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忘れてたわ!
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のんびりと空の旅を愉しんだアルテアン家の一同は、ようやくと言うべきか、やっとと言うべきか、あの土の英霊さんが頑張ってくれた巨大城壁へと戻って来た。
すでに敵の姿など影も形も無く、踏み固められた地面には所々に黒い染みが付いているが、あれが何かは聞かぬが華だろう。
城壁の上では、ホワイト・オルター号に気付いた兵士達が知らせたのだろうか、俺達を迎える声がぽつぽつと上がり始め、やがてそれが大波の様に広がり、やがて飛行船までビリビリと振るわすほどの大歓声となった。
最奥の城壁を越え、本陣の天幕を越えた場所にある拓けた場所にゆっくりと着陸した飛行船の前には、天幕周辺に居たグーダイド王国とアーテリオス神国の兵達がすごい勢いで走って来て、ずらりと整列した。
え~~~っと…そんなに構えられると、ものすごく出にくいんですけど…。
とは言いっても、このまま船の中に引きこもっているわけにもいかないので、タラップを降ろして全員で兵達の待つ外へと下船する事となった。
もちろん先頭は侯爵様である父さん。
次いで俺、その次が母さんで、ユリアちゃん、コルネちゃんと続き、メリル、ミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネス。
ナディアにアーデ、アーム、アーフェンが続き、ユズキ、ユズカ、サラ、リリアさん。
最後にクイーンを背に乗せたブレンダーが降りて来る。
モフリーナとモフレンダ、そしてボーディとカジマギーはカーゴルームにいる。
こんな大勢の前に姿を晒すわけにいかないからね。
ちなみに、クイーンの配下である蜂達が眠るファクトリーもカーゴルームの隅っこにひっそりと置かれている。
船から降りた俺達は、盛大な拍手で迎えられた。
兵達が綺麗に整列する列の一番奥、俺達から一番遠い場所に、我が国の軍務責任者である王子様と、神国のトップであるべダム首長並びに両国の偉い人達が、やっぱり拍手をしながら俺達を迎えてくれた。
父さんは堂々と兵達の間を歩いて進んで行くが、小心者の俺はビビりながら後ろをついていった。
家族を気遣って振り返る余裕なんて、俺には全くこれっぽっちも無かった。
「殿下並びに首長殿のお出迎え、このアルテアン、誠に畏れ多く感謝の念に堪えませぬ」
父さんが殿下と首長の前に進み出て、右手を胸に左手を腰の後ろにまわし、左ひざを地に着き首を垂れる。
それに倣い、一家全員がザッと音がするほど一斉に同じ姿勢をとり、頭を下げた。
「ああ、アルテアン卿…兵達が見ているからと言って、そんなに畏まらないでくれ。其方はこの戦において多大なる功をあげた臣であるゆえ、むしろ礼をするのは私の方だ」
そう言いいながら父さんの前まで歩み寄ったのは、何を隠そうメリルの実の兄であり、グーダイド軍総指令でもあるグーダイド王国第三王子ウェスリー・ラ・グーダイド殿下。
「トールヴァルド卿も、どうか頭をお上げ下さい。貴方様は使徒殿であり、我が国の名誉司教でもあるのですぞ? それにアルテアン卿も、名誉聖騎士では無いですか。一介の兵の様な真似は止めて頂きたい」
あ、そういや俺って、神国では名誉職だけど司教だったっけ。
父さんは名誉騎士だっけ? 名前だけだと思ってから、すっかり忘れてたよ。
「そうだぞ、2人共。貴君らはこの世界にたった2人しか居ない2国から貴族位を戴く者なのだ。王位継承権も下位で、たかだか陛下の血が繋がっただけの王子よりも、よほど重要な人物だ。いや、トールヴァルド伯爵にいたっては、私の義弟でもある。畏まられても腰の座りが悪くなるだけだ。もっと気楽にして欲しい」
王子様…陛下の血をたかだかって…。
まあ、貴族の血は尊いんだ! とか、王族の権威! だとか言い出さない国王家だからこそ、俺も好きなんだけどね。
陛下ってば、結構お茶目だし…王妃様は怖いし…物理的に…その娘のメリルも…色々と怖いし…。
「まあ、とにかくウェスリー王子も、アルテアン侯爵、アルテアン伯爵も、取りあえず天幕の中で話を聞かせてください。最果ての地で、どの様な戦いがあったのかを」
べダムさんが、周囲の兵達にも聞こえるほどの大声量でそう言うと、身体を開いて手を天幕へと伸ばして、俺達を促す。
「そうだな。通信の呪法具では都度都度報告を受けてはいたが、細やかな部分では分からぬことも多かった。帰って来たばかりで疲れているであろうが、 是非とも貴君らの口から直接聞きたいと思うがよいな?」
いやとは言えないよねえ。
「「はっ!」」
結局、俺と父さんは、本陣で一番でっかい天幕の中へと騎士さんに誘導されるがまま入って行った。
ところで、この騎士さんって、めっちゃ体格いいし、真っ白で光り輝く立派な鎧を着てるけど、一体何者?
