システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

文字の大きさ
上 下
452 / 1,466

仮称・火御華さん(26歳)

しおりを挟む
 恐怖の大王の欠片を宿した、仮称・火御華さん(26歳)は、蛇行する河川の畔で小石を拾っていた。
 やがて何か納得したのか小さく頷くと、河川に向かってアンダースローで…投げるを繰り返していた。
 何してんだ?
 投げた石は、水面をピョンピョンと水を切って跳ねるのもあれば、1,2回で跳ねた後、ドボンと水中に沈む石もある。
 跳ねた回数で、もの凄く一喜一憂している様に見えるのだが…
「な、なあ…サラ。あれって何してんだ?」
 横でポカーンと口を開けたままモニターを見ていた間抜け顔なサラに訊ねてみたのだが、
「遊んでる?」
 サラにもその行動の意図が理解できないらしい。
「あくまでも私見ですが、あの仮称・火御華は幼児退行とまでは言いませんが、精神的に子供化している様ですね」
 リリアさんが、そう分析した。
「どうやら恐怖の大王の欠片が、仮称・火御華の意識や思考を乗っ取りやすくするために、精神年齢を退行させているのではないかと思います。子供の思考であれば、誘導や洗脳がしやすくなりますからね」
 な、なるほど。
「という事は、まだ恐怖の大王の欠片は、身体に馴染んでないって事? それなら上手く欠片を取り出したら…普通の人に戻ったりするんじゃね?」
 外科的な処置が必要かも知れないけど…何とか出来ないかな?
「いえ、すでにあの仮称・火御華の身体と一体化してますので、分離は不可能です。仮称・火御華を人として残すのであれば、可能性があるのは…新しい身体に、意識や思考をコピーして移す事ぐらいでしょうか」
 リリアさん、そろそろ仮称取ってあげようよ。ってか、そんな事が出来るの? 
「幾らか記憶や知識が失われる恐れがありますので、完全に同一人物かと言われると微妙ですけれども」
 だったら、他の危険生物も何とか出来るんじゃね? 無駄に人殺しはしたくないし。
「他の転移者には無理です。精神操作が進んでいる火御華だからこそ出来る裏技的な物ですね」
「なるほど、よくわからん。んで、どうやって新しい身体を造るんだ? モフリーナ、出来る?」
 横でじっと話を聞いていたモフリーナに話を振ってみたが、
「出来なくはないのですが、それだとどうしても私の遺伝子情報が混ざってしまいますので、ダンジョンの魔物化します」  
 そ、そうか…なるほど。
「一応、更に確認なんだが、管理局長はあいつの存在を知ってるんだよな?」
「ええ。プロフィールをここに焼き付けたぐらいですから、当然ですね。もうゲロは嫌です」
 自分の頭を指さし、嫌そうな顔であの日の事を思い出しながら、サラが答えた。
「そうだよな…んじゃリリアさん、管理局で火御華のボディーって造れない? ついでに意識っていうか精神のコピーも。サラの時にも出来たんだから、もしかして…」
 淡い期待を込めてリリアさんに向かってそう言ってみると、
「ええ、可能ですよ。というか、簡単です。ただしその為には、火御華を捕縛しなければなりません。あと、完全に恐怖の大王に精神を乗っ取られる前でなければなりませんね」
 実に簡単に答えてくれた。
「あのまま精神年齢が幼児以下まで退行すれば、すぐにでも浸食が始まるかと思います。特に精神的な負担は退行を早める可能性がありますので、くれぐれも注意してください」
 ふむ…対応策と解決方法が見えてきたな。
「って事で、モフリーナよ。仮称が取れた火御華をすぐに確保だ! 出来れば怖がらせない様にして、もしもの場合に備えて、他の転移者とは別に隔離用のセーフティーゾーンも用意してくれ」
 急ぎ、モフリーナに向かい指示を出す。
「了解しました」
「このダンジョン大陸には一度に大量の転移者が来てるんで、この星で一番エネルギーの量的には多いというか濃度が高い可能性がある。きっと恐怖の大王が火御華の意識や身体を乗っ取ったら、すぐにエネルギーが溜まるだろう。そうなったらまた戦いが始まってしまうから、その前にケリをつけるぞ!」
 あとは、
「って事で、火御華の新しいボディーと、精神体…アストラル体? の移植って言うのかな? の作業は、リリアさんに任せる。恐怖の大王の影響を完全に取り除いて、移す事って可能?」
「管理局の超高速演算装置とリンクすれば可能です。お任せください」
 輪廻転生管理局の、クソッたれなミスで起きたシステムバグのせいなんだから、多少は管理局にも協力してもらうぞ!

「ちなみに、大河さんにも火御華の新ボディーを創れますよ?」
 まさか、ガチャ玉で?
「この世界には無い物にする必要があるので、完全なコピーは無理ですけど。すでに火御華はこの世界に存在してますし」
 ガチャ玉での創造の時のルールの中にあったな、そんなの…
「どうします?」
しおりを挟む
感想 725

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...