システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

文字の大きさ
上 下
336 / 1,466

第28回 トール様の婚約者会議  ②

しおりを挟む
『それで、マチルダ。結婚式の後の話とは、一体どのような話でしょう?』

 やはり、ここは婚約者~ず序列1位であるメリルが代表で口を開くらしい。

『まさか…そんな簡単な事もお分かりでは無いと、メリルさん? とても重要な案件ですよ?』
『『『『 ??? 』』』』

 マチルダの持って回った言い方に、多少思う所もあるのだろうが、それよりも疑問の方が先に立つ一同。

『結婚式の後…それは、もちろん初夜です!』
『『『『 ??? 』』』』

 ちょっと顔を赤くしながらも言い切ったマチルダであったが、それでも全員の頭には疑問符が浮かんでした。

『あ、あれ?』

 予想していた反応を得られなかったマチルダが、戸惑いの声をあげる。

『…初夜のどこが重要な案件なんですか?』

 いつも通りの表情で、マチルダに疑問をぶつけるミルシェ。

『え? ミルシェも…その…初めてですよね?』
『むっふー! もちろんです!』
『その…男の方とそういう事をするのですよ? 怖かったり恥ずかしかったりしません?』
『『『『なんで?』』』』

 もしや、怖かったり恥ずかしかったりするのは、マチルダだけなのか?

『あのね、マチルダさん。そもそも結婚するのですから、その様な行為は当然するでしょう? トール様とはここにいる全員が結婚するのですよ? 怖がったり恥ずかしがったりしてたら、トール様が意識的にしろ無意識にしろ距離を取ってしまうかもしれませんわよ? そうなれば寵愛を受ける事も無くなってしまい、もしかするとその後トール様と閨を共にする事なく、生涯を過ごす事に成りかねませんわよ? あなたはそれでも良ろしいのかしら?』
『……………いやです』
 
 メリルの話した内容をじっくり考えたマチルダは、一言ぽつりと漏らした。

『マチルダ。要は気合だ!』
『イネスさん…それはちょっと…』
『そんな事は無い! マチルダ、さあ共に叫ぼう! 気合だ、気合だ、気合だーーーーー!!』
『……この脳筋が……』
『ん? 何かいったか、マチルダ?』
『いえ、叫ぶのはちょっと遠慮しておきます。お気持ちだけもらっておきます』

 どこかのアニマルみたいな気合は、確かに結婚前の淑女には似合わないかもしれない。
 アニマルな娘は叫んでたけど…一緒に。

『えっと…マチルダさん。トール様は貴族です…』
『え、ええ…もちろん存じておりますよ、ミレーラさん』
『貴族ですから…その…お世継ぎが必要です…よね?』
『勿論です! 特にトール様ほど優秀な方でしたら、沢山のお子様を…あっ!』
『そのお世継ぎを産むのは…私達ですから…恥ずかしいとか怖いとか…言ってる場合じゃ…』
『くっ! 私としたことが! 確かにミレーラさんの仰る通りです。トール様には、お世継ぎが沢山必要です! そして母親は私達。確かに怖いとか恥ずかしいとか言ってる場合では無いですよね…。ここはやはり気合なのか…』

 違う、違うぞマチルダ。君はイネスに騙されて…洗脳…毒されてるぞ!

『では、そんなマチルダさんには、これをお貸ししましょう』
『えっと…メリルさん、これは?』
『これは王家に代々伝わる、秘伝の書です』

 パラリ…と手渡された本のページをめくるマチルダ。
 その内容に目を通した瞬間、ぼんっ! と音がするほどの勢いで、顔だけでなく首筋まで真っ赤になってしまった。

『これは王家に嫁いで来たり、また王家から他家へと嫁ぐ全ての女性のための【完全攻略 夜の夫婦生活を充足させるための手引書 ~ 男の子なんていちころよ ~ 】 です』
『こ、これは…ごくりっ! こんな事まで! え、こんな恰好するのですか?』

 また怪しい本が出てきたもんだ…どんな格好なんだろう? 私、気になります!

『これを読めば、案外男の人なんて可愛いものだと思えますよ』
『もしかして…すでに皆さん、この本を読んだとか?』
『『『『Yes, I am!』』』』

 何故に英語? 

『その基礎テクニック編と応用編は、すでに全て習得しました。今は上級編に取り組んでます』
『え? これは基礎なんですか? っというか、応用とか上級もあるんですか、メリルさん?』
『私は、応用編まで進みました』
『ミルシェ…もう基礎は修了したと!?』
『…私は、まだ基礎を復習している…ところです…』
『ミレーラ! まさか貴女がそこまで!?』
『ふっ…私は、応用もばっちりだぞ!』
『まさか…イネス! (一番、女らしさから縁遠い)貴女が、そこまでとは!?』
『ん? 何か引っかかる物があった気が?』

 気のせいでは無い。ええ、まったく気のせいでは無いですよ、イネスさん。

『何故、私にこれをくださらなかったのですか、メリルさん!』
『いえ、いつも仕事で忙しい貴女ですから、なかなか渡すタイミングが…(あんな我がままボディーなのに、テクニックまで身に付けたらと思うと、ねぇ…)』

 マチルダの魅惑の我がままボディーに戦々恐々の一同が、ギリギリまで渡さなかったのは内緒の話。
 敵…ではないが、トールヴァルドの寵愛を受けたい身としては、ライバルの持つ武器は少ない方がいいのだ!
 いっそ渡さないでおこうかとも考えてた4人であったが、ちょっと可哀そうだったので渡したらしい。
 あくまでも公平な立場でのライバルで居たいという事だろうか?
 尚、脳筋イネスの心情や考えは分からないが、メリル、ミルシェ、ミレーラの3人は、内心『私には若さがある!』と考えてたかどうかは、ネス様だけが知っている…かもしれない。
しおりを挟む
感想 725

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...