システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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モフリーナとモフレンダ

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 作戦会議というか、トールヴァルドによる、一方的な皇都殲滅戦における作戦が通達されて解散した会議の後の事。
 ホワイト・オルター号の会議に、ゲストとして呼ばれていたモフリーナとモフレンダは、アルテアン一家に丁寧に船外まで見送られた。

「もう! モフレンダは、まだトールヴァルド様と真面に話せないんですか?」
 トールヴァルド様を…というか、私以外の人を前にすると、途端にモジモジとして私に隠れる、同輩のダンジョンマスター。
 今も、私の右腕にしがみ付く様にくっ付いて、離れようとしない。
「…まだ…人…こわい…」
 まあ、長い間たった一人で死の山脈の天辺でダンジョンを守って来た(?)のだから、人に慣れていないのは仕方がない。

 万年雪で埋もれ、この大陸に人種が生活を始めてから、永い永い時間が経っているはずだが、あの山脈を越えようとした者の話は、どの書物にも書かれていないそうだ。
 トールヴァルド様のお話によると、標高6000mというのは、人にとっては死の世界なのだそうだ。
 その標高では、人にとって必要な空気の中の何かが平地の半分程度まで減り、ただじっとしているだけで人の細胞が徐々に死滅してくんだそうです。
 その為、多くの人はそれだけの高さの山を登ろうとすると、身体のあちこちに不調をきたして、最悪は動けなくなり死に至るとか。
 もちろん、あまりの寒さに動けなくなれば死ぬのも当然だけど。
 そんな死の山に生き物が居るはずも訪れるはずも無く、生れてからただ1人ずっとじっと耐えてきたそうだ。
 私の様に、生れてすぐにトールヴァルド様の様な方と知り合えていれば、もっとモフレンダも明るい娘になってただろう。
 
「でも、あなたに渡したエネルギー入りの水晶は、あのお方からのプレゼントなのよ?」
 トール様にお願いしたら、ホイホイとくれるエネルギー入りの水晶。
 私も簡単にモフレンダにあげちゃったわけだけど、アレ1つで数千のモンスターと十階層近くはダンジョンを拡張出来るほどの物だ。
「…だから…こわい…の…」
「え、何で!?」
 あれだけあれば、好きな場所に新たにダンジョンを移す事だっけ出来るのに。
「…だって…あのエネルギー…何万人分の…魂?」
 あ、まさかこの娘、トールヴァルド様が大量虐殺してエネルギーを集めたとか思ってたり?
「違うわよ、モフレンダ。あれは純粋にトールヴァルド様が元々体内に保有されているものよ」
 私の言葉に、驚いたようにわずかに目を見開いたモフレンダ。 
「う…そ…だったら…」
「だったら?」
「ば…ばけ…もの…」
 きっと、トールヴァルド様が聞いたら、「誰が化け物か!」ってツッコミそうね。
「そうね。あのお方は、ある種の化け物よ。だって、女神様の使徒様なのですから」
「………」
 もっとも、それだけでは説明が付かない事も多々あるのだけど、それはトールヴァルド様と私だけの秘密にしておきましょう。
 管理局とか局長とかの言葉は、きっとあのお方の秘密の一端だと思うから。

「ああ、それとね。トールヴァルド様に正式に許可も取れたので、今後のお話をしましょう」
「…?」
「実はね…この世界には、この大陸と同じ広さの大陸がもう一つあるの」
「?」
「実は、その大陸はトールヴァルド様がお創りになったのだけど、それを私が全てダンジョンにさせて頂いたのよ」
「!」
 お、驚いてる、驚いてる。
「地上50階、地下50階にもなる巨大な塔が合計で100基。大地と変わらない地下の巨大空間が3層。地上の森林。つまり、その大陸の全てが私のダンジョン領域です」
「!!」
 よく考えたら、あれだけのダンジョンをもふりんだけで管理するのは無理です。
「今は私の分身が管理していますが、とても手が回りません。というのも、実はすでに数千人を保護しておりまして、今回の戦争でも十万を超える人も私のダンジョンで保護するからです」
「…?」
「もちろん、それだけの人が常時ダンジョン領域内に居るのですから、ものすごいエネルギー収入なのですが…はっきり言って、管理の手が足りません」
「……」
「なので、貴方にも手伝っていただきたいのです。出来るならこれから救出する予定の、第一番ダンジョンのマスターにも。私が領域化を一旦解除しますので、各々で分担を決めて、領域を分割しようかと思っているのですよ」
「!!!!」
 おお、もの凄く驚いてる。
「あなたが生れて来てからどれほど辛い思いをしてきたかも、ちゃんとあのお方は知っておられます。だからこそ、今回の戦争への参加も快諾してくれ、私と領域化を分け合う事も、獲物も分け合う事にも許可を出されたのです。本来、この作戦は私だけで行う物で、全てのエネルギーは私の物だったのですよ」
「……」
 そう、本来獲物は私の総取りだったのだ。
 それを、モフレンダを憐れんだ私とトールヴァルド様で、手間は増えるがわけ合える様にして頂いたのだ。
「そこに、あのエネルギーです。あの御方に感謝こそすれ、憎んだり嫌ったりすべきではありませんよ」
「…わかってる…」
 この娘も馬鹿では無いでしょうから、頭では理解出来ているのでしょう。
「そう? ならいいのです。まあ、慌てなくても大丈夫です。先ほど顔合わせをした方々は、信用に足る方々です。いつかきちんと自分でお礼を言える様にしてくださいね」
「……うん…」
 元々が内気な性格なのでしょうかね、モフレンダは。
 今度の第一番ダンジョンのマスターも、どうやら永く閉じ込められてしまったせいか、性格がねじ曲がってるようですし…少し心配ですね。
 そちらの事は、この先、救出できてから考えましょう。

 さしあたっては…
「さて、それではトールヴァルド様にお願いされた油の運搬をいたしましょう。ダンジョンの1階に運び込んで頂けるように、トールヴァルド様が街に連絡してくださったそうですから、転移するだけですし…ん? あなたも一緒に行きたいのですか?」
 モフレンダが、横で小さく頷いていた。
「そうですか。でしたら、一緒に行きましょう。私のダンジョンは、一味違いますよ?」
 笑いながら、モフレンダを連れて、私は愛する第9番ダンジョンへと転移した。
 さあ、頼まれたお仕事は、きっちりこなしましょう!
 そして、またお駄賃のエネルギーを、この可愛いモフレンダの為にも、おねだりしなければ!

 ところで、これ程に大きな事態なので、ダンジョンの神様にも一報をと思ったのですが、連絡が取れません…神様、どうしちゃったのでしょうか?
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