システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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忘れてないよね?

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「こ、この地図は…一体…」
「伯爵…これは…」
 陛下も先王陛下も、この詳細な地図にびっくりたまげた門左衛門って感じだな。

 なんたってこの地図は、ナディア達と妖精さんとハチ達が、頑張って実測してくれた物をそのまま紙に投射したもの。
 縮尺も、惑星儀の様な惑星全図の様に極に近づくにつれて大きくなったりすることも無く、平面にきれいに描き起こせる。
 地図とはこの大陸を知る上で、そして国家運営にとって、とても大切な物。
 たかが地図の何が大切かと感じる人も多いかもしれないが、税の計算や軍事といった側面において、欠かすことが出来ないのだ。
 この国にしても他国にしても、せいぜい地図と言えば、国の名前と目立つ山河、それに国境が適当な…言ってみれば主観に基づく物しかない。
 日本の戦国時代に有ったような、縮尺もクソも無い勢力図がせいぜい。
 多分、歴史の教科書なんかで見たこともあるかもしれないが、ハチャメチャな地図だ。
 あんな物あったって、あんまり役に立たない。
 そもそも東西南北すら正確にわかって描いているわけじゃないんだから、距離なんて合ってるわけがない。
 現代の地図は、衛星を利用した超精密な物。各国の軍部だって、この地図を利用して戦略を立てるのだ。
 知人から聞いた話では、衛星から地面に落ちてる1円玉も判別できるとか聞いたが、なるほど正確な地図が作れるわけだ。
 いや、それはどうでもいいんだが、とにかくそん地図しかないこの世界に登場した、精密な地図の価値は、計り知れない物という事だ。
 
 さて、そんな地図を見にした感想はというと…
「こんな詳細な地図は初めて見たぞ!」
「いや、本当に正確なんだろうか?」
「我が国は、こんなにも小さいのか?」
「小さいというよりも、横に長いぞ!」
「神国が我が国の倍もあるな…」
「こんな国あったか?」
「この山を越えられれば、この国とは近いんだがなあ…」
「王都はどこだ?」
 などなど、全員が地図に集って喧々諤々、わいのわいのと賑やかにおしゃべりをしております。

「この地図は買えるのか?」
「伯爵は、一体どうやってこの地図を手に入れたんだ?」
 おっと、これはお答えせねばなりませんな。
「この地図は、女神ネス様より賜った神聖なるものです。もちろん、距離や高低差などは正確に描かれております。このグネグネした線は、等高線と言いまして、え~今回は海面を基準としまして、同じ高さを線で結んだものです。つまり、線と線の間隔が密になれば険しく、疎らになれば緩やかな傾斜という事になります」

 等高線なんて、距離を測るのに縄に一定間隔で結び目をつけてる世界では、完全にオーバーテクノロジーでしか描くことが出来ない物だろう。
 三角測量とか知るわけもないし、そもそも水準点を決める事が出来るはずも無いんだから、まあ当然っちゃ~当然だけどな。
 いや、そもそもそんな言葉や定義すら新発明かも知れないが。

「そしてこの地図ですが、お売りすることは出来ません」
「そ、そうなのか…」
 めっちゃ第三王子様が残念そうにしているが、
「いえ、お売り出来ないというか、無料でお渡しします」
『えっ!?』
 俺の「あげちゃうよ」発言で、王族の方達は一斉に驚きの声をあげた。
 いや、一応だけどネスから賜ったって言ったじゃん。それで商売なんてしたら、誰もネスを敬わなくなるだろ? それどころか、ネスの威を借るトール君が濡れ手に粟って言われちゃうだろ?
 だから、当然ながら無料です。
「地図は無料で皆様にお譲りいたします。ですが、これはあくまでもご内密に。尚、同じものは神国にもお渡しします」
 まあ、唯一の友好国だし、ネスや太陽神の熱心な信仰国だからな。
「ううむ…それは仕方ないな」
 ちょっと苦い顔をしていけど、国王陛下ってば、実は納得してないだろ?
「もちろん、軍事的にも非常に重要な物となりますので、取り扱いに関しましては、神国にも重々言い含めますので、ご安心ください」
 俺の言葉に、渋々だが了承した様に頷く一同。

 いや、確かにこの地図は国指定の一級機密なんだろうけど、独占しちゃ駄目!
 せめて同盟国というか友好国というか、一緒に戦う国にはあげなさいって。
 そりゃ、地図が珍しい物だって事も分かるし、重要だって事も分かってるよ。皆さんが危惧されてる事だって、ちゃんと分ってますとも。

 でもね…そもそもこの会議というか、俺達が王城まで来た目的の入り口にも辿りついてないんだからね?
 俺がこの地図を出した本当の目的は、この国に迫りくる脅威に対しての対策と説明だって事、みんな忘れてないよね?
 大丈夫だよね?
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