システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

文字の大きさ
上 下
527 / 1,466

朝の鍛錬

しおりを挟む
 翌日、いつもの様に朝日が昇る時間に目が覚めたのだが、どうも、こう…頭が重いというか、気だるいというか…
 簡単に着替え、重たい瞼と頭を冷たい水で顔を洗う事でリセットして、これまたいつもの如く裏庭で鍛錬鍛錬。
「イネス、慌てない。剣を振るのは、最初は大きくゆっくりで良いから丁寧に。常に正しく刃を立てる事を意識して確認して」
「はい! ゆっくり大きく…丁寧に…」
 まるでナメクジが這う様な、子供でも余裕で避けられる様なスピードで剣を動かすイネス。
「うん、そうそう。そこから、だんだんと動きを小さしつつ、剣速を上げる事」
「少しずつ、少しずつ…」
 イネスの持つ剣が、だんだん早くなり、風を切る音が少しずつ大きくなっていく。
「コラ! 剣先にばかり集中しない、足元に注意! 足運びは一番大事だ。それだけで動きがガラッと変わるんだぞ!」
「っ! は、はい!」
 いつも同じ場所で鍛錬しているイネスの足元には、何度も何度も繰り返した足さばきの所為で、下草は生えなくなり、地面がむき出しになっている。無論、俺も同じだ。
「そうだ! それでいい!」
「はいっ!」

 すり足ってのを勘違いしている人が多いんだけど、最初はイネスもそうだった。
 ズリズリと足を引きずるのをすり足だと思ってた様で、一から俺が修正したんだ。
 足の裏、親指の根本近くにある拇趾丘を軸に、前進であれば前に軽く重心を置いて足をスライド。後進なら逆という風に、常に姿勢というかバランスを崩さず、体の中に一本の芯が通っていて、それが地面と常に垂直にある様にする事が大事。
 練習で出来ない事が、実戦で出来るはずが無い。
 これが出来る様になって、初めて前傾、超前傾にならざるを得ない様な速度域でも、自らの身体と姿勢をコントロール出来るようになるわけだし、相対する敵のバランスというか、重心も見えて来る。
 別にこれは徒手空拳だけでなく、武器術でも応用は幾らでも出来るのだ。
 だからこそ、ただ力いっぱい飛び込んで力任せに剣を振るなんていう、変なクセが付いたイネスを見て手ほどきをしたんだ。
 まあ、父さんは野生の勘というか野生その物というか、俺が子供の頃に見たスタンピードの時には既に完成されてて驚いたんだけどな。

 まあ、こんな感じで、俺の鍛錬に付き合い続けてきたイネスに細かく指導をしながら、自分の身体の動きが頭の中のイメージとずれていないかチェックしながら、時折全力で型稽古を行う。
 特に体調に問題はないと思うのだが、朝の倦怠感は何だったんだろうか。
 実は5~6年ほど前から、あんな事が度々あるんだが、もしかして俺って病気でも罹ったのかな?
 う~~ん…戦争行く前に、ちょっと魔族のお医者さんに見てもらうとしますかね。
 お薬か魔法で治ればいいけど…

 そろそろ朝食の時間が迫って来た頃合いで、俺とイネスは汗を流して着替えに戻る。
 ちなみに、早朝の鍛錬に出ようとした俺とイネスを見て、父さんも一緒に行きたそうに扉を半分開けて顔を出していたのだが、その襟首をぬっと出てきた嫋やかな白い手が、ガッシと掴んで室内に引きずり込んだのを、俺とイネスは見なかった事にした。
 母さん、それはホラーだよ…怖いから止めてね。
 ちなみに、ここって俺の屋敷だから。
 朝から夫婦生活を頑張らなくてもいいよ…ドワーフメイドさんの洗濯が大変だから、自分達の屋敷でお願いします。

 さて、汗も流しお着換えも済ませ、しっかり朝食を食べた後は恒例のミーティングのお時間です。
 食堂に集まった、いつものメンバー + 両親と妹達と妖精達&ペット。
「では、恒例のミーティングです。この後は、各自荷物を持って裏庭に集合してください。すでに宿屋には、ドワーフメイドさんに行って貰い、騎士さん達に集合を掛けてもらってます」
 俺の言葉を、ふんふんと頷きつつ黙って聞く一同。
「今回は、ナディア達妖精一同とブレンダー達も連れて行きます。屋敷の事は、申し訳ないけどドワーフさん達、お願いします」
 俺が言葉を投げかけると、コクンと頷いてくれるメイドさん達。
「ユズキ、ユズカ。呪法具の仕様書は完成した?」
「はい。昨日、何故か閃きまして、完璧な物が出来上がりました」
 閃きって大事だよね、うんうん。
「了解。それじゃ父さん屋敷にユズキとユズカ降ろすので、街の職人さん達と打ち合わせをして、大至急量産体制に入って欲しい。アルテアン伯爵家の…いや、侯爵家での最優先事項だと言って構わない。現在抱えている全ての仕事を止めてでも、何人投入してでも構わない。モフリーナにも、必要な数だけ魔石は用意させるから、何としても期日までに数を揃える様に。必要経費は俺が用意する」
「はい、わかりました」
「あ、後で出来てる仕様書はチェックするから。え、ここに持って来てるの? うん、ちゃんと見るから」
 ユズキ、準備いいな…どれどれ…っと、それは後回しだった。
「父さんは、騎士さん達が来たら、裏庭に整列させておいて。コルネちゃんとユリアちゃんは、母さんとナディア達と行動を共にする様に」
 父さんは無言で頷き、
「「は~い!」」
 コルネちゃんとユリアちゃんは、元気いっぱいのお返事。
 うんうん、可愛い可愛い。
「2人の事は、母さんに任せなさい」
 母さんが可愛い分けじゃないからね。コルネちゃんとユリアちゃんの事だからね。
「…トールちゃん?」
 あ、いや…母さんは、可愛いというよりも、美しいです…はい。

「よし、連絡事項は以上。では、各自準備してください、解散!」
 俺の号令で、皆が食堂から準備の為に、各々の部屋へと向かっていった。
しおりを挟む
感想 725

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...