システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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朝飯前でしょう!

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「っと、いう事の様です」
 妖精さんからナディアへとなされた報告を、本陣の天幕にて連合軍の重鎮達へと、トールはありのまま伝えた。

「馬鹿な奴らだな…」
 軍務大臣として、今回の戦の旗頭としてこの報告を受けた、グーダイド王国第三王子ウェスリー・ラ・グーダイドは呆れた様に声を漏らした。
「いや、一体何を考えているのか…何故、我々があ奴らを受け入れるというのだ…」
 アーテリオス神国の代表にして、元聖騎士のトップであったべダム首長も、呆れを隠せない様だった。
「凌辱も略奪も、皇帝とかが認めているってんだな、トールよ?」
 トールの父であり、昔の戦の英雄でもある、ヴァルナル・デ・アルテアンは、湧き上がる怒りを…ともすれば爆発しそうな激情を押さえ乍ら、トールヴァルドに問うた。
「…そうらしいよ、父さん…いや、侯爵様」
 すでに幾らか表情を取り戻していたトールではあったが、また冷たく固く、まるで能面の様な表情になった。
「トールヴァルド卿…」
 そんなトールを心配したウェスリー軍務大臣であったが、
「このような戦に卿を狩りだしてしまった事、誠に申し訳ないと思う」
 そういって頭を下げた。
「頭をお上げ下さい、大臣…」
 少しも焦った様子の無いトールに、続けた言葉は、
「この防壁を完成させた後、卿には好きに戦ってもらいたい。きっと女神様達もお怒りだろう。だから、トールヴァルド・デ・アルテアン伯爵…いや、ネス様の使徒殿。あなたの思うがまま、戦ってくれまいか? どの様な結果になっても構わぬ。その責めは、全て私が受けよう」
 そう、力強く語りかけた。
「トールヴァルド・デ・アルテアン殿。貴殿は、我が国の名誉司教位である。我が国の司教たる貴殿が最前線で戦うというのであれば、国の代表としてこのべダムがその責を負おうぞ。好きに戦われるが良い!」
 べダム首長も、ウェスリー軍務大臣に同調する。
「そして、ヴァルナル・デ・アルテアン名誉聖騎士よ。其方には、我が国の名誉司教を守って欲しい」
 そういえば、俺と父さんって、史上初めて2カ国より爵位を受けたんだっけ。
「簡単に言えばな、好き勝手に暴れ回っていいって事だよ。無論、卿達の家族全員でな」
 良い笑顔でウェスリー軍務大臣がそう言うと、べダム首長もニヤリと笑った。

 俺は、父さんと顔を見合わせた後、
「了解いたしました。私は…いえ、アルテアン家の総力を挙げて、敵をぶっ飛ばしてきます!」
 にっこりと笑って宣言した。

「それで、この防壁はいつごろ完成するのだね?」
 建築の進行状況が気になるのか、軍務大臣が訊ねると、
「本日中には完成すると思います」
 トールは、実にあっけらかんとした顔で答える。
「本日…?」
 まあ、驚くのも無理はない。
 巨大な城壁を建築するには、普通は国家主導で数十年規模での大工事になる。
 それが数日で完成するとなれば、色々と軍を預かる者としては考えさせられる物があるだろう。
「ええ。後は山沿いに全ての城壁を繋ぐための回廊を造るのと、敵の矢から見方を守る為の屋根と、安全に矢を射かける為の狭間を等間隔に開けるのと、それから内部に階段とトイレや休憩用の小部屋と…」
 次から次へと矢継ぎ早にトールから未着手の工事内容を聞かされた軍務大臣は、
「いや、説明はもういい。それらが本日中に完成するというのか?」
「ええ、そうですが?」
 改めて問われたトールは、やはり当然と言った顔で答えた。
「魔法とは、本当に恐ろしい物ですなぁ…べダム首長殿…」
 呆れを通り越して、若干恐怖の色を顔に浮かべたウェスリー軍務大臣は、べダム首長に同意を求める様に言葉を掛けた。
「ええ…本当に…。我が国でも、これほどの魔法を行使出来る者は…いえ、この世界を見回しても居ないでしょう」
 やはり、困惑と呆れと恐怖の混ざった様な表情と声で、感想を述べた。
「トールは、魔法の天才ですからな。これぐらい、朝飯前でしょう!」
 何故か、ヴァルナルが胸を張っていたが、別に彼が偉いわけでは無い。
「城壁は、本日中に完成しますので、明日の朝にはこの天幕を引き払って安全な部屋を提供できます。そして、奴らの足止め工作に、明日の朝から動きます」
 少しだけ悪い顔をしたトールが、両国の重鎮と言われる人々を見まわして言う。

「重ねて問いますが、敵への対処は、全て我が家に任せて頂けるのですね?」
 トールの乱暴とも無謀とも言える言に、誰も反対する言葉を発さなかった。
 天幕の中には、大臣や首長、トールやヴァルナル以外にも、何人もの人々がいたのだが、誰もがトールを黙って見つめるだけ。
「無言は肯定ととらせて頂きます。最終的には、彼等をこの世界から去って頂きますので、ご了承ください」
 あまりにも大胆な宣言に、一同がざわついたのも仕方がない事だった。

『ちょっと、大河さん! ここのとこ、いやに真面目じゃあ~りませんか!?』
 サラか? たまには良いだろう?
『そう言えば、以前にもこんな事があったような?』
 そうだったか? まあ、それはいいじゃないか。
 ところで、ちょっとサラとリリアさんに確認したい事があるんだが?
『ほえ?』『私にですか?』
 ああ、2人にだ。
 局長は、あのバカ皇帝に、一体何を吹き込んだんだ?
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