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晩餐会後の男爵家
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「クソ! あの成りあがりの田舎貴族が途中退席なんぞしおっって! わしの面子丸つぶだ!」
「父さん~あのコルネリアって娘と婚約できないの~? 結構好みだったのに」
「お父様! 伯爵の側室かトールヴァルド子爵の正妻になれるのではなかったのですか? どうなってますの!?」
「あなた! 来賓の皆様が帰ってきますわよ! どうなさるおつもりざます!?」
アルビーン男爵一家は、アルテアン一家が晩餐会を中途退場した事により、来賓一同より大きな顰蹙を買った。
今回の参加者で最も高位貴族であり、主賓でもあるアルテアン一家の機嫌を損ねた男爵家。
満足なもてなしすら出来ない男爵家。
貴族の晩餐会だけでなく、どんな集まりであっても、普通は主賓に対しては最大限の心配りをするものである。
それは主賓を招く主催者にとって当たり前の事であり、それすらまともに出来ない者に人も信用も集まらない。
今回は、アルビーンとアルテアンの繋がりを周囲に見せつけようと、滅多に晩餐会やパーティーに顔を出さないアルテアンの一家全員を招いたというのに、その機嫌を損ねて途中退席させ、あまつさえ夜間であるにもかかわらず強引に街から出て行かれた。それは、ただの1刻すらもこの男爵領に居たくないという、アルテアン家の意思の表れ。
周囲には関係修復不可能とも思われるほどの、アルビーン男爵の大失態と映った。
それを知った参加者は、沈む船から逃げる事ネズミの如く、晩餐会場から出て行った。
「たかが戦争で敵将の首級を上げたぐらいで成りあがった騎士ごときが、この俺様に恥をかかせやがって! ガキもガキだ! 領地にたまたま女神がいる湖があるぐらいで、偉そうにしおって! どうせダンジョンなんていうオマケで得た金で買った爵位だろうが! 覚えてろよ~! あいつらの金も領地も爵位も全部わしのものにしてやる! あのガキの婚約者もわしの妾にして、壊れるまで玩具にしてくれるわ!」
男爵が頭に血を昇らせ喚き散らしていたが、それをしっかりと見ている者が居る事など、気付くはずも無かった。
「そうか…うん、良くわかったよ」
妖精たちが見聞きした事は、ナディアを通じて全て俺の元へと報告された。
あの豚の本性も分かったから、遠慮なく完膚なきまでに叩き潰せるね。
ナディア、もう妖精達は引き上げても良いよ。あ、引き上げる時、嫌がらせに豚小屋に火でも放っておいて。
『イエス、マイ マスター』
「クソ! クソ! クソ!」
今や王国で最も経済的に豊かであるアルテアンを神輿に担ぎあげ、甘い汁をすすり、あわよくば乗っ取ろうなどと考えていた豚男爵であったが、その目論見は見事なまでに崩壊寸前、いらつきは頂点に達しようとしていた。
「大変でございます、旦那様!!」
そんな男爵をさらに不愉快にさせる程の大声で、男爵家の筆頭執事が男爵の執務室に飛び込んできた。
「ええい、やかましい! 静かにしろ! ただでさえイライラしているというのに、さらにわしをイラつかせるのか!」
「だ…旦那様、それどころではありません! 例の部屋も金庫も書庫に隠してあった例の書類も金品も、全て…綺麗さっぱり消えているのです!」
「な…なんじゃとーーーーーーーーーーー!!!!」
男爵は執事を押し退け、すぐに隠し部屋へと走った。そこにはただ空き部屋があるだけだった。
「そ…そんなはず…は…」
隠し金庫のある地下室へとさらに走った男爵であったが、そこにも同じく空になった金庫があるだけだった。
「ば、馬鹿な! あれだけの金品と書類を一体どうやって……。はっ! まさかアルテアンが!? いや、奴らは会場から真っすぐに出て行った…それも手ぶらで…それにあの蒸気自動車ごときに乗るはずも無い。そもそもあの田舎貴族のメイドも執事も会場におったと聞いておる…ならば賊は一体………」
