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特別ゲスト
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味方の軍が撤退してゆくのを見送った俺達一家は、ホワイト・オルター号のいつもの食堂に集まっていた。
もちろん、明日の決戦に備える為の、いつもの家族会議のお時間だ。
今日は、特別ゲストもお招きした。
「さて、それではいよいよこの戦争も大詰めとなりました」
実は、この大詰めが一番面倒くさいのだが。
「まずは、現状の再確認を行いたいと思います。ナディア…ちょっと皇都の様子を説明してくれるかな?」
情報収集担当のナディアから、報告をしてもらう。
俺の指名を受けたナディアは、すっくと立ち上がると、綺麗な礼を披露してから話し始める。
「ご指名に与かり、このナディア…僭越ながら、皇都の様子をご報告させて頂きたいと思います」
硬い! 硬いよ! もっと砕けてOKだから! 身内だけなんだから!
「ごほんっ! まず皇都の現状ですが、配下の妖精達に現在も探索をさせておりますが、屋外・屋内共に、生きた人の存在は確認されておりません」
うん、まあ、アレを見ちゃったからな…そんな気はしてたよ。
この場に集った我が家のメンバーも、予想はしていたのか大きなショックは受けていない様だ。
ただ、沈痛な面持ちではあるのだが。
クソ外道によって蹂躙されていた村々や街の話を聞いた時の様な、怒り爆発とはならなかった。
ただ、だからと言って納得しているという分けでも無い。
どこかこの理不尽な現状に、憤りを感じているのかもしれない。
「原因は、妖精の発見したダンジョンにあると思います。とは言いましても、まだそのダンジョンの姿を正確に視認出来たわけでは無く、ダンジョン特有のエネルギーの不自然な流れを、汚水の底に感知したに過ぎないのですが…」
そう言って、ナディアが視線を向けたのは、テーブルの端っこに座っている、モフリーナとモフレンダ。
まあ、モフレンダは、目の前のお茶の入ったカップを両手で持って、小さくなってるだけなんだけど。
ガタッと小さく椅子を鳴らして立ち上がったモフリーナは、
「はい、ここからは私がお話ししましょう。この異常事態の原因は、ダンジョンで間違いございません。推測ではありますが、ダンジョンに何らかの形で触れた生物を、ダンジョンマスターが取り込み、改良・複製を行って、世に解き放ったのだと思います」
うん、これもアノ幼虫見てるから、全員が納得。
「この場の皆様は、ダンジョンの特性にある程度のご理解がおありですので、正直にお話しますと、これはダンジョンの支配領域を拡大する目的で、ダンジョンマスターが外の世界に向けて放った尖兵…または、工作員の様なものかと推測します」
まあ、それも事前に説明されてたんで、何となくわかる。
「この尖兵もしくは工作員である蟲ですが、多方面より解析してみましたところ、かなり限定的な能力しかありません」
ほう…それは耳寄りな情報だな。
「この蟲の元々の能力なのか、ダンジョンマスターの能力なのかまでは分りませんが、行動範囲は非常に狭い範囲に限られます。これは、成虫になっても変わりません。また移動速度は、生命エネルギーを吸いつくして身体を乗っ取った生物の、普段の移動速度の凡そ1/20程度です。ただし、繁殖能力は非常に高く、最初蟲の発生が仮に数か月前だとすると、現状では数億近くまで増えている可能性があります」
億って…視界いっぱいに広がる、カブトムシの幼虫…想像しただけで吐きそう…
「成虫は、雄は交尾を行うと死に、雌は産卵すると死にます。正確には最大周期は25日で、孵化から死滅します」
ん~何て感想を言えばいいんだ? 意外と短い? それとも長い?
「産卵数は多くは無く、1回で約20個程度です。ただ、生きた生命に次々に卵を産み付け続けますので…あの街のあらゆる生き物は…」
今までモフリーナには、基本的にダンジョンに来た冒険者を殺さない様に言いつけ、それを守って来たからか、多少はこの状態に思う所があるのかもしれない。
「限られた条件の中で、ダンジョンの生存を賭けたダンジョンマスターの生き残りの手段として、人の領域外へとダンジョンを伸ばそうとした行為ですので、悪気は無かったのだと思います…。ですので、どうかダンジョンだけは助けて頂けないでしょうか!?」
同じダンジョンマスターとしての、モフリーナの心からの願いだった。
「モフリーナさん、有難うございます。私と妖精達、ダンジョンを代表するモフリーナさんからの報告を終わります」
そう言って、ナディアが頭を下げると、立ち尽くしていたモフリーナも同じように頭を下げてから着席した。
ダンジョンの特性を思い返してみるが、自分の領域外の生き物を殺したところで、エネルギーを得る事は出来ないんだから、確かに悪意はないんだろう。
ラノベ的表現だと、残り少ないダンジョンポイントを使って改良した蟲を使って、ダンジョンポイントにならない殺戮をする意味は無いはずだもんな。
って事は、やっぱダンジョンマスターが生き残る為に、皇都の外に生きる道を求めて、あの蟲達を放ったって事だろう。
結果的に、自分が将来得られるかも知れないエネルギーが無駄に消えたのは、かなり不本意だっただろうな。
「2人共ありがとう」
2人に礼を言ってから、俺は立ち上がった。
「実は、先ほどネス様からの神託がありました。それは、この皇都に関する最終的な処遇です」
ネス様の神託というパワーワードで、全員の背筋がピンッと伸びた。
「ネス様からの神託内容は2つです。1つは、あの蟲に操られるこの皇都と周辺の生命と、皇都自体の完全消滅です。殲滅ではありません」
全員、真剣な目で聞いている。
「そして2つ目が、ダンジョンマスターを含めた、ダンジョンの救出です」
まるでそれが当然の様に、全員大きく頷いた。
もちろん、明日の決戦に備える為の、いつもの家族会議のお時間だ。
今日は、特別ゲストもお招きした。
「さて、それではいよいよこの戦争も大詰めとなりました」
実は、この大詰めが一番面倒くさいのだが。
「まずは、現状の再確認を行いたいと思います。ナディア…ちょっと皇都の様子を説明してくれるかな?」
情報収集担当のナディアから、報告をしてもらう。
俺の指名を受けたナディアは、すっくと立ち上がると、綺麗な礼を披露してから話し始める。
「ご指名に与かり、このナディア…僭越ながら、皇都の様子をご報告させて頂きたいと思います」
硬い! 硬いよ! もっと砕けてOKだから! 身内だけなんだから!
