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ニョキニョキ
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土煙の中から姿を現したのは、土色をした巨大な塔だった。
それは、古代バビロニアの首都バビロンにあったと伝わっている巨大な塔を俺がイメージしてさらに巨大化させた物だ。
この塔は真上から見ると完全な真円形をしているが、実は最下層から最上層までは渦巻き状に少しづつ大きさが違う階層が重なっている。つまり、横からは一見すると段々状に見える様に作られている。
最下層の直径は約1kmあり、最上層では直径700m、そして高さは実に400mという威容を誇る。
そして地上から見る事は出来ないのだが、地下にも50階層もあるのだ。
つまり、全部で100階層で、概算で全高は800mにもなるのだ。
「こ、これがダンジョンなのですか…トール様…」
目の前に現れた塔の圧倒的な存在感に気圧された様に、少し引き攣った顔で俺に声を掛けたメリル。
「そう言えば、子供の頃にダンジョンが出来た時も、すごい音と振動でした…」
まだ村でしかなかった父さんの領地にダンジョンが生れた日を、ミルシェは思い出した様だ。
「大きいです…」
ミレーラは、それ以上の言葉が出ないらしい。
「この高層集合住宅だと何人ぐらい住めるのでしょうか…?」
いやいや、マチルダさんや。俺の領地も父さんの領地も、ここまでの集合住宅は必要ないと思うぞ?
「これなら攻略し甲斐がありますね!」
イネスは安定の脳筋ぶりで、ちょっと安心したよ。
「それで伯爵様。これでダンジョンは完成なんですか?」
おお、ユズキよ良い質問だ。
「うむ、その問いに応えよう。否だ! というか、これはダンジョンではない、ただの迷宮だ」
『迷宮????』
全員の頭に疑問符が浮かぶ。
「えっと、伯爵様。迷宮ってダンジョンなんじゃないんですか?」
お? ヲタク知識満載のユズキでも誤解しちゃってるか。
「あのな、ユズキ。ダンジョンと迷宮は必ずしも一致するとは限らないのだ」
『????』
やっぱ全員理解できてないみたいだな。
「ダンジョンとは元々は地下室や監獄とか地下牢って意味なんだよ。まあ、古城の地下室とかに財宝が眠ってるとか信じて、それを探すトレジャーハントとかの物語が、ダンジョンって名前の由来だな。そのトレジャーハントの物語の中で、想像を膨らませて魔物が宝を守ってるとか、罠が仕掛けられてたとかの設定がどんどん追加されていって、現在のダンジョンの原型が出来上がったってのが正しいんだ」
俺の説明を黙って聞いていた一同だが、余計に疑問符が増えた様だ。
「元は古城の地下とかにあるのがダンジョンと言われてたんだけど、やがて洞窟型とか塔型とか、森林や海中の一定のエリア自体がダンジョンになってたり、それらの複合型とかが、現在のダンジョンなんだよ」
説明をじっと聞いてたミレーラが、
「えっと、はアルテアン領にあるダンジョンは…いきなり塔が出てきましたよね? 昔、あそこにお城とかあったという事ですか?」
「おお、良い質問だ! モフリーナの管理する第9番ダンジョンは、そういった伝承や成り立ちを元にして、神によって生み出された物なのだ。だからいきなり塔の形で出現したんだよ。つまりは、アルテアン領にあるような巨大な塔みたいな形だけがダンジョンってわけじゃ無い…って事だけ分ってればいいかな。きっと、探せば他にも色々なタイプのダンジョンがあると思うよ」
まあ、モフリーナに確認したところ、この世界には塔型しかないらしいのだが…。
「ダンジョンの事をなんとなくは理解できましたが…それではあの塔は何なのですか?」
「さっきも言ったと思うけど、あれは迷宮だよ、メリル。そして塔はあれだけじゃない。ほれ、あっちの窓から見てごらん」
俺が皆のへばりついている窓とは反対側の窓を指さすと、全員の目が一斉に見開かれた。
「ほれ、こっちもこっちも! もっと遠くを見てごらん」
目の前の窓を指さす。目の前の巨大な塔で窓からの景色はいっぱいなのだが、その遠くをよく見ると、
『ああああああ!!!』
全員があっちの窓こっちの窓と、視線を行ったり来たりさせながら叫んだ。
雨後の筍 って言葉を知っているだろうか? 春先に一雨ふると、あちこちからニョキニョキと筍が顔を出す様を言うのだが、まさしく俺達の目の前で、ニョキニョキと巨大な塔が次々に天へと向かって伸びていた。
「これがネス様に願った、この大陸の…この世界に来るものを、この地に留め置くための秘策だ!」
俺の言葉なんて誰の耳にも入ってないだろうが、別に構わない。
この大陸に次々と出現する巨大な塔に見入っている皆は、この後知る事になるのだ。この俺が、とても良い性格であるという事に。
『…大河さんは、良い性格してますよ、本当に』
ん? サラ、何か言ったか?