その後、男爵は館中の使用人に聞き取りを行い、徹底的に館を調べ上げたが、賊が侵入した形跡も金品や書類などを持ち出したた形跡も、一切発見されなかった。
「一体、何がどうなったというのだ…」
男爵は、執務室でただ頭を抱える事しか出来なかった。
「何じゃ…やかましい…」
廊下から漏れ聞こえる使用人たちの騒ぎが、そんな余計男爵をさらにイラつかせた。
しかし、その使用人達の騒ぐ声の中に、聞き漏らす事が出来ない声が交じる。
『火事だー! 火事だ! 火事だーー!』
「な…なんじゃとーーーーーーーー!!!」
その夜、煌びやかで豪奢な造りのアルビーン男爵邸では、あちこちから火の手が上がった。無事に消火できたものの、焦げや煤、消火のための水により、復旧には莫大な費用がかかると思われた。
「何という事じゃ…まさか…これがネスの天罰なのか…」
贅を尽くし建築した屋敷の、見るも無残な姿を前に、呆然と佇む男爵がぽつりとこぼした言葉だった。
後日談ではあるが、この日を境にアルビーン男爵領から、ほぼ全ての領民が何らかの理由をつけてアルテアン領へと逃げ出した。
逃げ出した領民は、アルテアン領へたどり着いた時、難民として保護して欲しいと訴え、伯爵領・子爵領共に全員を無条件で受け入れる事となった。
この時、難民達を護衛したのは、元男爵領の兵士達であったとか無かったとか。
男爵領からの帰りは夜間の運転だったので、ユズキにはやっぱ難しかった。
もちょっと運転に慣れてもらわなきゃなあ…若葉マークだから仕方が無いけど。
仕方が無いので、じれた俺が途中から運転を交代した。
父さんの蒸気自動車はナディアが運転しているんで、2台揃ってそこそこの速度で夜通し走って帰って来た。
途中、猪や狸っぽいのが街道に飛び出して来たけど…無視してロードキルしちゃった…南無~。
今回、腐れ男爵家の晩餐会に参加した全員で、俺の屋敷まで戻って来た。
何でかってーと、まあ男爵家のあれやこれやの書類その他諸々の押収物(もちろん秘密の)があるからだ。
いや~妖精さんも精霊さんも、ご苦労様でした。
どうやって運んだの? ほうほう、風の精霊さんが運搬を担当したのね。
妖精さん達は光学迷彩を施したシールドで覆ってたと、なる程ね。
道中の警備は水と土の精霊さんが担当したと、なるほど…みんなご苦労様。
ってか、男爵領から俺の家までの長距離ベルトコンベアー…じゃないバケツリレーしたのか?
すっげえな、精霊さん!
え? 父さんの家に居る妖精さんにも応援を頼んだって? 40名ほど!?
そりゃまた大勢で…いやいや、助かりました。
あ、最後に妖精さんと火の精霊さんで、証拠隠滅のために豚小屋のあちこちに火をつけたと?
そりゃ結構毛だらけ猫灰だらけ、お尻の周りはクソだらけっとくらぁ!
って、こりゃ某フーテンのタイガーさんの口上だっけ。
一応、ブレンダーとクイーンには念話で地下室の扉を開ける様にお願いしてたんだけど…
あ、ちゃんと地下室に運んでくれたのね。
みんな、本当にありがとうね。全部落ち着いたら、いっぱいちゅーちゅーしに来ていいからね。
ところで…何時つっこもうかと思案しておりましたが…
妖精さん方の、ボディーにぴっちりとフィットしているその素敵な革ツナギは…一体どうされたのですか?
ああ、不○子ちゃ~んの衣装を手作りしたと…そですか…
精霊さん方の、カラフルな忍者衣装はどうされたんですか?
忍び込むならくノ一の衣装だと思って、揃えてみたと…そですか…
まぁ、皆さんが良ければ私からは何も申し上げる事は御座いません…ええ、よくお似合いでございますよ…
って事で、全員で押収物をチェックして、男爵家とそれに繋がる者共の不正の証拠を掴むため、我が家でこのままお仕事に突入! 俺一人で書類整理とチェックとかしてたら、絶対に徹夜残業確定だもん!
全員巻き込んで…まてよ、もっと良い方法があるな…うっしっしっし…
よ~し! そうと決まれば、今日は取りあえず風呂入って寝よう!
