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訓練開始!
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「あのひとたちに、くんれんっているのでちょうか?」
アルテアン家の女性陣の戦いぶりを見ていたもふりんは、大いに首を傾げる。
「私的には、全く不要だと思いますが、争いのない環境に慣れてしまうと、体もそれに慣れてしまって、技や筋力だけでなく判断力まで落ちるそうですから、たまに実践を行うのも、良い意味で緊張感を維持するためにも必要なのではないでしょうか?」
同じく戦いを見つめていたカジマギーは、この訓練の意味をそう語った。
語りはしたが、どう見てもあの面子に対して戦っている相手が役不足である。
なにせ…
「メリルさん、右から2体、左からゴブリン3体。続いてその後方にコボルト3体…正面」
「了解! イネスさん、右の2体をお願い! ミルシェとミレーラで左の3体を!」
「おう!」「「はいっ!」」
「お義母様と私で後続のコボルトを抑えます、よろしいですか!?」
「ええ、任せて頂だい!」
マチルダの索敵によって、次々に湧き出るモンスターの数と方向を確認したメリルは、矢継ぎ早に指示を飛ばし、それによって動くアルテアン家のメンバー。
変身した彼女達は、ボーディによって訓練用に再調整されたモンスター達を歯牙にもかけず一蹴する。
中でも注目亥すべきは、非常に軽装にしか見えないウルリーカ。
先ほどまで着ていたドレスのまま変身した彼女は、一見するとドレスに軽装甲がくっついただけの様にしか見えない。
しかし、実はドレスの下には、強固なシールドが素肌に貼り付いており、不可視の極小のシールドが身体の周りを取り囲み、敵の攻撃を完全に防いでいる。
しかも、その手にしている巨大な刃の付いた槍を自由自在に操り、敵をバッタバッタと切り捨て薙ぎ倒していた。
嫁ーずの装備も、トールやユズユズ、コルネにユリアといった面々の持つ強力な装備では無いにしても、5人がチームを組めば非常に強力である。
その嫁ーずの装備よりも、ウルリーカの装備の方が一段劣っているはずである。
トールはその様に創ったし、パワーアシストにしても一般の騎士たちを、ほんの少し上回るほどの筋力に設定しているはずである。
だが、明らかに母は強かった。
最初のうちは装備に慣れないのか、モンスターに怯えているのか動きが硬かった。
しかし、徐々にその特性を理解したウルリーカは、性能を限界まで引き出すかのように、体の動き、装備の反応を確かめるように立ち回りはじめる。
やがて完全に理解したのか、積極的に前へと出始めると、青龍偃月刀を振り回し、敵に突貫し始める。
その雄大な槍を振るい、戦いの場で敵の中を流れるように動くその姿は、まるで舞踏会でスローフォックストロットで踊っているかのようであった。
あまりのその動きの美しさに、敵と示し合わせている演武であるかと錯覚するほどだった。
実はウルリーカは、普段ホワイト・オルター号に乗って空から皆の戦闘を見ている時、ずっとどう動けば効率が良いのかを考えていたのである。
元々、戦闘に関して才能もあったのだろう。
ウルスラグナに搭乗した時に、その片鱗を見せてはいたが、専用の装備を手にして、それが爆発した…いや、暴発したのかもしれない。
迷路では次から次へと行く手を阻むモンスターが出現するが、彼女らの敵ではなかった。
一応、モンスターはモフリーナのアドバイスを元に、ボーディが戦闘力を調整してはいた。
ある程度の強さまでは準備していたのだが、今回準備していたモンスターでは全く歯が立たない。
「どうちまちょうねえ…」
「我が主が準備されているモンスター程度では歯が立たない…か」
装備を身に着けた女性陣の戦闘力の前では、ボーディが準備していた一般的なモンスター程度では相手にもならなかった。
「そろそろ訓練時間もいい頃合いであるな。こんな時の為に脅威度の高めのモンスターも主は準備しておられた事であるし、訓練の仕上げに出すとしようか」
そうカジマギーが呟き、右手をパチンと鳴らした。
「あ、あれは! メリルさん、この先の通路に左右から竜…いえ、亜竜…ワイバーンがいます!」
「ワイバーン!?」
悲鳴のようなマチルダの声に、メリルが思わず叫び声をあげる。
「くっ! ミルシェ、イネス、ミレーラ、はストップ! お義母様は一旦退いてください!」
前衛を担当するミルシェとイネスを止め、サポートのミレーラも留める。
遊軍よろしく戦場を駆け回るウルリーカには、一時退却を指示するメリル。
「どうされたのですか?」
慌てたような指示を出したメリルに、ヘルムで顔は見えないが、怪訝そうな声をかけるミルシェ。
その様子をミレーラとイネス、戻ってきたウルリーカも見ていた。
「マチルダさんがこの先を調べたところ、ワイバーンがいるらしいです」
『ワイバーン!?』
先ほどのメリルと同様、驚きの声を上げる一同。
「困ったことに、左右の分かれ道…そのどちらからも、2体ずつ来ます…合計4体」
追撃はマチルダからであった。
『4体!?』
驚く一同の声を聴いたカジマギーは、表情は変えなかったが小さくガッツポーズをした。