どっかで見たことある様な顔なんだけど、思い出せないなあ。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません、使途殿。私は太陽神の神殿にて聖騎士筆頭を勤めさせて頂いております、アグスと申します。我が国の首長であるべダムの長子でもあります」
ああ、べダムさんに似てるのか!
でも、一国のトップの息子って立場よりも、聖騎士筆頭の方が先に出るんだ…。
「出来れば使途殿には、後程お時間を頂きたく…。神殿で預からせて頂いております、月神様の巫女見習いであるポリン嬢につきまして、教育の進捗度をご報告させて頂ければと…」
ポリンって、誰だっけ?
太陽神の神殿に月神の巫女見習い?
ん? ん? ん~~~~~?
あっ! あいつか! あの恐怖の大王戦の時の盆地の地下に住んでた、不思議ちゃん!
「あ、ああ…うん、分かったよ。時間を作るので、色々とどうなったか教えて欲しい」
うん、忘れてないよ? ちゃんと覚えてるよ? って顔でそう言うと、
「有難うございます。では、後程…」
嬉しそうな顔で、そう言って天幕の中に入って行く俺達を、深々と頭を下げて見送ってくれた。
いや~、完全に忘れてたわ!
すでに敵の姿など影も形も無く、踏み固められた地面には所々に黒い染みが付いているが、あれが何かは聞かぬが華だろう。
城壁の上では、ホワイト・オルター号に気付いた兵士達が知らせたのだろうか、俺達を迎える声がぽつぽつと上がり始め、やがてそれが大波の様に広がり、やがて飛行船までビリビリと振るわすほどの大歓声となった。
最奥の城壁を越え、本陣の天幕を越えた場所にある拓けた場所にゆっくりと着陸した飛行船の前には、天幕周辺に居たグーダイド王国とアーテリオス神国の兵達がすごい勢いで走って来て、ずらりと整列した。
え~~~っと…そんなに構えられると、ものすごく出にくいんですけど…。
とは言いっても、このまま船の中に引きこもっているわけにもいかないので、タラップを降ろして全員で兵達の待つ外へと下船する事となった。
もちろん先頭は侯爵様である父さん。
次いで俺、その次が母さんで、ユリアちゃん、コルネちゃんと続き、メリル、ミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネス。
ナディアにアーデ、アーム、アーフェンが続き、ユズキ、ユズカ、サラ、リリアさん。
最後にクイーンを背に乗せたブレンダーが降りて来る。
モフリーナとモフレンダ、そしてボーディとカジマギーはカーゴルームにいる。
こんな大勢の前に姿を晒すわけにいかないからね。
ちなみに、クイーンの配下である蜂達が眠るファクトリーもカーゴルームの隅っこにひっそりと置かれている。
船から降りた俺達は、盛大な拍手で迎えられた。
兵達が綺麗に整列する列の一番奥、俺達から一番遠い場所に、我が国の軍務責任者である王子様と、神国のトップであるべダム首長並びに両国の偉い人達が、やっぱり拍手をしながら俺達を迎えてくれた。
父さんは堂々と兵達の間を歩いて進んで行くが、小心者の俺はビビりながら後ろをついていった。
家族を気遣って振り返る余裕なんて、俺には全くこれっぽっちも無かった。
「殿下並びに首長殿のお出迎え、このアルテアン、誠に畏れ多く感謝の念に堪えませぬ」
父さんが殿下と首長の前に進み出て、右手を胸に左手を腰の後ろにまわし、左ひざを地に着き首を垂れる。
それに倣い、一家全員がザッと音がするほど一斉に同じ姿勢をとり、頭を下げた。
