617 / 1,466
焼却炉?
しおりを挟む
それは不思議な光景だった。
半球状で半透明な巨大なドーム型で展開したシールドは、同じく巨大な体躯を持つヒルコを完全に閉じ込めていた。
そこに大量の燃料を投入して点火した結果、真っ赤に燃え上がる炎もその内部に閉じ込められ半球状の炎となった。
俺が知っている巨大な炎と言えば、小学生の夏休みにキャンプで行った、少年自然の家でのキャンプファイヤーぐらいだ。
森の中にぽっかり空いた広場に組まれて火を点けられたたキャンプファイヤーの炎が、証明なんて無い森の樹々を赤く染め、夜空に舞い上がる火の粉が、星の瞬く夜空を焦がしていた。
井桁に組んだ丸太から立ち昇る炎は、時に赤く、時に朱に、時に青白く、見るたびに色を変えて行く。
あの時見た炎の美しさは、生涯忘れる事は無いだろう。
それほどまでに美しかったし、炎を見つめていると、とても心が安らいだ気がしたもんだ。
目の前の巨大なドームは、ただヒルコを閉じ込めて燃やすためだけに造られ、ヒルコと炎をその中に閉じ込めて逃がさない様にするだけの物なのだが、キャンプファイアーの炎とは全く違って、凶悪その物で、癒しなんてどこにも無かった。
よく見ればわかるのだが、ドームの天井付近からは、微妙に排気がなされており、微かに景色が歪んで見える。
俺の目の前、結界の俺の膝ぐらいの高さには、吸気用の穴があり、そこから風の精霊さんがブロアーの様に風を送り込む。
内部の燃焼が進めば進むほど、結界も熱を持つはずなのだが、そこは水の精霊さんが水をミスト状にして冷やしてくれる。
徐々に周囲には水蒸気も立ち込め、まるでサウナの様だ。
変身していれば、体温は常に一定に保たれるので、どんなに熱くても問題は無い。
いや、流石に溶鉱炉の溶けた鉄の中とかに入ったら、溶けるかもしれない。
溶鉱炉の中にサムズアップしながら入って行った、どっかのT-8〇0の真似なんて絶対しないぞ。
そう言えば、溶鉱炉に沈んで行く時に、アイル・ビ〇・バック…って言ったと思ってたけど、TVで放映された時に、それが間違いだと分って、妙に気恥ずかしかった覚えがあるな。
燃え盛る炎の中、のたうち回っている様に見えるヒルコ。
とは言っても、体組織の殆どが水分なだけあって、燃えるというよりも蒸発しているという感じかな。
何だか表面がシワシワになってる気がする。
いや、炎がすごくて、目の錯覚とか気のせいかもしれないけど。
ん? 俺は一体何を考えてたっけ?
ま、思い出せない手事は、どうでも良い事なんだろう。
離れて見ていた家族の元へと、燃え盛る結界に背を向け、俺はゆっくりと歩きだす。
精霊さん達にお願いしているので、もう俺はお役御免だ。
下手な事をして、精霊さんの邪魔をするわけには行かない。
なので、俺は家族と共に、ヒルコが燃え尽きるのを見守ろう。
お掃除はその後だから、暫し休憩だ。
「お帰りなさいませ。トール様、お疲れさまでした」
あと10歩という所まで戻ってくると、メリルが小走りで駆けよって来て、声を掛けてくれた。
「ああ、ただいま。ここだと熱くないか?」
キャンプファイアーだって、10mほど離れてても、空気の対流や輻射熱で、確か顔が日焼けみたいになったのを覚えてる。
「ええ、少し…」
やっぱりね。
焚火だって近ければ熱い。
ましてや直径がとんでもなくデカイ焚火…ってよりも、焼却炉が視界に入ってるんだから、離れてても顔が熱くなるのは当然。
あれ、これって輻射熱なのかな? 遠赤外線? 直接的な熱だけは対策出来てたけど、まさか実行したらこんなに熱いとは思いもよらなかった。しかもサウナの様な水蒸気だし。
「じゃあ、ホワイト・オルター号まで戻ろう…」
俺は無言で装備一式をベルトへと戻して、飛行船へ足を向けた。
「ミルシェさん、ミレーラさん、マチルダさん、イネスさん。私達も行きましょう」
汗だくって程じゃないけど、俺の嫁さん全員が額にじっとりと汗をかいていた。
「父さん、母さん、コルネちゃんもユリアちゃんも、皆一旦戻るよ~」
放っといたら、いつまでも燃えるドームを見続けていそうなので、船に戻る様に声尾をかけた。
「見てても一緒だよ~。焼き終えたら、やる事あるんだから、さあ休んだ休んだ」
後始末は俺達の仕事だからね。
当然、皆にも協力してもらうぞ?
