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もふれるの?
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防壁から10km程飛んだ所で、ホワイト・オルター号は静かに着陸した。
もちろん全ての明かりは消したままだ。
どこで誰が見てるか分からないから、当然と言えば当然の事。
いや、まあ…こんなでっかいのが降下して来たら、近くにいれば普通は見えるだろうから、あんま意味が無いとも言えるけど。
とにかく地に降りた飛行船から、俺達家族が地上へと降り立った。
「では、時間も無い事だし、早速始めます」
モフリーナから託されたダンジョンの欠片を、そっと地面に置いて、数歩下がる。
そして、通信の呪法具を取り出して、相手を呼び出す。
『モフリーナ? 例のブツは、設置完了だ。早速始めてくれ』
『了解です』
通話を切った途端、ダンジョンの欠片から、まるで木の根の様な白い物が出て来たかと思たtら、その先が地面に向かってどんどん吸い込まれる様に入って行った。
その様子を見ていた父さんは、
「なあ、トール…アレ、何か気持ち悪いぞ?」
うん、俺もちょっとそう思ったよ。
白い根っこの増殖は止まる所を知らず、どんどんその根を増やしては伸ばし、この大地を浸食していく。
欠片を置いてから10分ほどが過ぎた頃、根っこの動きが止まった。
ん? これで終わりかな? それじゃ、次は…
思った通り、目の前に突如として、空気から滲みだす様にモフリーナが現れた。
「お待たせいたしました。これでここ一帯は、私の支配下になりました」
いつものクールビューティーなビジネスウーマンの様に、ピシッと着こなしたスーツ姿のモフリーナが、丁寧に頭を下げた。
「いや、全然待ってないから大丈夫。それで、もうこの辺はダンジョンになったの?」
「はい。すでにダンジョンです。もっとも、地表からこの指2本分程度までですが」
つまりは、地表をダンジョン化したという事だ。
実際の所、このダンジョンはモンスターも居なければ、トラップも宝箱も無い、ただのダンジョン領域。
エネルギーの回収もしない、本当にただ領域を広げる為だけのもの。
だけど、今回はそれでいい。
「って事は、これで例の作戦は実行できるってわけ?」
「ええ、何時でも実行可能です」
作戦とったって、ごく単純な物だけど…
「出来れば、この領域をこの場所から暗黒教ダークランド皇国全体…えっと、地図で言うと、今はココ。んで、この辺りまで広げて欲しいんだけど…出来る?」
するとモフリーナは、明らかに『そのためのエネルギーをくださいな♡』って顔をしていた。
いいかげん付き合いも長くなって来てるので、言いたい事は十分にわかる。
俺は、モフリーナの目を見つつ、小さく頷くと、
「はい、もちろん出来ます。トールヴァルド様の仰せのままに…」
腰から深々とモフリーナは俺に頭を下げた。
ま、必要な分以上のエネルギーを供給させていただきますよ…ええ、必要な分だけ、持っておいき。
何処からともなく取り出した水晶の玉の様な物を、モフリーナは俺に手渡して来た。
良いでしょう。いつもの如くエネルギー充填マンになりましょう!
我が家のメンバーの見守る中、俺が手にした時は、ただの水晶にしか見えなかった物が、徐々に発光していく様を見て、小さく『おおー!』と声が上がった。
光る玉…中に星があったら、ドラゴ〇ボールだな。
あまり光り輝くと目立つので、そこそこ光り出したところで、モフリーナにパス。
それを手にした彼女は、右手に玉を、左手はまっすぐ前に伸ばして目を閉じた。
すると、周囲は劇的に…変化などするはずも無く、何一つ変わらぬ風景に、ちょっと拍子抜け。
っていうか、ちゃんとダンジョン化出来たの? あ、出来たのね…それはご苦労様。
「付近に他のダンジョンは?」
「御座います。ですが、まだ出来立てで1層しかない様です。いらぬ諍いを避けるために、そのダンジョン周辺に関しましては、私のダンジョン領域とはしておりません」
良い判断だ。縄張り争いは不味い。
それに、出来たてのダンジョンならば、モフリーナがパワーで押し切ってダンジョン領域化して支配できるかもしれないけど、どんな問題が起こるかわからないから、避けて正解だな。
「実はですね…そのダンジョンのマスターより、トールヴァルド様へ面会申請がきております」
何やらもじもじとしていたモフリーナが、いきなり変な事を言い出した。
「面会…申請?」
「はい、面会申請です。先ほど伸ばした私のダンジョン領域に接触して来たのは、第6番ダンジョンのマスターである、モフレンダです」
え? もふれるの? もふれるん…だ? あ、違った、モフレンダか。
ってか、6番って古くない? 新しいダンジョンとか聞いたんだけど…あれ?
しっかし、ダンジョンのマスターって、名前が微妙すぎだなぁ…でも…
「わかった。モフレンダには、きっと近いうちに会いに行くと返答しておいて」
「了解いたしました」
もしかして、ここでダンジョンでっかくしたら…産業になる…?
これから戦が起こるであろう、この地。
多くの人々が蛮行成す輩に蹂躙され苦しんだ、この地。
もしかしたら、不幸に見舞われた人々が居るこの地方の、希望の光になるかもしれない。
いんや、俺が必ずしてみせよう!
