンジョンでは、倒されたモンスターや魔物は、全てダンジョンに吸収されるので、その姿は残らない。
 もふりんとカジマギーが見つめていた先で、ボコられまくったワイバーンは、ガックリと地に伏し、やがてその姿は掻き消えた。
「本当、何と戦う事を想定しているのでしょうねえ…はぁ…」
 ワイバーン戦に勝利したアルテアン家の女性陣が、ハイタッチして喜んでいる姿を遠目に見ながら、ナディアはまたも深いため息をついていた。
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