「ごほんっ! まず皇都の現状ですが、配下の妖精達に現在も探索をさせておりますが、屋外・屋内共に、生きた人の存在は確認されておりません」
うん、まあ、アレを見ちゃったからな…そんな気はしてたよ。
この場に集った我が家のメンバーも、予想はしていたのか大きなショックは受けていない様だ。
ただ、沈痛な面持ちではあるのだが。
クソ外道によって蹂躙されていた村々や街の話を聞いた時の様な、怒り爆発とはならなかった。
ただ、だからと言って納得しているという分けでも無い。
どこかこの理不尽な現状に、憤りを感じているのかもしれない。
「原因は、妖精の発見したダンジョンにあると思います。とは言いましても、まだそのダンジョンの姿を正確に視認出来たわけでは無く、ダンジョン特有のエネルギーの不自然な流れを、汚水の底に感知したに過ぎないのですが…」
そう言って、ナディアが視線を向けたのは、テーブルの端っこに座っている、モフリーナとモフレンダ。
まあ、モフレンダは、目の前のお茶の入ったカップを両手で持って、小さくなってるだけなんだけど。
ガタッと小さく椅子を鳴らして立ち上がったモフリーナは、
「はい、ここからは私がお話ししましょう。この異常事態の原因は、ダンジョンで間違いございません。推測ではありますが、ダンジョンに何らかの形で触れた生物を、ダンジョンマスターが取り込み、改良・複製を行って、世に解き放ったのだと思います」
うん、これもアノ幼虫見てるから、全員が納得。
「この場の皆様は、ダンジョンの特性にある程度のご理解がおありですので、正直にお話しますと、これはダンジョンの支配領域を拡大する目的で、ダンジョンマスターが外の世界に向けて放った尖兵…または、工作員の様なものかと推測します」
まあ、それも事前に説明されてたんで、何となくわかる。
「この尖兵もしくは工作員である蟲ですが、多方面より解析してみましたところ、かなり限定的な能力しかありません」
ほう…それは耳寄りな情報だな。
「この蟲の元々の能力なのか、ダンジョンマスターの能力なのかまでは分りませんが、行動範囲は非常に狭い範囲に限られます。これは、成虫になっても変わりません。また移動速度は、生命エネルギーを吸いつくして身体を乗っ取った生物の、普段の移動速度の凡そ1/20程度です。ただし、繁殖能力は非常に高く、最初蟲の発生が仮に数か月前だとすると、現状では数億近くまで増えている可能性があります」
億って…視界いっぱいに広がる、カブトムシの幼虫…想像しただけで吐きそう…
「成虫は、雄は交尾を行うと死に、雌は産卵すると死にます。正確には最大周期は25日で、孵化から死滅します」
ん~何て感想を言えばいいんだ? 意外と短い? それとも長い?
「産卵数は多くは無く、1回で約20個程度です。ただ、生きた生命に次々に卵を産み付け続けますので…あの街のあらゆる生き物は…」
今までモフリーナには、基本的にダンジョンに来た冒険者を殺さない様に言いつけ、それを守って来たからか、多少はこの状態に思う所があるのかもしれない。
「限られた条件の中で、ダンジョンの生存を賭けたダンジョンマスターの生き残りの手段として、人の領域外へとダンジョンを伸ばそうとした行為ですので、悪気は無かったのだと思います…。ですので、どうかダンジョンだけは助けて頂けないでしょうか!?」
同じダンジョンマスターとしての、モフリーナの心からの願いだった。
「モフリーナさん、有難うございます。私と妖精達、ダンジョンを代表するモフリーナさんからの報告を終わります」
そう言って、ナディアが頭を下げると、立ち尽くしていたモフリーナも同じように頭を下げてから着席した。
ダンジョンの特性を思い返してみるが、自分の領域外の生き物を殺したところで、エネルギーを得る事は出来ないんだから、確かに悪意はないんだろう。
ラノベ的表現だと、残り少ないダンジョンポイントを使って改良した蟲を使って、ダンジョンポイントにならない殺戮をする意味は無いはずだもんな。
って事は、やっぱダンジョンマスターが生き残る為に、皇都の外に生きる道を求めて、あの蟲達を放ったって事だろう。
結果的に、自分が将来得られるかも知れないエネルギーが無駄に消えたのは、かなり不本意だっただろうな。
「2人共ありがとう」
2人に礼を言ってから、俺は立ち上がった。
「実は、先ほどネス様からの神託がありました。それは、この皇都に関する最終的な処遇です」
ネス様の神託というパワーワードで、全員の背筋がピンッと伸びた。
「ネス様からの神託内容は2つです。1つは、あの蟲に操られるこの皇都と周辺の生命と、皇都自体の完全消滅です。殲滅ではありません」
全員、真剣な目で聞いている。
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まるでそれが当然の様に、全員大きく頷いた。
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