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やっと突入…
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皇都の城壁に聳える、巨大な門まであと少しという所。
そこには、ゾンビ化した人たちの成れの果てが何体も転がっていた。
そしてその周囲には、それを貪り喰ったため蟲達に体内に入られた獣が、こちらは数十体転がっていた。
獣達はもはやゾンビ化している様で、手足をばたつかせて、意味の無い動きを繰り返していた。
これは俺の単なる推測なのだが、今まで人の身体を操っていた蟲達が、獣の身体に入り込んで、その身体を動かそうとしているのだとしているのだろうが、身体の動かし方が人とは違うから、上手く操れていないのではないかと思う。
ゾンビ化した獣は、人の様に2本足で歩こうとしている風に見て取れるが、そもそもの身体の造りが違うのだから、バランスが取れないのは明白で、そのせいで地面をのたうち回っている様にしか見えないんだと思う。
だが、近いうちに学習するであろうことも、また明白だ。
何故なら、蠢く獣の一部は、ハイハイを覚えた赤子の様に、少しずつではあるが移動が出来ているからだ。
きっとあの蟲は、人の身体に入り込んだ当初は、やはり上手く身体を制御できなかったのだろう。
もしも最初から上手く動かす事が出来ていれば、もっと拡散していたはず。
そうなれば、広い範囲を捜索しなくてはいけなかった…不幸中の幸いと言って良いのだろうか…俺には何とも言えない。
ただ、蟲達によってゾンビにされた人達に、安らかな死を与える事しか俺には出来ない。
まだ生きている…いや、蟲に生かされている人に、安らかな死を。
モフリーナの解析によると、あの蟲達は宿主の思考能力だけでなく、意思や痛覚をも完全に無くしているのだという。
確かに痛覚なんて残ってれば、腹の中に無数の蟲が居る状況なんて、気持ち悪くて仕方ないだろう。
獣に手足を喰い千切られれば、のたうち回る所の話じゃないだろう。
蟲は…いや、あの蟲を造り出したダンジョンマスターは、そこまで考えていたのかどうかは分からない。
ただ、ダンジョンの一部でもある蟲達が乗っ取った宿主を、ただひたすら遠くに行かせたかっただけなのかもしれな。
少し疑問に感じたのは、何で蟲達がダンジョンとの繋がりが少ないのかという点。
もしも繋がっているのであれば、城門をゾンビが出た時に、そこをダンジョン化出来たはずだ。
そんな俺の疑問も、モフリーナの的確な分析によって、明らかにされた。
あの蟲達は繁殖している…からなのだそうだ。
一般的に、ダンジョンマスターが造り出した魔物やモンスターと言われる物は、繁殖をしない。
いや、生殖器が無いので出来ないのだそうだ。
ところがこの蟲達は、単に自然界に存在する蟲を、ダンジョンマスターが改造しただけであって、細かい設定までは出来ていないらしく、その蟲が本来持っている性質までは変えれていないんだそうだ。
つまり、あの白い幼虫の姿が本来の姿と思い込んだダンジョンマスターが、ただ自分の手駒にするために改造を加えただけであって、それが変質して成虫となり、また雌雄が存在して繁殖するなど、考えても居なかったのではないかという。
元々の幼虫の時であれば、ダンジョンとの繋がりを持っていたであろうが、変態して成虫になった時に、それが何らかの理由で消えたか外れたという事らしい。
て事は、あの蟲はすでにダンジョンの魔物では無い…のかというと、そうでもないらしい。
あくまでもダンジョンによって生み出された、新しい種の生物であるらしく、あえて所属をつけるならダンジョンなのだという。
…つまり、俺が子供の頃に、俺が住む村をダンジョンから逃げ出した魔物が襲ったスタンピードがあったが、あの時の魔物の様な物なのか? と、モフリーナに聞いたら、もの凄く嫌そうな顔をしながらも、似た様な物ですと、応えてくれた。
ダンジョンが絡むと、色々とルールというか取り決めというか、決め事というか…面倒だ。
俺が、蠢くゾンビを前にして、突入組にそう話すと、
「要は、全部倒せばいいんでしょ?」
単純な(失礼)ユズカはそう言いながら、手に持つ巨大なランスでゾンビの頭を一突きにした。
「もう人じゃないなら、遠慮はいらないですね」
ユズキも、振りかぶった拳から、紅く光る結界を飛ばして狼の様な姿のゾンビの頭を爆散させた。
すかさずアーデが油を柄杓でそれらに掛けると、コルネちゃんが魔法で点火。
「ユリアちゃん…情けは無用です。あなたが可哀想だと手加減をすると、他の誰かがあの様な姿になってしまうのです。お母さんがああなったらいやでしょう?」
「うん。おねえちゃん、おもいっきりぱんちしてたおしたらいいんだよね? ゆりあ、がんばるから!」
コルネちゃんは、姉として妹であるユリアちゃんを導いていた。
「私達も、手加減は無用です。もう、ゾンビになった人達は元には戻りません。私達5人で、殲滅するのです」
メリルが、ゴウと音を立てて燃え上がるゾンビを見つめ乍ら、4人の嫁達に声を掛けていた。
「もちろんです! やってやりましょう!」
「…憐れなゾンビに永遠の眠りを…」
「一匹たりとも、皇都から出すわけには行きません」
「旦那様の覇道を阻む者には死を!」
ミルシェが力強く、ミレーラが可哀想な虫の被害者を悼み、マチルダが決意も新たにした。
イネスは…イネスは、ちょっとずれてないか?