「あ、それと…離れてても、ほっぺとか熱いって感じてるなら、お肌が乾燥して日焼けみたいにやけどになるよ」
俺が言った途端、女性陣がザザザ…と一斉に後退り、俺を見た。
「いや、本当だからね? あとでドワーフさん謹製の化粧水でお肌のうるおい成分を補充してよ? カッサカサになるよ」
カッサカサと聞いた瞬間、女性陣は全力ダッシュでホワイト・オルター号に駆け込んでいた。
いや、コルネちゃんは微妙なお年頃だけど、ユリアちゃんまで手を引っ張って全力ダッシュ?
ナディア達やサラやリリアさんは、まあ…人外だから大丈夫だろう。
ん? ユリアちゃんも、もしかして大丈夫なんじゃないか、もしかして?
ま、そんな事はどうでもいいか。
俺と父さんとユズキの3人は、全力で避難した女性陣の後を、ゆっくりと追いかけるのだった。
半球状で半透明な巨大なドーム型で展開したシールドは、同じく巨大な体躯を持つヒルコを完全に閉じ込めていた。
そこに大量の燃料を投入して点火した結果、真っ赤に燃え上がる炎もその内部に閉じ込められ半球状の炎となった。
俺が知っている巨大な炎と言えば、小学生の夏休みにキャンプで行った、少年自然の家でのキャンプファイヤーぐらいだ。
森の中にぽっかり空いた広場に組まれて火を点けられたたキャンプファイヤーの炎が、証明なんて無い森の樹々を赤く染め、夜空に舞い上がる火の粉が、星の瞬く夜空を焦がしていた。
井桁に組んだ丸太から立ち昇る炎は、時に赤く、時に朱に、時に青白く、見るたびに色を変えて行く。
あの時見た炎の美しさは、生涯忘れる事は無いだろう。
それほどまでに美しかったし、炎を見つめていると、とても心が安らいだ気がしたもんだ。
目の前の巨大なドームは、ただヒルコを閉じ込めて燃やすためだけに造られ、ヒルコと炎をその中に閉じ込めて逃がさない様にするだけの物なのだが、キャンプファイアーの炎とは全く違って、凶悪その物で、癒しなんてどこにも無かった。
よく見ればわかるのだが、ドームの天井付近からは、微妙に排気がなされており、微かに景色が歪んで見える。
俺の目の前、結界の俺の膝ぐらいの高さには、吸気用の穴があり、そこから風の精霊さんがブロアーの様に風を送り込む。
内部の燃焼が進めば進むほど、結界も熱を持つはずなのだが、そこは水の精霊さんが水をミスト状にして冷やしてくれる。
徐々に周囲には水蒸気も立ち込め、まるでサウナの様だ。
変身していれば、体温は常に一定に保たれるので、どんなに熱くても問題は無い。
いや、流石に溶鉱炉の溶けた鉄の中とかに入ったら、溶けるかもしれない。
溶鉱炉の中にサムズアップしながら入って行った、どっかのT-8〇0の真似なんて絶対しないぞ。
そう言えば、溶鉱炉に沈んで行く時に、アイル・ビ〇・バック…って言ったと思ってたけど、TVで放映された時に、それが間違いだと分って、妙に気恥ずかしかった覚えがあるな。
燃え盛る炎の中、のたうち回っている様に見えるヒルコ。
とは言っても、体組織の殆どが水分なだけあって、燃えるというよりも蒸発しているという感じかな。
何だか表面がシワシワになってる気がする。
いや、炎がすごくて、目の錯覚とか気のせいかもしれないけど。
ん? 俺は一体何を考えてたっけ?
