システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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お隣の国

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 アーテリオス神国と隣国を隔てていた長く高い山脈沿いを、ゆっくり一日かけて飛んでようやく山越え出来るポイントを見つけた。
 そりゃこんだけの長い山脈が横たわっていれば、布教活動に隣国まで行けなかっただろうな。
 神国が太陽神崇拝で、隣国が月神崇拝という風に、全く別の宗教でくっきりはっきり分かれていても頷けるってもんだ。
 さて、それでは標高が下がった山の裾野を飛んで、隣国へと領空侵犯…もとい無断侵入…もとい無断越境…どれも一緒か。
 お隣の国へ、レッツゴー!

 お隣の国は、山脈を越えてみると…砂漠だった…
 砂漠とは言っても、世間一般の砂丘的な砂漠では無く、岩石砂漠や礫砂漠、土砂漠と呼ばれる、荒涼とした土地である。
 点々とサボテンに似た植物や、アカシヤの様な樹木が生えてはいるが、赤茶けた地面は見るからに水分が少なく、農業に適していないのは明らかだ。
 これが見渡す限り続いている。
 燦燦と輝く太陽が地面をじりじりと焼き、生き物を干上がらせているのだろう。
 そりゃ、太陽より月を拝みたくなる気持ちも、わからんでもない。
 人の気配は全く感じず、人工の建造物も見渡す限り、どこにも無い。

「この国は…滅んだのか?」
 この光景を前にして、思わず口にした言葉だ。
「トール様、すでに恐怖の大王が?」
 メリルが、その原因をカズムのせいかと考えた様だが、どうもこれは元からの様だ。
 この国の土地のせいなのか…原因は一体…

『大河さん、ヒントです。この土地は、少々周辺国よりも平均標高が高いです。そして周囲は先ほどまでの山脈とまでは言いませんが、山々で囲まれている盆地です。この国はとっても乾いています。ほら、所々に焼け落ちた樹木の残骸がありますよ』
 ん~もしかすると、フェーン現象、それも乾いたフェーン現象ってやつか!
『大正解~♪ 乾いた土地なため、戦争などで火事が起これば、あっという間に全て燃え尽きてしまいます。そしてさらに乾燥が進み、地表の水分はどんどん奪われ、人が住めない土地へとまっしぐらです!』
 ってことは、どっかにあるオアシスぐらいしか、人は住んでないって事か…

「恐怖の大王のせいとかじゃなく、この土地の地質や気候的な物みたいだな。詳しくは説明が難しいが、まあこの国の空気が乾燥していて土地の水分が蒸発してしまっているのと、地質的に水分を地表近くに留め置けないみたいで、植物が生えるのに適してないって事だ。つまり、まともに農業が出来ない。だから、こんな風になったみたいだな…」
 メリルの質問に、そう答えてやると、
「す、すごいですトール様! そんな学者先生の様な事を知っておられるなんて!」
 なぜか、めっちゃ潤んだ尊敬の目で見つめられた。
 恥ずかしいので視線をずらすと、他の婚約者~ずも同じ様に俺を見つめていた。

 やめろよな~。ちょっと雑学が得意なだけさ。TVのクイズ番組では、回答者が考えてる間に答え言っちゃったりして、前世ではクイズ王なんて言われたりもしたんだけどさ。
『私の第3ヒントまで聞いて回答したので、20点です』
 それ今言わなくてもよくね?
『得意げな顔に腹が立ちました』
 うっせーわ! 少しぐらい鼻高なったっていいだろー!
『ポキっとおりたくなります、そのピノキオの鼻を』
 折るなよ! 絶対に折るなよ! フリじゃないからな!
『へーへー。精々、婚約者~ずに、チヤホヤされて鼻の下伸ばしておいて下さい』
 いいじゃん、ちょっとぐらい…俺だって少しはチヤホヤされたいんもん!
『婚約者が5人もいる時点で、十分に世間様からはチヤホヤされてる馬鹿貴族の2世に見られてますけどね』
 …何も言い返せない、自分が悲しい…
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