とにかく、ようやくここまで来た。
「よし、では門前のゾンビを片付けたら、皇都に突入する。ナディア、アーデ、アーム、アーフェンは、大変だけど油と吸いとーる君を持って、打ち合わせ通り各組について行くように。妖精さんはゾンビを探して、皆がどこへ向かったらいいのか、どんどん指示を出してね」
全員黙って作戦を聞く。
「モフリーナは、すでに皇都を取り囲む街道はダンジョン領域が完了したそうだから、逃げたのは放っておけ。周囲に生きた人は居ないらしいから、新たな被害も出ないはずだ。安全にモフリーナが消してくれるだろう」
これで後顧の憂い無く、突入出来るはず。
「ゾンビの弱点は、まだ機能している脳と心臓だから、重点的に狙う様に。倒したら即座に油をかける様に」
おっと、精霊さ~ん! 油かけたゾンビは、建物とかに火が燃え広がらない様に注意しながらガンガン燃やしてね。
「油をかけたら、ネス様が浄化の炎で焼いてくれるそうだ。そこも忘れずに吸い取ってね…んじゃ、作戦開始!」
『 おーーー! 』
さてさて、んじゃ俺は物陰に隠れて、こっそりガチャ玉使いましょうかねえ。
夢の…って程でも無いけど、異世界スキルを使うための例のブツを創造だ!
魔法ったって精霊さん任せだし、自分のイメージで使えるモノが欲しい!
無駄にいっぱいあるエネルギーを使って、何かしたい!
俺だって格好いい技とか欲しいんだい!
そこには、ゾンビ化した人たちの成れの果てが何体も転がっていた。
そしてその周囲には、それを貪り喰ったため蟲達に体内に入られた獣が、こちらは数十体転がっていた。
獣達はもはやゾンビ化している様で、手足をばたつかせて、意味の無い動きを繰り返していた。
これは俺の単なる推測なのだが、今まで人の身体を操っていた蟲達が、獣の身体に入り込んで、その身体を動かそうとしているのだとしているのだろうが、身体の動かし方が人とは違うから、上手く操れていないのではないかと思う。
ゾンビ化した獣は、人の様に2本足で歩こうとしている風に見て取れるが、そもそもの身体の造りが違うのだから、バランスが取れないのは明白で、そのせいで地面をのたうち回っている様にしか見えないんだと思う。
だが、近いうちに学習するであろうことも、また明白だ。
何故なら、蠢く獣の一部は、ハイハイを覚えた赤子の様に、少しずつではあるが移動が出来ているからだ。
きっとあの蟲は、人の身体に入り込んだ当初は、やはり上手く身体を制御できなかったのだろう。
もしも最初から上手く動かす事が出来ていれば、もっと拡散していたはず。
そうなれば、広い範囲を捜索しなくてはいけなかった…不幸中の幸いと言って良いのだろうか…俺には何とも言えない。
ただ、蟲達によってゾンビにされた人達に、安らかな死を与える事しか俺には出来ない。
まだ生きている…いや、蟲に生かされている人に、安らかな死を。
モフリーナの解析によると、あの蟲達は宿主の思考能力だけでなく、意思や痛覚をも完全に無くしているのだという。
確かに痛覚なんて残ってれば、腹の中に無数の蟲が居る状況なんて、気持ち悪くて仕方ないだろう。
獣に手足を喰い千切られれば、のたうち回る所の話じゃないだろう。
蟲は…いや、あの蟲を造り出したダンジョンマスターは、そこまで考えていたのかどうかは分からない。
ただ、ダンジョンの一部でもある蟲達が乗っ取った宿主を、ただひたすら遠くに行かせたかっただけなのかもしれな。
少し疑問に感じたのは、何で蟲達がダンジョンとの繋がりが少ないのかという点。
もしも繋がっているのであれば、城門をゾンビが出た時に、そこをダンジョン化出来たはずだ。
そんな俺の疑問も、モフリーナの的確な分析によって、明らかにされた。
あの蟲達は繁殖している…からなのだそうだ。
一般的に、ダンジョンマスターが造り出した魔物やモンスターと言われる物は、繁殖をしない。
いや、生殖器が無いので出来ないのだそうだ。
ところがこの蟲達は、単に自然界に存在する蟲を、ダンジョンマスターが改造しただけであって、細かい設定までは出来ていないらしく、その蟲が本来持っている性質までは変えれていないんだそうだ。
