システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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焼却炉?

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 それは不思議な光景だった。
 半球状で半透明な巨大なドーム型で展開したシールドは、同じく巨大な体躯を持つヒルコを完全に閉じ込めていた。
 そこに大量の燃料を投入して点火した結果、真っ赤に燃え上がる炎もその内部に閉じ込められ半球状の炎となった。
 俺が知っている巨大な炎と言えば、小学生の夏休みにキャンプで行った、少年自然の家でのキャンプファイヤーぐらいだ。
 森の中にぽっかり空いた広場に組まれて火を点けられたたキャンプファイヤーの炎が、証明なんて無い森の樹々を赤く染め、夜空に舞い上がる火の粉が、星の瞬く夜空を焦がしていた。
 井桁に組んだ丸太から立ち昇る炎は、時に赤く、時に朱に、時に青白く、見るたびに色を変えて行く。
 あの時見た炎の美しさは、生涯忘れる事は無いだろう。
 それほどまでに美しかったし、炎を見つめていると、とても心が安らいだ気がしたもんだ。

 目の前の巨大なドームは、ただヒルコを閉じ込めて燃やすためだけに造られ、ヒルコと炎をその中に閉じ込めて逃がさない様にするだけの物なのだが、キャンプファイアーの炎とは全く違って、凶悪その物で、癒しなんてどこにも無かった。
 よく見ればわかるのだが、ドームの天井付近からは、微妙に排気がなされており、微かに景色が歪んで見える。
 俺の目の前、結界の俺の膝ぐらいの高さには、吸気用の穴があり、そこから風の精霊さんがブロアーの様に風を送り込む。
 内部の燃焼が進めば進むほど、結界も熱を持つはずなのだが、そこは水の精霊さんが水をミスト状にして冷やしてくれる。
 徐々に周囲には水蒸気も立ち込め、まるでサウナの様だ。
 変身していれば、体温は常に一定に保たれるので、どんなに熱くても問題は無い。
 いや、流石に溶鉱炉の溶けた鉄の中とかに入ったら、溶けるかもしれない。
 溶鉱炉の中にサムズアップしながら入って行った、どっかのT-8〇0の真似なんて絶対しないぞ。
 そう言えば、溶鉱炉に沈んで行く時に、アイル・ビ〇・バック…って言ったと思ってたけど、TVで放映された時に、それが間違いだと分って、妙に気恥ずかしかった覚えがあるな。

 燃え盛る炎の中、のたうち回っている様に見えるヒルコ。
 とは言っても、体組織の殆どが水分なだけあって、燃えるというよりも蒸発しているという感じかな。
 何だか表面がシワシワになってる気がする。
 いや、炎がすごくて、目の錯覚とか気のせいかもしれないけど。

 ん? 俺は一体何を考えてたっけ?
 ま、思い出せない手事は、どうでも良い事なんだろう。
 離れて見ていた家族の元へと、燃え盛る結界に背を向け、俺はゆっくりと歩きだす。
 精霊さん達にお願いしているので、もう俺はお役御免だ。
 下手な事をして、精霊さんの邪魔をするわけには行かない。
 なので、俺は家族と共に、ヒルコが燃え尽きるのを見守ろう。
 お掃除はその後だから、暫し休憩だ。

「お帰りなさいませ。トール様、お疲れさまでした」
 あと10歩という所まで戻ってくると、メリルが小走りで駆けよって来て、声を掛けてくれた。
「ああ、ただいま。ここだと熱くないか?」
 キャンプファイアーだって、10mほど離れてても、空気の対流や輻射熱で、確か顔が日焼けみたいになったのを覚えてる。
「ええ、少し…」
 やっぱりね。
 焚火だって近ければ熱い。
 ましてや直径がとんでもなくデカイ焚火…ってよりも、焼却炉が視界に入ってるんだから、離れてても顔が熱くなるのは当然。
 あれ、これって輻射熱なのかな? 遠赤外線? 直接的な熱だけは対策出来てたけど、まさか実行したらこんなに熱いとは思いもよらなかった。しかもサウナの様な水蒸気だし。
「じゃあ、ホワイト・オルター号まで戻ろう…」
 俺は無言で装備一式をベルトへと戻して、飛行船へ足を向けた。
「ミルシェさん、ミレーラさん、マチルダさん、イネスさん。私達も行きましょう」
 汗だくって程じゃないけど、俺の嫁さん全員が額にじっとりと汗をかいていた。
「父さん、母さん、コルネちゃんもユリアちゃんも、皆一旦戻るよ~」
 放っといたら、いつまでも燃えるドームを見続けていそうなので、船に戻る様に声尾をかけた。
「見てても一緒だよ~。焼き終えたら、やる事あるんだから、さあ休んだ休んだ」
 後始末は俺達の仕事だからね。
 当然、皆にも協力してもらうぞ?
「あ、それと…離れてても、ほっぺとか熱いって感じてるなら、お肌が乾燥して日焼けみたいにやけどになるよ」
 俺が言った途端、女性陣がザザザ…と一斉に後退り、俺を見た。
「いや、本当だからね? あとでドワーフさん謹製の化粧水でお肌のうるおい成分を補充してよ? カッサカサになるよ」
 カッサカサと聞いた瞬間、女性陣は全力ダッシュでホワイト・オルター号に駆け込んでいた。
 いや、コルネちゃんは微妙なお年頃だけど、ユリアちゃんまで手を引っ張って全力ダッシュ?
 ナディア達やサラやリリアさんは、まあ…人外だから大丈夫だろう。
 ん? ユリアちゃんも、もしかして大丈夫なんじゃないか、もしかして?
 ま、そんな事はどうでもいいか。
 俺と父さんとユズキの3人は、全力で避難した女性陣の後を、ゆっくりと追いかけるのだった。
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