ま、思い出せない手事は、どうでも良い事なんだろう。
離れて見ていた家族の元へと、燃え盛る結界に背を向け、俺はゆっくりと歩きだす。
精霊さん達にお願いしているので、もう俺はお役御免だ。
下手な事をして、精霊さんの邪魔をするわけには行かない。
なので、俺は家族と共に、ヒルコが燃え尽きるのを見守ろう。
お掃除はその後だから、暫し休憩だ。
「お帰りなさいませ。トール様、お疲れさまでした」
あと10歩という所まで戻ってくると、メリルが小走りで駆けよって来て、声を掛けてくれた。
「ああ、ただいま。ここだと熱くないか?」
キャンプファイアーだって、10mほど離れてても、空気の対流や輻射熱で、確か顔が日焼けみたいになったのを覚えてる。
「ええ、少し…」
やっぱりね。
焚火だって近ければ熱い。
ましてや直径がとんでもなくデカイ焚火…ってよりも、焼却炉が視界に入ってるんだから、離れてても顔が熱くなるのは当然。
あれ、これって輻射熱なのかな? 遠赤外線? 直接的な熱だけは対策出来てたけど、まさか実行したらこんなに熱いとは思いもよらなかった。しかもサウナの様な水蒸気だし。
「じゃあ、ホワイト・オルター号まで戻ろう…」
俺は無言で装備一式をベルトへと戻して、飛行船へ足を向けた。
「ミルシェさん、ミレーラさん、マチルダさん、イネスさん。私達も行きましょう」
汗だくって程じゃないけど、俺の嫁さん全員が額にじっとりと汗をかいていた。
「父さん、母さん、コルネちゃんもユリアちゃんも、皆一旦戻るよ~」
放っといたら、いつまでも燃えるドームを見続けていそうなので、船に戻る様に声尾をかけた。
「見てても一緒だよ~。焼き終えたら、やる事あるんだから、さあ休んだ休んだ」
後始末は俺達の仕事だからね。
当然、皆にも協力してもらうぞ?
「あ、それと…離れてても、ほっぺとか熱いって感じてるなら、お肌が乾燥して日焼けみたいにやけどになるよ」
俺が言った途端、女性陣がザザザ…と一斉に後退り、俺を見た。
「いや、本当だからね? あとでドワーフさん謹製の化粧水でお肌のうるおい成分を補充してよ? カッサカサになるよ」
カッサカサと聞いた瞬間、女性陣は全力ダッシュでホワイト・オルター号に駆け込んでいた。
いや、コルネちゃんは微妙なお年頃だけど、ユリアちゃんまで手を引っ張って全力ダッシュ?
ナディア達やサラやリリアさんは、まあ…人外だから大丈夫だろう。
ん? ユリアちゃんも、もしかして大丈夫なんじゃないか、もしかして?
ま、そんな事はどうでもいいか。
俺と父さんとユズキの3人は、全力で避難した女性陣の後を、ゆっくりと追いかけるのだった。
1
お気に入りに追加
1,833
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?
後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。
目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。
日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。
そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。
さて、新しい人生はどんな人生になるのかな?
※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします!
◇◇◇◇◇◇◇◇
お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。
執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇
9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます!
9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~
はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま)
神々がくじ引きで決めた転生者。
「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」
って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう…
まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる