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次代のラスボス
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瞬時にこの食堂は、メリルが支配した。
実はメリルは美しく優しいだけでなく、頭脳明晰で思慮深く…そして敵対者には冷酷にして加虐な性格である事を知っている我が家の面々は、ただ口を噤んで事の成り行きを見守る事にした。
あの我が家のラスボスである母さんであってもだ。
「酷い言い種だな、メリル。もっと、こう…お爺ちゃんとの感動の再会とか…」
スベルド先王陛下は、怒っているのか焦っているのか寂しいのか良く分からない、ない交ぜになった表情をしていた。
「あると思います? おじいさま」
俺でも怖くてちびりそうな、冷たく低い声でメリルが応える。
「…いや…あったら良いなあ…っと…」
先王陛下、撃沈。
「それで、お父様。何で皆様がこちらに?」
皇王陛下へ向き直ったメリルだが、その視線はまるで氷柱。明らかに目が笑ってないどころか、極寒の北海道みたいだ。
「いや、あの…メリルよ。皆が顔をみた…いや、此度の戦の要となるアルテアン家と、是非に顔合わせをしたいとだな…」
「それなら、会議の席でもよろしいですわよね?」
最後まで陛下に言わせない、というか話をぶった切るメリルさん。
「いや、それはそうなんじゃが…その…ゆっくり話しも出来んじゃないか、会議だと…」
「戦の対策の為の会議なんですから、当たり前じゃないですか。そもそも戦に出ない人達と、何で顔合わせをする必要が?」
正論だけど、正論だけども! でも、もっと言葉をオブラートに包んで揚げても良いんじゃないでしょうか?
「それだと面白…いや、せっかく親戚となったんだから、つもる話しもあろうかと…」
「ほう、親戚だからと。この戦目前でクソ忙しい時に? 折角、我が旦那様が最前線で我が国と神国による連携の為に、あれやこれやと忙しい日々の時間をやりくりして、あらゆる手段を尽くして練り上げた案を持ってきたというのに、親戚だから顔合わせしたいと? このクソ忙しい時に。へ~、随分余裕があって宜しいですわね、皆さん」
次第にヒートアップするメリルが目を陛下以外の人へと向けると、あからさまに顔を背ける人が…
おい、誰か止めてくれよ! こうなったメリルを止めるのは危険…いや、困難…ああ、もう! 俺には絶対に無理だから!
「お母さま達、お兄さま達、お姉さま達、このクソ親父を誰も止めなかったのですか!?」
いよいよ頭に血が上ったメリルが、叫ぶように身内を糾弾し始めた。
もちろん対象となったお妃様達や兄姉達は、小さくなって顔を背ける。
「そもそも昼食ですって? すぐに会議が始められる様にと、すでに全員が軽く食べてきました! 自分達の都合で私達を巻き込んでどうするのです! 相手方の都合ぐらい考えなさい! そういう身勝手なのがこの国のトップにいるとは、嘆かわしい!」
これは、もう命を賭けてでも止めるべきだな…国王陛下に対してというよりも、国のあり方にまで言及しそうだ。
「あ~メリルさんや…ちょっといいかな?」
俺へと向けた視線も、やっぱ冷たい!
「何ですか、あ・な・た? 私は今、このアホに説教している最中なのですけれども?」
アホって、マジ酷いな! 流石はラスボス母さんの後を継ぐ、次代のラスボス。
あ、その目はヤメテ! 変な世界への扉が、半分ぐらい開いちゃってるから。
「あ、うん。それは分かるんだけど、その時間ももったいないんで、話を進めたいなあって…。それに、そろそろいつもの美しいメリルの笑顔に戻って欲しくて…」
ちょっと、俺の台詞ってクサかったかな? いやいや、そんな事はなかった様だ。
今までの、狂気に染まった雪女の様な、体だけでなく心の芯まで凍らせる様な凍てつく冷たかったメリルの視線は、ようやく春の雪解けを迎えた様だ。
「そう、ですわね…。ごめんなさい、あなた。時間を無駄にしてしまいましたわね」
いつもの、お馬鹿な…そう、俺をベッドに引きずり込む時のメリルの顔だ…ほっ。
「いや、分かってくれればいいんだ」
「ええ。ですが…今、変な事を考えたトール様には、あとでお仕置きが必要ですね」
薔薇の蕾が綻ぶ様に柔らかな微笑みを湛えた笑顔で、奥様が恐ろしい事を言った。
思わずミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネスへと視線を向けた俺だが…全員、同じ様な微笑みを湛えた顔で、俺を見ながら大きく頷いていた。
「トールヴァルド卿…お主…勇者じゃな…」
何故か、離れた所に座っているはずの、陛下の驚愕した様な呟きが耳に入った。
もちろん、そんな事を言った陛下は再びメリルに睨まれ縮こまる事となったが…
あれ? 俺って口に出してないよね?
「トール。全部、顔に出てる」
父さんの一言で、俺はぐるりと辺りを見回した。
何故か席に着いている人だけでなく、傍で控える給仕や護衛の騎士さん達までもが、一斉に頷き同意を示していた。
ポーカーフェイスの大河君と前世では言われていたのに…解せぬ。
実はメリルは美しく優しいだけでなく、頭脳明晰で思慮深く…そして敵対者には冷酷にして加虐な性格である事を知っている我が家の面々は、ただ口を噤んで事の成り行きを見守る事にした。
あの我が家のラスボスである母さんであってもだ。
「酷い言い種だな、メリル。もっと、こう…お爺ちゃんとの感動の再会とか…」
スベルド先王陛下は、怒っているのか焦っているのか寂しいのか良く分からない、ない交ぜになった表情をしていた。
「あると思います? おじいさま」
俺でも怖くてちびりそうな、冷たく低い声でメリルが応える。
「…いや…あったら良いなあ…っと…」
先王陛下、撃沈。
「それで、お父様。何で皆様がこちらに?」
皇王陛下へ向き直ったメリルだが、その視線はまるで氷柱。明らかに目が笑ってないどころか、極寒の北海道みたいだ。
「いや、あの…メリルよ。皆が顔をみた…いや、此度の戦の要となるアルテアン家と、是非に顔合わせをしたいとだな…」
「それなら、会議の席でもよろしいですわよね?」
最後まで陛下に言わせない、というか話をぶった切るメリルさん。
「いや、それはそうなんじゃが…その…ゆっくり話しも出来んじゃないか、会議だと…」
「戦の対策の為の会議なんですから、当たり前じゃないですか。そもそも戦に出ない人達と、何で顔合わせをする必要が?」
正論だけど、正論だけども! でも、もっと言葉をオブラートに包んで揚げても良いんじゃないでしょうか?
「それだと面白…いや、せっかく親戚となったんだから、つもる話しもあろうかと…」
「ほう、親戚だからと。この戦目前でクソ忙しい時に? 折角、我が旦那様が最前線で我が国と神国による連携の為に、あれやこれやと忙しい日々の時間をやりくりして、あらゆる手段を尽くして練り上げた案を持ってきたというのに、親戚だから顔合わせしたいと? このクソ忙しい時に。へ~、随分余裕があって宜しいですわね、皆さん」
次第にヒートアップするメリルが目を陛下以外の人へと向けると、あからさまに顔を背ける人が…
おい、誰か止めてくれよ! こうなったメリルを止めるのは危険…いや、困難…ああ、もう! 俺には絶対に無理だから!
「お母さま達、お兄さま達、お姉さま達、このクソ親父を誰も止めなかったのですか!?」
いよいよ頭に血が上ったメリルが、叫ぶように身内を糾弾し始めた。
もちろん対象となったお妃様達や兄姉達は、小さくなって顔を背ける。
「そもそも昼食ですって? すぐに会議が始められる様にと、すでに全員が軽く食べてきました! 自分達の都合で私達を巻き込んでどうするのです! 相手方の都合ぐらい考えなさい! そういう身勝手なのがこの国のトップにいるとは、嘆かわしい!」
これは、もう命を賭けてでも止めるべきだな…国王陛下に対してというよりも、国のあり方にまで言及しそうだ。
「あ~メリルさんや…ちょっといいかな?」
俺へと向けた視線も、やっぱ冷たい!
「何ですか、あ・な・た? 私は今、このアホに説教している最中なのですけれども?」
アホって、マジ酷いな! 流石はラスボス母さんの後を継ぐ、次代のラスボス。
あ、その目はヤメテ! 変な世界への扉が、半分ぐらい開いちゃってるから。
「あ、うん。それは分かるんだけど、その時間ももったいないんで、話を進めたいなあって…。それに、そろそろいつもの美しいメリルの笑顔に戻って欲しくて…」
ちょっと、俺の台詞ってクサかったかな? いやいや、そんな事はなかった様だ。
今までの、狂気に染まった雪女の様な、体だけでなく心の芯まで凍らせる様な凍てつく冷たかったメリルの視線は、ようやく春の雪解けを迎えた様だ。
「そう、ですわね…。ごめんなさい、あなた。時間を無駄にしてしまいましたわね」
いつもの、お馬鹿な…そう、俺をベッドに引きずり込む時のメリルの顔だ…ほっ。
「いや、分かってくれればいいんだ」
「ええ。ですが…今、変な事を考えたトール様には、あとでお仕置きが必要ですね」
薔薇の蕾が綻ぶ様に柔らかな微笑みを湛えた笑顔で、奥様が恐ろしい事を言った。
思わずミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネスへと視線を向けた俺だが…全員、同じ様な微笑みを湛えた顔で、俺を見ながら大きく頷いていた。
「トールヴァルド卿…お主…勇者じゃな…」
何故か、離れた所に座っているはずの、陛下の驚愕した様な呟きが耳に入った。
もちろん、そんな事を言った陛下は再びメリルに睨まれ縮こまる事となったが…
あれ? 俺って口に出してないよね?
「トール。全部、顔に出てる」
父さんの一言で、俺はぐるりと辺りを見回した。
何故か席に着いている人だけでなく、傍で控える給仕や護衛の騎士さん達までもが、一斉に頷き同意を示していた。
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