『いいえ、べっつに~』
そうか? まあ、いいや。
それは、古代バビロニアの首都バビロンにあったと伝わっている巨大な塔を俺がイメージしてさらに巨大化させた物だ。
この塔は真上から見ると完全な真円形をしているが、実は最下層から最上層までは渦巻き状に少しづつ大きさが違う階層が重なっている。つまり、横からは一見すると段々状に見える様に作られている。
最下層の直径は約1kmあり、最上層では直径700m、そして高さは実に400mという威容を誇る。
そして地上から見る事は出来ないのだが、地下にも50階層もあるのだ。
つまり、全部で100階層で、概算で全高は800mにもなるのだ。
「こ、これがダンジョンなのですか…トール様…」
目の前に現れた塔の圧倒的な存在感に気圧された様に、少し引き攣った顔で俺に声を掛けたメリル。
「そう言えば、子供の頃にダンジョンが出来た時も、すごい音と振動でした…」
まだ村でしかなかった父さんの領地にダンジョンが生れた日を、ミルシェは思い出した様だ。
「大きいです…」
ミレーラは、それ以上の言葉が出ないらしい。
「この高層集合住宅だと何人ぐらい住めるのでしょうか…?」
いやいや、マチルダさんや。俺の領地も父さんの領地も、ここまでの集合住宅は必要ないと思うぞ?
「これなら攻略し甲斐がありますね!」
イネスは安定の脳筋ぶりで、ちょっと安心したよ。
「それで伯爵様。これでダンジョンは完成なんですか?」
おお、ユズキよ良い質問だ。
「うむ、その問いに応えよう。否だ! というか、これはダンジョンではない、ただの迷宮だ」
『迷宮????』
全員の頭に疑問符が浮かぶ。
「えっと、伯爵様。迷宮ってダンジョンなんじゃないんですか?」
お? ヲタク知識満載のユズキでも誤解しちゃってるか。
「あのな、ユズキ。ダンジョンと迷宮は必ずしも一致するとは限らないのだ」
『????』
やっぱ全員理解できてないみたいだな。
「ダンジョンとは元々は地下室や監獄とか地下牢って意味なんだよ。まあ、古城の地下室とかに財宝が眠ってるとか信じて、それを探すトレジャーハントとかの物語が、ダンジョンって名前の由来だな。そのトレジャーハントの物語の中で、想像を膨らませて魔物が宝を守ってるとか、罠が仕掛けられてたとかの設定がどんどん追加されていって、現在のダンジョンの原型が出来上がったってのが正しいんだ」
俺の説明を黙って聞いていた一同だが、余計に疑問符が増えた様だ。
「元は古城の地下とかにあるのがダンジョンと言われてたんだけど、やがて洞窟型とか塔型とか、森林や海中の一定のエリア自体がダンジョンになってたり、それらの複合型とかが、現在のダンジョンなんだよ」
説明をじっと聞いてたミレーラが、
「えっと、はアルテアン領にあるダンジョンは…いきなり塔が出てきましたよね? 昔、あそこにお城とかあったという事ですか?」
「おお、良い質問だ! モフリーナの管理する第9番ダンジョンは、そういった伝承や成り立ちを元にして、神によって生み出された物なのだ。だからいきなり塔の形で出現したんだよ。つまりは、アルテアン領にあるような巨大な塔みたいな形だけがダンジョンってわけじゃ無い…って事だけ分ってればいいかな。きっと、探せば他にも色々なタイプのダンジョンがあると思うよ」
まあ、モフリーナに確認したところ、この世界には塔型しかないらしいのだが…。
「ダンジョンの事をなんとなくは理解できましたが…それではあの塔は何なのですか?」
「さっきも言ったと思うけど、あれは迷宮だよ、メリル。そして塔はあれだけじゃない。ほれ、あっちの窓から見てごらん」
俺が皆のへばりついている窓とは反対側の窓を指さすと、全員の目が一斉に見開かれた。
「ほれ、こっちもこっちも! もっと遠くを見てごらん」
目の前の窓を指さす。目の前の巨大な塔で窓からの景色はいっぱいなのだが、その遠くをよく見ると、
『ああああああ!!!』
全員があっちの窓こっちの窓と、視線を行ったり来たりさせながら叫んだ。
雨後の筍 って言葉を知っているだろうか? 春先に一雨ふると、あちこちからニョキニョキと筍が顔を出す様を言うのだが、まさしく俺達の目の前で、ニョキニョキと巨大な塔が次々に天へと向かって伸びていた。
「これがネス様に願った、この大陸の…この世界に来るものを、この地に留め置くための秘策だ!」
俺の言葉なんて誰の耳にも入ってないだろうが、別に構わない。
この大陸に次々と出現する巨大な塔に見入っている皆は、この後知る事になるのだ。この俺が、とても良い性格であるという事に。
『…大河さんは、良い性格してますよ、本当に』
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