ここまでの流れを黙って見ていたナディアは、カジマギーのガッツポーズを見て、小さくため息をつくのであった。
アルテアン家の女性陣の戦いぶりを見ていたもふりんは、大いに首を傾げる。
「私的には、全く不要だと思いますが、争いのない環境に慣れてしまうと、体もそれに慣れてしまって、技や筋力だけでなく判断力まで落ちるそうですから、たまに実践を行うのも、良い意味で緊張感を維持するためにも必要なのではないでしょうか?」
同じく戦いを見つめていたカジマギーは、この訓練の意味をそう語った。
語りはしたが、どう見てもあの面子に対して戦っている相手が役不足である。
なにせ…
「メリルさん、右から2体、左からゴブリン3体。続いてその後方にコボルト3体…正面」
「了解! イネスさん、右の2体をお願い! ミルシェとミレーラで左の3体を!」
「おう!」「「はいっ!」」
「お義母様と私で後続のコボルトを抑えます、よろしいですか!?」
「ええ、任せて頂だい!」
マチルダの索敵によって、次々に湧き出るモンスターの数と方向を確認したメリルは、矢継ぎ早に指示を飛ばし、それによって動くアルテアン家のメンバー。
変身した彼女達は、ボーディによって訓練用に再調整されたモンスター達を歯牙にもかけず一蹴する。
中でも注目亥すべきは、非常に軽装にしか見えないウルリーカ。
先ほどまで着ていたドレスのまま変身した彼女は、一見するとドレスに軽装甲がくっついただけの様にしか見えない。
しかし、実はドレスの下には、強固なシールドが素肌に貼り付いており、不可視の極小のシールドが身体の周りを取り囲み、敵の攻撃を完全に防いでいる。
しかも、その手にしている巨大な刃の付いた槍を自由自在に操り、敵をバッタバッタと切り捨て薙ぎ倒していた。
嫁ーずの装備も、トールやユズユズ、コルネにユリアといった面々の持つ強力な装備では無いにしても、5人がチームを組めば非常に強力である。
その嫁ーずの装備よりも、ウルリーカの装備の方が一段劣っているはずである。
トールはその様に創ったし、パワーアシストにしても一般の騎士たちを、ほんの少し上回るほどの筋力に設定しているはずである。
だが、明らかに母は強かった。
最初のうちは装備に慣れないのか、モンスターに怯えているのか動きが硬かった。
しかし、徐々にその特性を理解したウルリーカは、性能を限界まで引き出すかのように、体の動き、装備の反応を確かめるように立ち回りはじめる。
やがて完全に理解したのか、積極的に前へと出始めると、青龍偃月刀を振り回し、敵に突貫し始める。
その雄大な槍を振るい、戦いの場で敵の中を流れるように動くその姿は、まるで舞踏会でスローフォックストロットで踊っているかのようであった。
あまりのその動きの美しさに、敵と示し合わせている演武であるかと錯覚するほどだった。
実はウルリーカは、普段ホワイト・オルター号に乗って空から皆の戦闘を見ている時、ずっとどう動けば効率が良いのかを考えていたのである。
元々、戦闘に関して才能もあったのだろう。
ウルスラグナに搭乗した時に、その片鱗を見せてはいたが、専用の装備を手にして、それが爆発した…いや、暴発したのかもしれない。
迷路では次から次へと行く手を阻むモンスターが出現するが、彼女らの敵ではなかった。
一応、モンスターはモフリーナのアドバイスを元に、ボーディが戦闘力を調整してはいた。
ある程度の強さまでは準備していたのだが、今回準備していたモンスターでは全く歯が立たない。
「どうちまちょうねえ…」
「我が主が準備されているモンスター程度では歯が立たない…か」
装備を身に着けた女性陣の戦闘力の前では、ボーディが準備していた一般的なモンスター程度では相手にもならなかった。
「そろそろ訓練時間もいい頃合いであるな。こんな時の為に脅威度の高めのモンスターも主は準備しておられた事であるし、訓練の仕上げに出すとしようか」
そうカジマギーが呟き、右手をパチンと鳴らした。
「あ、あれは! メリルさん、この先の通路に左右から竜…いえ、亜竜…ワイバーンがいます!」
「ワイバーン!?」
悲鳴のようなマチルダの声に、メリルが思わず叫び声をあげる。
「くっ! ミルシェ、イネス、ミレーラ、はストップ! お義母様は一旦退いてください!」
前衛を担当するミルシェとイネスを止め、サポートのミレーラも留める。
遊軍よろしく戦場を駆け回るウルリーカには、一時退却を指示するメリル。
「どうされたのですか?」
慌てたような指示を出したメリルに、ヘルムで顔は見えないが、怪訝そうな声をかけるミルシェ。
その様子をミレーラとイネス、戻ってきたウルリーカも見ていた。
「マチルダさんがこの先を調べたところ、ワイバーンがいるらしいです」
『ワイバーン!?』
先ほどのメリルと同様、驚きの声を上げる一同。
「困ったことに、左右の分かれ道…そのどちらからも、2体ずつ来ます…合計4体」
追撃はマチルダからであった。
『4体!?』
驚く一同の声を聴いたカジマギーは、表情は変えなかったが小さくガッツポーズをした。
ここまでの流れを黙って見ていたナディアは、カジマギーのガッツポーズを見て、小さくため息をつくのであった。
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