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第一村人? 視点
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「なあ、おっちゃん…あれ、何だと思う?」
少年が指さした先には、空に浮かぶ真っ白な卵に、船がぶら下がっていた。
「魔物に船が捕まったんじゃろか?」
もちろん何だか分からん。
遠くに浮かぶそれは、ゆっくりとだがこちらに近づいて来ている様だ。
「おっちゃん! だんだん下がってるぞ、あれ!」
確かに近づきつつ、下がってる様に見える。
ごくり…わしは思わず唾を飲んだ。
わしは、一緒に地上に出てきた者達と、ただ黙ってそれを見ていた。
口を開く事が出来なかった。
もしかすると、恐ろしい魔物かもしれない。だが、逃げる事も出来そうにない。
地下に逃げ込もうなら、そこから攻撃されるかもしれん。そうなったら、この地下に住む人々は…
全員がただ呆然とそれを見つめていた。
やがてそれは、少し離れた地面に音もなく降りてきた。
少しすると、それは何事も無かったかのようにまた空へと浮かんだが、今度は動かずに空で停まっていた。
空に浮かぶ、船がぶら下がった白い巨大な卵の様な物体を眺めていると、後ろにいた誰かが、ぽつりと言葉を漏らした。
「…誰かいる…」
その言葉に視線を地上へともどすと、確かに人影が見える。
その人影は、ゆっくりと歩きながら近づいてきた。
それは立派な仕立ての服を着た、どこかの貴族の子息の様な少年と、それに付き従う美しいドレスで着飾った少女であった。
現実離れしたその容姿に見惚れていると、少年が口を開く。
「え~みなさんは、この国の民ですか?」
何気ない言葉ではあったが、声は荒れ地に住む自分達とは違いとても澄んでいて、少年らしい中音域の声であった。
この場に居並ぶ面々は、その言葉を返せなかった…いや、美少年と美少女と言っても決して過言では無い2人に見惚れていたというのが正しい表現だろう。
しかし、そんな返事が無い我々を不審に思ったのかどうかは分からぬが、少年は小首を傾げつつも続けて、
「あのぉ…私達は、隣のアーテリオス神国のさらに隣、グーダイド王国から来ました。両国の親書も持ってきていますので、よろしければこの国の長にお取次ぎいただけないでしょうか」
そう言葉を繋いだ。
二か国の親書? この少年は、一体どのような立場にあるというのか。
その様な重要な役割を二か国より任されるという事は、さぞ身分も能力も高い少年なのだろう。
であれば、ここで無言を通すのはいかにも不敬。
皆を代表すると言うと烏滸がましいかもしれないが、一番年嵩の言っているわしが歩み出て応える事にした。
「隣の国というと、太陽神の国じゃな? その隣の国は知らんが…親書を持って、何をしにこの地に?」
神国は国交は無いにせよ、その存在はこの地に住む我らに知らぬ者は居ないだろう。
さてその隣国と言われても、我等は名前も知らないが。
「私達がここに来た目的は、聖なる女神ネス様より、この地に生まれた恐怖の大王を倒す様にとの神託を受け、戦うために参りました」
続けて貴族の子息風の少年が、そう言った。
いや、恐怖の大王? もしや最近オアシスに急に現れたあの不気味な存在の事か?
アレがオアシスに現れ陣取ってからというもの、動く死体が周囲を徘徊し、近づこうとすれば襲ってきたりと、我々の生活どころか命の危険すら感じた、アレの事なのか? そう考えていると、後ろで成り行きを見守っていた者達の中から、少年が声を上げた。
「先生! あの気持ち悪いキノコが無くなってる! 動く死体も!」
なに!? そんな馬鹿な! 昨日の朝には、そこかしこに動く死体が徘徊していたし、遠くにアレも立っていた…いや、そう言えば空が青い! 昨日までどんよりとした嫌な空だったのが、今はその淀んだ感じがどこにも無い。
アレも…確かに見えない…いや、そろそろ目も悪くなってきたから、見間違え可も知れぬが…
背後からは、「無くなってる!」「死体が消えた!」などなど、皆が口々に騒ぎ始めた。
どうやら見間違いでは無かったらしい。何という事だ!
「皆の者…よく聞きなさい。私は聖なる女神ネス様の眷属にして、妖精族の長、ナディア。そしてここに居られるは、聖なる女神様の使徒である、トールヴァルド様。此度は女神様より、恐怖の大王を倒し、この地の民を助けよとの神託を受け、昨日このトールヴァルド様と神に選ばれた戦士で恐怖の大王と戦い倒した。この地の民を脅かす恐怖は去った」
突然少年に着き従っていた美しく着飾った美少女が、涼やかで美しい声を発した。
いや、よく見るとさっきまで無かったはずの、たまにオアシスを飛び回る蝶々の様な美しい羽が背中に生えている!
「我々は、あなた達の良き隣人である二か国の親書を持ち、友好を深めんと会談を申し込んでいるのだ。早々に取次を願う」
か…神様の遣いの方に間違いない! こうしては居れん!
おい、そこのお前とお前は、今聞いた事をそのまま長老に伝えるのだ! 神様の遣いの方が来られているとな!
急げ、急げ! お前らさっさと走るんだよ! 何? 長老は足腰弱いから、もう地上までの階段を上がれない?
