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妨害工作

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 まずは、ユズユズの迎えと完成した御守りの呪法具を取りに、サラとリリアさんにホワイト・オルター号でアルテアン領まで超速ダッシュで往復してもらう事にした。
 全速で行って貰うから、積み込みとかの時間を考慮しても、4日ほどみておけばOKだろう。

 その間、我が家の面々には、出来たばかりの防壁内の部屋を1室使用する事にさせて頂く。
 まだ土色の壁と天井の、何も無い武骨で無機質な部屋だが、雨風をしのげる部屋ではある。
 まあ、トイレは共同だし、風呂は無いけど、仕方ない。
 もちろん、ベッドなんて無いから、全員で雑魚寝だが、そんな事で家族は文句など言わない。
 
 さて、それでは早速だが、サラ達が帰って来るまでの時間を稼ごう。
 全員が揃ってる前で鬼畜な事を指示するのは嫌だが、そんな事も言ってられないので、ナディアとクイーンを呼んで指示を出す。
「まず、妖精達はそのまま光学迷彩を続行。蜂達は周囲を警戒しつつ、情報収集」
 ここまでは今まで通り。
「それで一緒に付いている精霊さん達に、伝えて欲しい。物資輸送と進軍ルート上の道を水浸しのドロドロのデコボコに。物資は持ったい無いけど火を点けて。徹底的にあいつ等の邪魔をするように!」
 俺の指示は、ナディアとクイーンを通じて、現地の妖精達や蜂達に。
 そこから、やたらと頭の良い精霊さんにも当然伝わる。
 きっと、あの最強タッグならば、俺の想定以上の結果を出してくれるだろう。
 
 この敵軍の進軍速度遅延作戦は、陛下と首長達にも伝えた。
 これによって、我軍もこの場に兵を集結させるための時間的余裕が出来た。
 俺の運輸商会が、これまた全力で兵員と物資輸送をしているので、遠く離れた王国からも続々と兵達がと多くの物資が決戦の地へと集結している。
 敵軍の総数からすれば微々たるものかも知れないが、俺が今まで見た中でも驚くほどの数の兵が集まっていた。
 いや、あの神国との戦争の時の敵軍と味方の兵の合計もこれぐらいだったかもしれないが、それが一同に会すると迫力だ。
 とは言っても、そのほとんどが4か所に設けられた防壁内にある部屋に収容出来るはずだ。
 物資も次々と防壁に運び込まれている。

 ついでだが、防壁の内側に造った(精霊さんに頑張ってもらいました)休憩所は、左右の山脈の裾野に穴を掘って地下都市風にしてみた。
 一見すると、埼玉県比企郡吉見町にある吉見百穴という横穴古墳群にも見える。
 ただ、こちらはしっかりと規格統一された形に整えられており、1室が学校の教室ぐらいの大きさになっている。
 トイレだって完備してるから、女性兵士だって安心だろう。
 尤も、女神ネスと太陽神への信心篤いグーダイド王国とアーテリオス神国の兵達だから、悪さをするとも思えないが。
 もちろん、休憩所の近くには、地下水脈が枯れるんじゃないかというぐらい、井戸が掘られているので、飲み水だってばっちりだ。
 きっと天幕での野営でも文句は言わないだろうが、それでもしっかりとした部屋で休んで英気を養ってほしいものだ。

 そんな事を、ぼう~っと考えながら、次から次へとやって来る我が運輸商会自慢の大型蒸気バスやトラックに近づき、運転手達に労いの言葉を掛けていく。
 皆、やる気に満ちていて、中にはたった数日で寝ずに2往復したと豪語する者も居たが、それは危ないので止めてくれと、お願いするはめになったりもした。
 士気が高いのは良い事なんだが、無理は駄目だ。
 ちなみに彼等が運ぶのは、グーダイド王国からの兵や物資。
 神国側は、国中の馬車を集めてピストン輸送しているらしい。
 近いからか神国側の兵と物資が多いが、特に両国間でもめたり喧嘩もしていない。

 さて、色々と裏で皆に小細工をお願いしたので、俺の時間がすっぽりと空いた。
 この時間を使って、両国の兵達から、ネスと太陽神だけでなく、月神の像を造って欲しいとの要望にが入った。
 どうやら例の大王戦をした盆地からの移住者からも、この戦争に参加している者が居たらしいので、月神もだと。
 神に祈りを奉げたいからと言われたら、俺がでっちあげた神様だし、ここで断る事なんて出来ないから、防壁の神国側にレリーフの様に巨大な3柱の御姿を彫り上げた。
 いや、彫ったのは、風の精霊さんなんだけど…。
 すると、兵達はレリーフに向かって祈りを奉げ始めた。
 なんか、ユダヤ教の聖地の嘆きの壁みたいに、引っ切り無しに壁に向かって祈りを奉げる人が来るけど…もしかして、あのレリーフの前に賽銭箱でも置いたら、儲かるんじゃね? と思った俺は悪くないはずだ。

 敵の進軍妨害部隊に任命した妖精さんと蜂達と精霊さん達は、順調に物資を燃やし、物資輸送と進軍ルートを使用できない様に荒らしていると、ナディアから報告が入った。
 ついでに、敵が進軍して来たルート上で好き勝手に暴れていた奴らに対して、蜂の毒針をお見舞いしているという。
 精霊さんは、何考えてるのか分からないけど、妖精さんと蜂達にとって、あれらの行為は見逃せない悪だったらしい。
 最終的な断罪は俺達の仕事と思っているのか本気ではない様だが、とにかく悪行を見逃せない妖精さんと蜂達は、奴らの行動をも阻止するために動いてくれている。
 いや、本当に頼りになるね、妖精さんと蜂達は。
 もちろん、それに協力している精霊さん達も、予想以上の成果を着々と上げてくれている。
 今度、何か御礼しなきゃなあ。
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