つまり、あの白い幼虫の姿が本来の姿と思い込んだダンジョンマスターが、ただ自分の手駒にするために改造を加えただけであって、それが変質して成虫となり、また雌雄が存在して繁殖するなど、考えても居なかったのではないかという。
元々の幼虫の時であれば、ダンジョンとの繋がりを持っていたであろうが、変態して成虫になった時に、それが何らかの理由で消えたか外れたという事らしい。
て事は、あの蟲はすでにダンジョンの魔物では無い…のかというと、そうでもないらしい。
あくまでもダンジョンによって生み出された、新しい種の生物であるらしく、あえて所属をつけるならダンジョンなのだという。
…つまり、俺が子供の頃に、俺が住む村をダンジョンから逃げ出した魔物が襲ったスタンピードがあったが、あの時の魔物の様な物なのか? と、モフリーナに聞いたら、もの凄く嫌そうな顔をしながらも、似た様な物ですと、応えてくれた。
ダンジョンが絡むと、色々とルールというか取り決めというか、決め事というか…面倒だ。
俺が、蠢くゾンビを前にして、突入組にそう話すと、
「要は、全部倒せばいいんでしょ?」
単純な(失礼)ユズカはそう言いながら、手に持つ巨大なランスでゾンビの頭を一突きにした。
「もう人じゃないなら、遠慮はいらないですね」
ユズキも、振りかぶった拳から、紅く光る結界を飛ばして狼の様な姿のゾンビの頭を爆散させた。
すかさずアーデが油を柄杓でそれらに掛けると、コルネちゃんが魔法で点火。
「ユリアちゃん…情けは無用です。あなたが可哀想だと手加減をすると、他の誰かがあの様な姿になってしまうのです。お母さんがああなったらいやでしょう?」
「うん。おねえちゃん、おもいっきりぱんちしてたおしたらいいんだよね? ゆりあ、がんばるから!」
コルネちゃんは、姉として妹であるユリアちゃんを導いていた。
「私達も、手加減は無用です。もう、ゾンビになった人達は元には戻りません。私達5人で、殲滅するのです」
メリルが、ゴウと音を立てて燃え上がるゾンビを見つめ乍ら、4人の嫁達に声を掛けていた。
「もちろんです! やってやりましょう!」
「…憐れなゾンビに永遠の眠りを…」
「一匹たりとも、皇都から出すわけには行きません」
「旦那様の覇道を阻む者には死を!」
ミルシェが力強く、ミレーラが可哀想な虫の被害者を悼み、マチルダが決意も新たにした。
イネスは…イネスは、ちょっとずれてないか?
とにかく、ようやくここまで来た。
「よし、では門前のゾンビを片付けたら、皇都に突入する。ナディア、アーデ、アーム、アーフェンは、大変だけど油と吸いとーる君を持って、打ち合わせ通り各組について行くように。妖精さんはゾンビを探して、皆がどこへ向かったらいいのか、どんどん指示を出してね」
全員黙って作戦を聞く。
「モフリーナは、すでに皇都を取り囲む街道はダンジョン領域が完了したそうだから、逃げたのは放っておけ。周囲に生きた人は居ないらしいから、新たな被害も出ないはずだ。安全にモフリーナが消してくれるだろう」
これで後顧の憂い無く、突入出来るはず。
「ゾンビの弱点は、まだ機能している脳と心臓だから、重点的に狙う様に。倒したら即座に油をかける様に」
おっと、精霊さ~ん! 油かけたゾンビは、建物とかに火が燃え広がらない様に注意しながらガンガン燃やしてね。
「油をかけたら、ネス様が浄化の炎で焼いてくれるそうだ。そこも忘れずに吸い取ってね…んじゃ、作戦開始!」
『 おーーー! 』
さてさて、んじゃ俺は物陰に隠れて、こっそりガチャ玉使いましょうかねえ。
夢の…って程でも無いけど、異世界スキルを使うための例のブツを創造だ!
魔法ったって精霊さん任せだし、自分のイメージで使えるモノが欲しい!
無駄にいっぱいあるエネルギーを使って、何かしたい!
俺だって格好いい技とか欲しいんだい!
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