「ああ、アルテアン卿…兵達が見ているからと言って、そんなに畏まらないでくれ。其方はこの戦において多大なる功をあげた臣であるゆえ、むしろ礼をするのは私の方だ」
そう言いいながら父さんの前まで歩み寄ったのは、何を隠そうメリルの実の兄であり、グーダイド軍総指令でもあるグーダイド王国第三王子ウェスリー・ラ・グーダイド殿下。
「トールヴァルド卿も、どうか頭をお上げ下さい。貴方様は使徒殿であり、我が国の名誉司教でもあるのですぞ? それにアルテアン卿も、名誉聖騎士では無いですか。一介の兵の様な真似は止めて頂きたい」
あ、そういや俺って、神国では名誉職だけど司教だったっけ。
父さんは名誉騎士だっけ? 名前だけだと思ってから、すっかり忘れてたよ。
「そうだぞ、2人共。貴君らはこの世界にたった2人しか居ない2国から貴族位を戴く者なのだ。王位継承権も下位で、たかだか陛下の血が繋がっただけの王子よりも、よほど重要な人物だ。いや、トールヴァルド伯爵にいたっては、私の義弟でもある。畏まられても腰の座りが悪くなるだけだ。もっと気楽にして欲しい」
王子様…陛下の血をたかだかって…。
まあ、貴族の血は尊いんだ! とか、王族の権威! だとか言い出さない国王家だからこそ、俺も好きなんだけどね。
陛下ってば、結構お茶目だし…王妃様は怖いし…物理的に…その娘のメリルも…色々と怖いし…。
「まあ、とにかくウェスリー王子も、アルテアン侯爵、アルテアン伯爵も、取りあえず天幕の中で話を聞かせてください。最果ての地で、どの様な戦いがあったのかを」
べダムさんが、周囲の兵達にも聞こえるほどの大声量でそう言うと、身体を開いて手を天幕へと伸ばして、俺達を促す。
「そうだな。通信の呪法具では都度都度報告を受けてはいたが、細やかな部分では分からぬことも多かった。帰って来たばかりで疲れているであろうが、 是非とも貴君らの口から直接聞きたいと思うがよいな?」
いやとは言えないよねえ。
「「はっ!」」
結局、俺と父さんは、本陣で一番でっかい天幕の中へと騎士さんに誘導されるがまま入って行った。
ところで、この騎士さんって、めっちゃ体格いいし、真っ白で光り輝く立派な鎧を着てるけど、一体何者?
どっかで見たことある様な顔なんだけど、思い出せないなあ。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません、使途殿。私は太陽神の神殿にて聖騎士筆頭を勤めさせて頂いております、アグスと申します。我が国の首長であるべダムの長子でもあります」
ああ、べダムさんに似てるのか!
でも、一国のトップの息子って立場よりも、聖騎士筆頭の方が先に出るんだ…。
「出来れば使途殿には、後程お時間を頂きたく…。神殿で預からせて頂いております、月神様の巫女見習いであるポリン嬢につきまして、教育の進捗度をご報告させて頂ければと…」
ポリンって、誰だっけ?
太陽神の神殿に月神の巫女見習い?
ん? ん? ん~~~~~?
あっ! あいつか! あの恐怖の大王戦の時の盆地の地下に住んでた、不思議ちゃん!
「あ、ああ…うん、分かったよ。時間を作るので、色々とどうなったか教えて欲しい」
うん、忘れてないよ? ちゃんと覚えてるよ? って顔でそう言うと、
「有難うございます。では、後程…」
嬉しそうな顔で、そう言って天幕の中に入って行く俺達を、深々と頭を下げて見送ってくれた。
いや~、完全に忘れてたわ!
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