システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

文字の大きさ
上 下
323 / 1,466

蟻さんの家

しおりを挟む
 周りに集まった人々は、きっと精霊さんに向かって熱く語る俺の事を、頭がおかしくなった人とでも思ってたんだろう。
 一般人には…というより、この世界の人は精霊さんを見る事が出来ないんだから、まあそう思われても仕方がない。
 だが、俺の『工事開始』の号令とともに起った騒音と振動に、一様に目を見開き呆然とした顔で俺を見ていた。
 カパス老なんか、あんぐり開けた口から、止めどなく涎がたれていた。きちゃないよ?

 さてさて、そんな周囲の人々の事なんて完全に置いてきぼりにして、精霊さんは元気に工事に勤しんでおります。
 見る間に、地面が何度か隆起と陥没を繰り返し、やがてあの地で見た地下への入り口のような、地下への階段が完成し、その穴のを取り囲むように地面が盛り上がった。
 機能的には地下鉄への出入口なのだが、偽装を頼んじゃったものだから、ぱっと見には巨大な蟻塚に穴が開いたって風体だ。
 最近の精霊さんは、やたらと凝り性になってきちゃったので、素晴らしく自然な仕上げになっている。
 その後も、ずごごごごごごごご!! と微振動が1時間ほど続き、同様の物が9個出来上がった。
 やがて音と振動が収まると、精霊作業員さん達が俺の前に整列した。

 俺の横でずっと作業の様子を見守っていた、各精霊のリーダーが…報告を受けたのかな?
 何やら作業員さんと話をしていた(様に見える)が、作業員さんと蟻塚の出入口へと消えていった。
 …まさか、完成検査でもしに行ったんだろうか?
 え? 引渡し前に検査をするのは当たり前? 不具合があれば手直しをしなけりゃだめだろうって?
 ええ、そりゃそうですが…何もそこまでしなくとも…は? 公共工事を舐めるなですと!?
 来期、入札指名業者から外されたら、おまんまの食い上げって?
 精霊さん、あんたら俺のエネルギー勝手にちゅーちゅー吸いにくるじゃん。
 大体、入札ってどこの仕事請け負うつもりだよ? ってか、どこからその知識引っ張ってきたんだ?
 精霊さん達って、一体どこを目指してるんだろう。
 
 さてさて、完成した地下都市を精霊さんと一通り見て周ったのだが、どこにも不具合なんて見つからなかった。
 父さんの領地でさんざん造った地下都市がベースなんだし、今回は部屋数も少ないんだから、当然と言えば当然の結果だ。
 地上に戻った俺と精霊さんの監督さん(?)は、問題ない事を確認したあと、互いに工事完成を祝ってハイタッチ(気分)をした。それじゃ、精霊さん達。これで完成という事で、お疲れさまでした~! 報酬のちゅーちゅーは、後程時間を作りますので、しばしお待ちください。

 事の成り行きを、ただ呆然と見ていた移住組の方々に改めて向き直った俺は、
「さあ、皆さんの住居の完成です。家族の人数に合わせた間取りの部屋を用意してますので、慌てずに中へと入ってください」
 そうは言ってみたものの、誰も言葉を発しようとはしないので、
「え~各集落の長の方、ちょっとお集まりください」
 のたのたと集落を率いていたお年寄りが集まってくる。
「あの穴の中に地下への階段があります。皆さんで部屋の割り当てをお願いします。全員が安心して住めるだけの部屋数がありますので、喧嘩などしない様にしてくださいね。1人、2人、3~4人用と3タイプの部屋を用意しました。居住空間は地下1~3階になります。地下4~6階は、皆さまの持ち込まれた植物を育てる為の空間となってますので、あとでご確認ください」
 黙って説明を聞いていた一同だったが、まだ何も施設を見てないので、「こいつ何言ってんだ?」的な顔で俺を見てる。
 まあいい。あの入り口をくぐり、階段を降りて驚くがいい! 俺が造った訳じゃ無いけど、なぜかドヤ顔したくなった。

 一通り口頭で施設に関しての説明をしたので、元の集落ごとのグループに別れてもらって、各蟻塚から中へと入ってもらった。
 うん、巨大な荷物を背負って一列で地下へと通ずる穴に入ってく姿は…やっぱ蟻だな。
 やがてあちこちの蟻塚から響く人々の驚いた声に、精霊さん達も満足気に頷いたり、ドヤ顔したりしていた。

 んじゃ、精霊さん。約束のおやつ…もとい、報酬タイムです。
 存分に俺からちゅーちゅーしてくれ~い!
しおりを挟む
感想 725

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...