もちろん全ての明かりは消したままだ。
どこで誰が見てるか分からないから、当然と言えば当然の事。
いや、まあ…こんなでっかいのが降下して来たら、近くにいれば普通は見えるだろうから、あんま意味が無いとも言えるけど。
とにかく地に降りた飛行船から、俺達家族が地上へと降り立った。
「では、時間も無い事だし、早速始めます」
モフリーナから託されたダンジョンの欠片を、そっと地面に置いて、数歩下がる。
そして、通信の呪法具を取り出して、相手を呼び出す。
『モフリーナ? 例のブツは、設置完了だ。早速始めてくれ』
『了解です』
通話を切った途端、ダンジョンの欠片から、まるで木の根の様な白い物が出て来たかと思たtら、その先が地面に向かってどんどん吸い込まれる様に入って行った。
その様子を見ていた父さんは、
「なあ、トール…アレ、何か気持ち悪いぞ?」
うん、俺もちょっとそう思ったよ。
白い根っこの増殖は止まる所を知らず、どんどんその根を増やしては伸ばし、この大地を浸食していく。
欠片を置いてから10分ほどが過ぎた頃、根っこの動きが止まった。
ん? これで終わりかな? それじゃ、次は…
思った通り、目の前に突如として、空気から滲みだす様にモフリーナが現れた。
「お待たせいたしました。これでここ一帯は、私の支配下になりました」
いつものクールビューティーなビジネスウーマンの様に、ピシッと着こなしたスーツ姿のモフリーナが、丁寧に頭を下げた。
「いや、全然待ってないから大丈夫。それで、もうこの辺はダンジョンになったの?」
「はい。すでにダンジョンです。もっとも、地表からこの指2本分程度までですが」
つまりは、地表をダンジョン化したという事だ。
実際の所、このダンジョンはモンスターも居なければ、トラップも宝箱も無い、ただのダンジョン領域。
エネルギーの回収もしない、本当にただ領域を広げる為だけのもの。
だけど、今回はそれでいい。
「って事は、これで例の作戦は実行できるってわけ?」
「ええ、何時でも実行可能です」
作戦とったって、ごく単純な物だけど…
「出来れば、この領域をこの場所から暗黒教ダークランド皇国全体…えっと、地図で言うと、今はココ。んで、この辺りまで広げて欲しいんだけど…出来る?」
するとモフリーナは、明らかに『そのためのエネルギーをくださいな♡』って顔をしていた。
いいかげん付き合いも長くなって来てるので、言いたい事は十分にわかる。
俺は、モフリーナの目を見つつ、小さく頷くと、
「はい、もちろん出来ます。トールヴァルド様の仰せのままに…」
腰から深々とモフリーナは俺に頭を下げた。
ま、必要な分以上のエネルギーを供給させていただきますよ…ええ、必要な分だけ、持っておいき。
何処からともなく取り出した水晶の玉の様な物を、モフリーナは俺に手渡して来た。
良いでしょう。いつもの如くエネルギー充填マンになりましょう!
我が家のメンバーの見守る中、俺が手にした時は、ただの水晶にしか見えなかった物が、徐々に発光していく様を見て、小さく『おおー!』と声が上がった。
光る玉…中に星があったら、ドラゴ〇ボールだな。
あまり光り輝くと目立つので、そこそこ光り出したところで、モフリーナにパス。
それを手にした彼女は、右手に玉を、左手はまっすぐ前に伸ばして目を閉じた。
すると、周囲は劇的に…変化などするはずも無く、何一つ変わらぬ風景に、ちょっと拍子抜け。
っていうか、ちゃんとダンジョン化出来たの? あ、出来たのね…それはご苦労様。
「付近に他のダンジョンは?」
「御座います。ですが、まだ出来立てで1層しかない様です。いらぬ諍いを避けるために、そのダンジョン周辺に関しましては、私のダンジョン領域とはしておりません」
良い判断だ。縄張り争いは不味い。
それに、出来たてのダンジョンならば、モフリーナがパワーで押し切ってダンジョン領域化して支配できるかもしれないけど、どんな問題が起こるかわからないから、避けて正解だな。
「実はですね…そのダンジョンのマスターより、トールヴァルド様へ面会申請がきております」
何やらもじもじとしていたモフリーナが、いきなり変な事を言い出した。
「面会…申請?」
「はい、面会申請です。先ほど伸ばした私のダンジョン領域に接触して来たのは、第6番ダンジョンのマスターである、モフレンダです」
え? もふれるの? もふれるん…だ? あ、違った、モフレンダか。
ってか、6番って古くない? 新しいダンジョンとか聞いたんだけど…あれ?
しっかし、ダンジョンのマスターって、名前が微妙すぎだなぁ…でも…
「わかった。モフレンダには、きっと近いうちに会いに行くと返答しておいて」
「了解いたしました」
もしかして、ここでダンジョンでっかくしたら…産業になる…?
これから戦が起こるであろう、この地。
多くの人々が蛮行成す輩に蹂躙され苦しんだ、この地。
もしかしたら、不幸に見舞われた人々が居るこの地方の、希望の光になるかもしれない。
いんや、俺が必ずしてみせよう!
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