システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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給与の3ヶ月分

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 やっとと言うか、漸くと言うか、とにかくアルテアンの本領を通り過ぎ、山脈に聳え立つ高い高いモフリーナのダンジョンを横に見ながら、飛行船は俺の領地へと進み、懐かしささえ覚えるネス湖と俺の屋敷へと戻って来た。
 いつもの如く、俺の屋敷の裏庭に着陸したホワイト・オルター号から、まずは蒸気自動車の運転手達を降ろす。
 カーゴデッキから降りた彼等は、綺麗に整列し、タラップを踏みしめてキャビンから降りる俺達を拍手で出迎えてくれた。
 いや、拍手はいらんけど…ってか、調子に乗って手なんて振るなよ、ユズカ!

「諸君! 此度の戦では、戦場では裏方としての働き、感謝の念に堪えない。アルテアン運輸の代表として礼をする。本当にご苦労だった」
 運転手さん達を前に、俺は深く深く頭を下げた。
 俺の前にずらっと整列しているのは、恐縮した運転手達。
 俺の後ろに並ぶは、俺と同じように頭を深々と下げた家族の面々。
「皆、過酷な裏方仕事としての運転業務の疲れもまだ癒えていないうちの、長い長い旅路で、さぞ疲れも溜まった事だろう」
 俺の言葉に、無言で全力否定する運転手達。
「なので、1週間の休暇を与えたいと思う。そして報奨として、給与の3ヶ月分を支給しよう。もちろん、裏方として参加していた日数分の給与は別に支給するから安心して欲しい。そして今夜はアルテアンの誇るスパ・リゾートのホテルに宿をとっている。無論、宿泊費は俺が持つので、存分に楽しんで欲しい」
 今まで無言で聞いていた彼らも、これには「やったー!」「おお!」とか、とにかく色んな声を上げて喜んだ。
「では、この後報奨を手渡すので、暫しこの場で待機。ああ、楽な姿勢で待ってくれたらいいからな」
 そう伝えた後、振り返ってメリルに俺の個人資産を収めている金庫からお金を持って来るよに指示を出した。
「あ、報奨を受け取ったら、受取証にサインをしてね」

 もちろん、領収書…いや、受取証は忘れない。
 税金対策はしっかりせねばな。 
 いや、節税じゃないぞ? ちゃんと対策した上で、それの倍額を王国に叩きつけてやるのだ。
 俺が必要以上に税金を納め続ければ、王国としても俺の言葉を無視するわけにもいかなくなるし、他の貴族連中も俺にたいして偉そうな口を聞きたいなら、俺同様に高額納税せざるを得なくなる。
 当然だが、父さんの領地も規定の倍額以上を納税している。
 この世界の高額納税者番付で毎年ベスト50に名前が載っているぐらいには税というあくまでも合法な賄賂を国に納めているのだから、誰もアルテアン一家に文句など言えまい。
 こんな言い方をしてたら、なんか…どこぞの極道の一家みたいだが…
 
 実際の所、俺や父さんに関して、 口さがない噂を流している貴族や商人が居る事は知っている。
 国王に何かあれば必死になって俺達の事を告げ口しようとする奴らが後を絶たない事も知っている。
 そんな奴は、大体がうだつの上がらない馬鹿共で、面子や貴族の血とやらを重んじているカスだ。
 グーダイド王国の貴族って奴は、表向きは世襲制では無い。
 どっちかと言うと、会社の役職の肩書に近い物だ。
 世襲制なのは、国王陛下ただ1人で、その血が重要なのも、王家王族だけ。
 だが、一般庶民には満足な教育を受けるだけの金銭的にも時間的にも余裕が無いため、執政に関してはほぼ貴族家が握っていると言っても過言では無い。
 庶民は日々の生活の為に必死になって働いているが、自分が住む領地のトップが誰になろうとも生活に変化が無い。
 もっと言えば、景気が変わる訳でも無く、当然ながら日当が良くなったりする事も無い。
 なので、俺は子供の頃から必死になって父さんの領地の景気を上げ上げするためにアイデアを捻り出して来たし、少ない収入からでも領内に公共事業として投資を繰り返して来たのだ。
 その甲斐あって、領の景気はうなぎ登りの滝登り。
 新しい産業もがんがん興して、女性も老人もガンガン雇用しまくっているのだ。
 しかも領地の税率は、王国中を見回してもダントツで低い。
 このおかげで売買は盛んになり、多くの商人が流れ込み、ありとあらゆる品物が商店に並び、領民達は懐が緩くなって経済が上昇スパイラルして天元突破したおかげで、税率を変えずとも税収も増えに増えまくると言う、好結果となっている。
 銭が無ければ領民から毟り取れば良い…なんて考えの駄目貴族とは全く違うこのスパイラル。
 いくら知識や学が無いとはいえ、一般庶民が気付かないわけが無い。
 おかげで周辺だけでなく、遠くの領からも移住してくる人々の数も増える一方。
 駄目貴族は減った領民分の税収を残った領民に負担させたりするから、怒った領民達の不満が膨れ上がり、またまた領民の流出が起きる。

 たかが先祖の偉業で得た地位と血を、さも尊い血であるかの様に振る舞う馬鹿者が招いた結果がこれなのだ。
 俺に言わせりゃ、戦場で先陣切って武勲をあげた父さんの方が、よっぽど偉い。
 まあ、そんな無茶無理無駄を繰り返している様な馬鹿貴族達は、しっかりと国王陛下に目をつけられてるので、ある日いきなり査察が入って、全財産没収の上、一族郎党処分される事になるだろうけど、俺には関係ない事だ。
 
 おっと、無駄な事を考えている間に、メリルが俺の個人的な金庫から金をたんまり持って来てくれたので、頑張ってくれた運転手達に御手当てを支給しましょうかね。
 ああ、君達並んで並んで、一列にね。
 はい、御手当て貰ったら、こっちにサインしてね、よろしく!
 メリルが俺に金を手渡し、並んだ運転手達にそれを渡して、横でマチルダの書いている受取証にサイン。
 全部終わった運転手は、俺達に頭を下げたあとは、小躍りしながら屋敷の門を出て行った。

 あ、そうだ…運転手をひっこ抜いたたせいで負担が増えたアルテアン運輸の従業員たちにも、あとでお手当出さなきゃね。
 あと、頑張って大型蒸気自動車を増産してくれた工房にも…ん~あちこちに御手当てだすのも面倒だなぁ。
 よし! 今年の人頭税は、一律免除だ!
 父さんの領地も合わせ、戦勝記念として、アルテアン領は、今年は人頭税無し! これで行こう!

 あ、でもその他の商売とかの税金は、きっちりかっきり頂きますからね。
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