馬鹿野郎! お前らが担いででも連れて来るんだよ! お前とお前も行け! 神様の遣いの方を待たせるわけにはいかん!
死んでも急ぐんだ!
少年が指さした先には、空に浮かぶ真っ白な卵に、船がぶら下がっていた。
「魔物に船が捕まったんじゃろか?」
もちろん何だか分からん。
遠くに浮かぶそれは、ゆっくりとだがこちらに近づいて来ている様だ。
「おっちゃん! だんだん下がってるぞ、あれ!」
確かに近づきつつ、下がってる様に見える。
ごくり…わしは思わず唾を飲んだ。
わしは、一緒に地上に出てきた者達と、ただ黙ってそれを見ていた。
口を開く事が出来なかった。
もしかすると、恐ろしい魔物かもしれない。だが、逃げる事も出来そうにない。
地下に逃げ込もうなら、そこから攻撃されるかもしれん。そうなったら、この地下に住む人々は…
全員がただ呆然とそれを見つめていた。
やがてそれは、少し離れた地面に音もなく降りてきた。
少しすると、それは何事も無かったかのようにまた空へと浮かんだが、今度は動かずに空で停まっていた。
空に浮かぶ、船がぶら下がった白い巨大な卵の様な物体を眺めていると、後ろにいた誰かが、ぽつりと言葉を漏らした。
「…誰かいる…」
その言葉に視線を地上へともどすと、確かに人影が見える。
その人影は、ゆっくりと歩きながら近づいてきた。
それは立派な仕立ての服を着た、どこかの貴族の子息の様な少年と、それに付き従う美しいドレスで着飾った少女であった。
現実離れしたその容姿に見惚れていると、少年が口を開く。
「え~みなさんは、この国の民ですか?」
何気ない言葉ではあったが、声は荒れ地に住む自分達とは違いとても澄んでいて、少年らしい中音域の声であった。
この場に居並ぶ面々は、その言葉を返せなかった…いや、美少年と美少女と言っても決して過言では無い2人に見惚れていたというのが正しい表現だろう。
しかし、そんな返事が無い我々を不審に思ったのかどうかは分からぬが、少年は小首を傾げつつも続けて、
「あのぉ…私達は、隣のアーテリオス神国のさらに隣、グーダイド王国から来ました。両国の親書も持ってきていますので、よろしければこの国の長にお取次ぎいただけないでしょうか」
そう言葉を繋いだ。
二か国の親書? この少年は、一体どのような立場にあるというのか。
その様な重要な役割を二か国より任されるという事は、さぞ身分も能力も高い少年なのだろう。
であれば、ここで無言を通すのはいかにも不敬。
皆を代表すると言うと烏滸がましいかもしれないが、一番年嵩の言っているわしが歩み出て応える事にした。
「隣の国というと、太陽神の国じゃな? その隣の国は知らんが…親書を持って、何をしにこの地に?」
神国は国交は無いにせよ、その存在はこの地に住む我らに知らぬ者は居ないだろう。
さてその隣国と言われても、我等は名前も知らないが。
「私達がここに来た目的は、聖なる女神ネス様より、この地に生まれた恐怖の大王を倒す様にとの神託を受け、戦うために参りました」
続けて貴族の子息風の少年が、そう言った。
いや、恐怖の大王? もしや最近オアシスに急に現れたあの不気味な存在の事か?
アレがオアシスに現れ陣取ってからというもの、動く死体が周囲を徘徊し、近づこうとすれば襲ってきたりと、我々の生活どころか命の危険すら感じた、アレの事なのか? そう考えていると、後ろで成り行きを見守っていた者達の中から、少年が声を上げた。
「先生! あの気持ち悪いキノコが無くなってる! 動く死体も!」
なに!? そんな馬鹿な! 昨日の朝には、そこかしこに動く死体が徘徊していたし、遠くにアレも立っていた…いや、そう言えば空が青い! 昨日までどんよりとした嫌な空だったのが、今はその淀んだ感じがどこにも無い。
アレも…確かに見えない…いや、そろそろ目も悪くなってきたから、見間違え可も知れぬが…
背後からは、「無くなってる!」「死体が消えた!」などなど、皆が口々に騒ぎ始めた。
どうやら見間違いでは無かったらしい。何という事だ!
「皆の者…よく聞きなさい。私は聖なる女神ネス様の眷属にして、妖精族の長、ナディア。そしてここに居られるは、聖なる女神様の使徒である、トールヴァルド様。此度は女神様より、恐怖の大王を倒し、この地の民を助けよとの神託を受け、昨日このトールヴァルド様と神に選ばれた戦士で恐怖の大王と戦い倒した。この地の民を脅かす恐怖は去った」
突然少年に着き従っていた美しく着飾った美少女が、涼やかで美しい声を発した。
いや、よく見るとさっきまで無かったはずの、たまにオアシスを飛び回る蝶々の様な美しい羽が背中に生えている!
「我々は、あなた達の良き隣人である二か国の親書を持ち、友好を深めんと会談を申し込んでいるのだ。早々に取次を願う」
か…神様の遣いの方に間違いない! こうしては居れん!
おい、そこのお前とお前は、今聞いた事をそのまま長老に伝えるのだ! 神様の遣いの方が来られているとな!
急げ、急げ! お前らさっさと走るんだよ! 何? 長老は足腰弱いから、もう地上までの階段を上がれない?
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