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我等これより修羅となる!

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「では、俺とユズキとユズカ、それとブレンダーとクイーンはここで降りる。メリル達はこの船を守ってくれ」

 元々、このホワイト・オルター号は、女神ネスから賜った神具という事で、戦には使わないと明言していたんだが…その制限は、この戦では適用されない。
 先の恐怖の大王戦でもそうだが、世界の危機や人々の救命の為というお題目の上で運用しているからだ。
 なので、最低限の兵しか運ばないし、直接的な攻撃は神罰以外で行わない。
 いや、侵略の為の戦争じゃないからという、苦しい言い訳なんだけどね。
 だからこそ、グーダイド王国にも、アーテリオス神国にも、略奪行為も侵略行為も、一切女神様達は許可を出してないわけだ。

 それはともかく、やはり空を飛ぶ船なんてものは、軍部のトップであれば誰もが欲しがる、戦略的にも戦術的にも重要な兵器である。
 こいつが空から一方的に攻撃すれば、どんな戦だろうと負けないだろうし、物資の輸送も捗る事間違いなしだ。
 だからこそ、誰もが欲しがる。
 初めてこのホワイト・オルター号を王都でお披露目した時、俺から取り上げようとした軍務大臣が居たが、普通はあれが真っ当な考え方なんだろうな。
 まあ、俺は自他共に認めるヘタレだし、利己的な男だから、前言撤回やちゃぶ台ひっくり返す事なんて平気の平だからな。

 ってな事で、今は味方であろうとも、守りだけはしっかりと固める必要がある。
 もっとも、飛行船を取り囲むように展開されているシールドは、我が家のメンバーの許可無く通り抜ける事は出来ないが。

 俺達は、神罰を下した例の場所から、少し進んだ場所にある、寂れた村の近くにホワイトオルター号を着陸させた。
「はい、作戦は理解してますから、お言いつけの通りに…ですが、トール様…」
 メリルが何やら言い難そうにしている。
 しきりに他の嫁達とアイコンタクトをとっているが…何だ?
「皆で話し合ったのですが、やはり私達も賊にこの手で罰を与えたいのです! 救護者の保護が大事なのは十分に承知しております。ですが、私達は…辱められた彼女達の苦しみを…恨みを…。賊に天誅を与える力が有ります。彼女達の、苦しみを悲しみを痛みを、彼女達の味わった屈辱を、この手で与えてやりたいのです!」
 そういって、他の嫁達へと視線を巡らせるメリル。
 ミルシェもミレーラもマチルダも、当然だがイネスも、大きく頷く。
「マスター。奥様方が行かれるのでしたら、もちろん私達も同行いたします」
「「「同行いたします」」」
 ナディアとアーデ、アーム、アーフェンも、こんな事を言い出した。
 どうすべ? 確かに人手が多いにこしたことは無いが…
「う~~ん…その気持ちは分かるんだけど…どうする、ユズキ?」
 一応、ユズキにも確認してみたのだが、答えたのはユズカだった。
「一緒に連れて行ってあげたらいいじゃん。間違っても奥様達が怪我なんてする訳ないし、妖精さん達ならなおの事。船の守りならブレちゃんを置いておけば大丈夫じゃない? コルネ様もユリア様も居るんだし、大奥様が指揮をとるんでしょ?  そもそもシールドで、許可の無い人は近づけないんだし。ユズキもそう思うでしょ~?」
「あ、うん…そうだね」
 ユズキよ…俺と同じく、お前も尻に敷かれてるんだな…
「そっか。うん、分かった。それじゃ一緒に行こう。悪いけど、母さんと、コルネちゃんユリアちゃん、サラとリリアさん、あとブレンダーは留守番だ」
 しょうがないわね、とでも言いたげな顔で母さんが、
「はいはい。こうなる事は予想してましたよ。でも、メリルちゃん達、良く聞きなさい」
 急に真顔になった母さん…迫力あるな…なんか怖い。
 さすが、亀の甲より年の…何とやらだな。
 メリル達だけでなく、なぜかサラ達までも緊張してる。
 あ、ブレンダーの尻尾が股の間に…。
「悪党は全員残らず処分なさい。情けも容赦も不要です。クイーンちゃんの子供達が、悪党だと判断したら、迷わず殺しなさい。それと、ここからは全員変身していく事。いいわね?」
『いえす、まむ!』
 全員、直立不動で答えました。
 だって怖いんだもん。
「あと、トールちゃん。この先すべてにけりをつけるまで、まだまだ時間がかかると思うけど、全ての事が終わったらお話があります」
 えっ?
「さっき、トールちゃんが考えた事を、きっちりかっきり話してもらいますからね?」
 ニッコリ笑った母さんの目だけは笑ってなかった。
 俺、これが終わったら死ぬんだ…って、おかしいな、フラグにならんじゃないか!

「さ、それじゃ時間も無い事だし、さっさと始めなさい」
 何故か場を仕切り始めた母さんの号令で、俺達は一斉に変身した。
 ナディア達は、結界を展開しつつ、姿を光学迷彩に隠して、俺達の最後列に並んだ様だ。
 俺の背中にはクイーンが貼り付き、ユズユズはペアで、嫁達はイネスを先頭に5人で、目の前の村へと歩み始めた。
 村を取り囲むように造られた壁は、所々に穴が開いていたり破損したりしていたが、まだいくらか役目を果たしている様だった。
 その壁に設けられた村の入り口の門は、固く閉ざされてはいるが、誰かが守っているわけでも無い…つまり、無人だ。

 だが、何でだろう…変身したこの装備であれば、鼻に届くはずも無い嫌な臭いがする。
 毒であろうと不快な臭いだろうと、完璧にシャットアウトしてくれるはずのに、この鼻につく嫌な臭いは?
 ああ、そうだ…子供の頃に飼ってたザリガニが死んだ時の、あの嫌な臭いだ。
 何て言ったっけ? ああ、そうだプルースト効果だったか?
 匂いと記憶にはむっせつな関係があるとか何とか…匂いが記憶を呼び覚ますだったっ気か?
 いや、本当は臭っては居ないはずだ。
 この装備であれば、完璧にシャットアウトしてるはずだから。
 という事は…この門の向こうで行われた惨状を想像したから、この臭いを思い出した?
 どっちでもいい。
 俺が、俺達がやる事は決まっている。
 帝国の威を借り女子供を自らの欲望赴くまま喰う様な奴に慈悲は無い!
「皆、準備は良いな? この門の向こうでは、無辜の民が俺達の助けを待っている。下衆共がのうのうと生きている。許せるか? いいや、許せるはずない! これより、各々の装備、完全開放! ナディア達も、全ての能力の使用を許可する! 我等これより修羅となる! 悪即斬! 行くぞーー!」
『「「「「「「「 おぉーーー!」」」」」」」』
 俺は、エネルギーブレードで、目の前の門を真っ二つにした。 
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