システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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これより作戦を開始する

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 その村の光景は、正しく地獄だった。
 門を1歩潜り抜けた先で目にした光景は、辺り一帯に散らばる腐って蟲が集る死体だった。
 俺達が身に纏うこのヘルムは、が息を完全に遮断する完全密閉型であり、不要な排出され呼気は装備が完全に分解し、必要とされる酸素などに再生され活用される。
 ゆえに外界の毒や匂いなどは、俺達が感じるはずも無い。
 だが、全員がそれを感じた様だ。
 誰もその惨劇のあった村へと歩みを進めようとしないで、ただただその光景を前に立ち尽くしていた。
 ヘルムの機能で表情は見えないのだが、実際の装着者から非常にクリアーな視界なのだから始末が悪い。
 この光景の余すとこなく全てが見えてしまっている。
 しかも死体の殆どは、老人や子供であり、まだ年若い女性達は、着衣を身に纏ってない。
 多くの女性の死体は、股から出血しているのが、目を開けていれば嫌でも見えてしまう。
 つまりは、そういう事なのだろう。

「…許さない……絶対に……許さない…」
 振り返ると、燃える様に紅い装備を身に纏ったユズキが、少しうつむき加減で肩を震わせていた。
「柚希…うん…許せないね…」
 そんなユズキに寄り添いながら、ユズカもそれに同意した。
「ええ、ユズキさん、ユズカさん。私も一人の女性として…いいえ、人として許すわけにはまいりません!」
 メリルも力強く言い切った。
「私もです、メリルさん。こんな酷い事、許しておけません!」
「…こんなに…こんなに、人が憎いと思ったのは、生れてはじめてです…」
 ミルシェが、ミレーラが、怒りと悲しみに打ち震えた。
「これが村を任された兵が、逃げ出した兵が仕出かした事なのですね。ならば、その罪、死には死で償って貰いましょう!」
「ふざけるな! 弱者を守らずして何が騎士か! 強者に向かわずして何が兵か! こんな腐った奴ら、叩き殺してやる!」 
 マチルダが、イネスの怒りが爆発する寸前だった。
『マスター、我々と全ての妖精が、今この時より虐げられた人々を結界で包みます。どうぞ、マスターはお好きに暴れて下さい』
『『『我々にお任せください』』』
 ナディアが、アーデ、アーム、アーフェンが、その力を揮うと言ってくれた。

 そして、俺の気持ちに連動したかのように、大地は震え、大気は騒めく。
 ああ、これは精霊さんだな…俺にしか見えないけど、当たり一面に無数の、それこそ今まで見た事ない数の精霊さんが集まって来ている。
 精霊さん精霊さん…皆はこの光景をどう思う? 酷いと思わないかい? こんな事をする奴を許せるかい?
 目の前の精霊さん達は、一斉に首を横に振った。
 俺はね、怒ってるんだよ…絶対に、こいつら許さない。
 精霊さんは、どう?
 いつも愛くるしい姿で、俺のエネルギーをちゅーちゅー吸いに来る精霊さん。
 お茶目なコスプレを披露してくれる精霊さん。
 無茶なお願いでも、協力して頑張ってくれる精霊さん。
 そんな精霊さんが、バッ! と音がした(気がする)と思ったら、どこかで見た様なダンダラ羽織と、"誠"と書かれた鉢金をした姿へと、一斉に変わった。
 もしかして、新選組?
 なんか爪楊枝みたいな刀を抜き、高く掲げて…
 え? 武士道に背く行為は許すまじ!? 
 ……うん、了解です。
 では、命令は精霊組筆頭局長である、このトールヴァルドの命あるまで待機!

「 ナディア…全ての妖精達へと以下を通達。今から精霊さん達が、腐った奴らの潜む場所に穴を開ける。そこから突入して要救護者を結界を用いて安全を確保せよ。クイーン、全ての蜂達に通達。妖精さんと共に突入し、救助者の安全が確認されたら、迷うことなく畜生に針を突きさせ! メリル、ミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネス、ユズキ、ユズカは、畜生等を1人残さず処分だ。ナディア、アーデ、アーム、アーフェンは、救護者を村の外まで結界を維持したまま移動し、ホワイト・オルター号へ誘導」
 手早く纏めた作戦を伝えた。
「では、これより作戦を開始する。カウント5…( 精霊さん、GO! )4…3…2…1…0、全員、突撃!」
 俺のカウントを待たず、精霊さんは突撃。
 次いでカウント0で、残った全員が村へと雪崩れ込んだ。
 
 あちこちの家屋から、男達の怒声が響き渡る。
「なんだ!?」「壁に穴が!」「おい、敵襲か?」「誰か様子を見てこい!」
 壁や屋根に無数の穴が穿たれ、屋外からでも中が見える。
 半裸で慌てる汚らしい男と、ぐったりと横たわる全裸の女性達。
 その穴を目がけ、蜂達が次々に飛び込んで行く。
 男達の怒声が絶叫に変わった頃、村へと突撃した俺達は、それぞれが目に付く手近な家屋に飛び込み、扉を蹴破り、壁を破壊して、屋内へと飛び込んで行った。
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