システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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その頃、あの場所では…

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 トールが精霊建設さんに、GO! を出した瞬間、目の前の地面がもの凄い音と振動を伴って、ゆっくりと立ち上がっていった。
「と、トールヴァルド卿! 敵襲なのか!?」
 べダム首長がアワアワしながら、トールへと問うたが、
「いえ、違います。防壁を造っているだけです。どうか、ご安心ください」
 にっこりと笑って、そう応えた。 

 精霊建設の各属性精霊さんの親分は、地図と設計図の上に陣取り、次々と指示を出していた。
 トールが地図に引いた、大雑把な地図上の線は、防壁の位置を表している。
 そしてこれまたいい加減な設計図は、精霊さんの親分たちの類稀なセンスでもって洗練され、作業をしている精霊さんへと詳細が伝えられる。
 作業員さん達は、その詳細な建築内容に合わせて、ガンガン建築を進めていた。
 具体的には、建築予定地点の地面を土の精霊さんが30m近く隆起させる。
 そして、水と風の精霊さんが、敵が防壁をよじ登れない様に、上に行くほど緩やかに突き出す様な逆テーパーラインを描く様に削り取り、強化のために火の精霊さんがガンガン焼しめる。
 幅6mにもなる防壁の内部は、2mほどのトンネルや階段が造られ、防壁の上部にも回廊を設ける為に、精霊建設さんが休憩もせずに働き続ける。
 最終防衛ラインとして、一番初めに建築されている防壁を点検しに行った俺は、エネルギー切れになってしまった精霊さんを数名(?)見かけたので、そうなる前にエネルギーを吸いに来るように、親分から伝えてもらった。
 今回だけは、休憩をのんびり取ってる暇はない。
 何と批判されようとも、昼夜問わずぶっ通しの作業になるのだから、エネルギーだけはしっかりと取って貰いたいものだ。
 そうして第一の防壁が完成したら、すぐさま第二の防壁へと精霊さん達が飛んで行く。
 実に数時間で巨大な防壁のベースが完成したのだ。
 中は武骨な造りだが、戦争の為なので今は放置。
 後で何かに利用するつもりなら、その時職人さんにでも施してもらえばいいだけの事だ。
 あ、精霊さん精霊さん! トイレだけは造っておいてね! えっと…各防壁に50m毎に5個ずつぐらいお願い。
 扉はこっちで考えるから、よろしくおねしゃっす!。
 
 こうして、あっという間に出来上がった巨大な防壁を目にし、驚愕した全ての人を置き去りにして、防壁造りは着々と進んでいったのであった。


 一方、偵察部隊を任された蜂達と妖精達、そしてトールの依頼に応えた精霊さんは、一路敵の軍勢へと向かっていた。
 左右を山脈に挟まれた土地を飛び、隘路を飛び、岩と砂と土だらけの荒野を飛び、そして敵の先遣隊を彼等は見つけた。
 蜂数匹と妖精1人、各属性の精霊が各1人ずつ(?)がチームを作り、先遣隊に続く本隊や輜重部隊を手分けして情報収集にあたった。
 無論その情報は、余す事なくリアルタイムでクイーンやナディアに伝えられ、トールへと報告された。

 各チームが収集した情報によれば、敵は食料などの物資不足から、徒歩で1週間ほどの場所で足止めを食らっていた。
 本隊の兵力は約5万。
 その中心には、一際豪華な天幕があり、姿は見て無いそうだが、そこに暗黒教ダークランド皇国のダース皇帝が居るのだろう。
 本隊以外の兵員は、周辺の獣を狩り、付近の住民から物資を巻き上げるという蛮行を繰り返していた。
 また、一部の兵と輜重部隊は、来た道を物資補給のために取りに戻っているらしい。
 兵達は、皆一様にやせ細り、その顔には疲労の色もかなり濃く表れている。
 予測と事前情報の通り、本隊以外の兵達の殆どは、嫌々従っている様に見えるという。
 さらに広く深く情報を探る為、一部のチームは征服された国へも飛んだ。
 それ等の国では、女性と子供、年寄りしか居らず、皆が暗黒教ダークランド皇国への不平不満を口にしていたという。
 商店は売り物が無く閉鎖となり、畑はあらゆる作物が徴収され、皇国の兵によって女達は慰み者にされていた。
 各国の王族は幽閉されてしまっている為、誰も逆らう事も出来ない有様だった。
 各国を好き勝手に蹂躙している者達は、暗黒教ダークランド皇国の兵だけでは無い。
 虎の威を借る狐の諺通り、皇国を名乗る野盗や盗賊、そして一般の市民までもが、戦う力を持たぬ人々しか居ない国を荒らし回っているという。 

 次々に入って来る胸糞悪い情報は、すぐさまグーダイド王国とアーテリオス神国にも伝えられ、共有される事となった。
 これに憤慨したのは国のトップだけでは無い。
 勿論、情報を知る者には厳重に口止めをしてはいるが、そうは言っても何処からか漏れる物。
 一旦、兵達に漏れてしまえば、その情報が広がるのは、あっという間だ。
 その結果、ダース皇帝と暗黒教ダークランド皇国へと、ヘイトが集中するのは当然だろう。

 情報を一番最初に聞く事となるトールも、普段の明るい性格は鳴りを潜め、その顔からは感情が消え失せた。
 そして、ただ無表情に完成した防壁の上の回廊で、遥か彼方の敵軍の方を睨んでいた。

 ところでダンジョン大陸の礼の問題ある転移者達なのだが、実はまだしぶとく生き残っていた。
 もふりんは、しぶといGの様な転移者達を、出来るだけ穏便な方法でこの世から消えてもらおうと考えていたのだが、さすがにイライラストレスがMAXとなり、ブチ切れていた。
「もう、さいしゅうしゅだんでち! とつげきーー!」
 無邪気で無垢な魔物という意味…いや、単なるシャレで名付けられた、イノセント型モンスターという名のインセクト・タイプのモンスターに、最終指令を出した。
「ぜんいん、しにさらせー! なのです!」
 そう、最終指令…敵性転移者への自爆攻撃。
 
 トールも半分忘れている、遥かこの惑星の裏側で、転移者達は物理的にこの世界から退場するのであった。 
 死因は、ケモ耳幼女のストレスMAXだったという…南無…
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