「父さん~あのコルネリアって娘と婚約できないの~? 結構好みだったのに」
「お父様! 伯爵の側室かトールヴァルド子爵の正妻になれるのではなかったのですか? どうなってますの!?」
「あなた! 来賓の皆様が帰ってきますわよ! どうなさるおつもりざます!?」
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今回の参加者で最も高位貴族であり、主賓でもあるアルテアン一家の機嫌を損ねた男爵家。
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周囲には関係修復不可能とも思われるほどの、アルビーン男爵の大失態と映った。
それを知った参加者は、沈む船から逃げる事ネズミの如く、晩餐会場から出て行った。
「たかが戦争で敵将の首級を上げたぐらいで成りあがった騎士ごときが、この俺様に恥をかかせやがって! ガキもガキだ! 領地にたまたま女神がいる湖があるぐらいで、偉そうにしおって! どうせダンジョンなんていうオマケで得た金で買った爵位だろうが! 覚えてろよ~! あいつらの金も領地も爵位も全部わしのものにしてやる! あのガキの婚約者もわしの妾にして、壊れるまで玩具にしてくれるわ!」
男爵が頭に血を昇らせ喚き散らしていたが、それをしっかりと見ている者が居る事など、気付くはずも無かった。
「そうか…うん、良くわかったよ」
妖精たちが見聞きした事は、ナディアを通じて全て俺の元へと報告された。
あの豚の本性も分かったから、遠慮なく完膚なきまでに叩き潰せるね。
ナディア、もう妖精達は引き上げても良いよ。あ、引き上げる時、嫌がらせに豚小屋に火でも放っておいて。
『イエス、マイ マスター』
「クソ! クソ! クソ!」
今や王国で最も経済的に豊かであるアルテアンを神輿に担ぎあげ、甘い汁をすすり、あわよくば乗っ取ろうなどと考えていた豚男爵であったが、その目論見は見事なまでに崩壊寸前、いらつきは頂点に達しようとしていた。
「大変でございます、旦那様!!」
そんな男爵をさらに不愉快にさせる程の大声で、男爵家の筆頭執事が男爵の執務室に飛び込んできた。
「ええい、やかましい! 静かにしろ! ただでさえイライラしているというのに、さらにわしをイラつかせるのか!」
「だ…旦那様、それどころではありません! 例の部屋も金庫も書庫に隠してあった例の書類も金品も、全て…綺麗さっぱり消えているのです!」
「な…なんじゃとーーーーーーーーーーー!!!!」
男爵は執事を押し退け、すぐに隠し部屋へと走った。そこにはただ空き部屋があるだけだった。
「そ…そんなはず…は…」
隠し金庫のある地下室へとさらに走った男爵であったが、そこにも同じく空になった金庫があるだけだった。
「ば、馬鹿な! あれだけの金品と書類を一体どうやって……。はっ! まさかアルテアンが!? いや、奴らは会場から真っすぐに出て行った…それも手ぶらで…それにあの蒸気自動車ごときに乗るはずも無い。そもそもあの田舎貴族のメイドも執事も会場におったと聞いておる…ならば賊は一体………」
その後、男爵は館中の使用人に聞き取りを行い、徹底的に館を調べ上げたが、賊が侵入した形跡も金品や書類などを持ち出したた形跡も、一切発見されなかった。
「一体、何がどうなったというのだ…」
男爵は、執務室でただ頭を抱える事しか出来なかった。
「何じゃ…やかましい…」
廊下から漏れ聞こえる使用人たちの騒ぎが、そんな余計男爵をさらにイラつかせた。
しかし、その使用人達の騒ぐ声の中に、聞き漏らす事が出来ない声が交じる。
『火事だー! 火事だ! 火事だーー!』
「な…なんじゃとーーーーーーーー!!!」
その夜、煌びやかで豪奢な造りのアルビーン男爵邸では、あちこちから火の手が上がった。無事に消火できたものの、焦げや煤、消火のための水により、復旧には莫大な費用がかかると思われた。
「何という事じゃ…まさか…これがネスの天罰なのか…」
贅を尽くし建築した屋敷の、見るも無残な姿を前に、呆然と佇む男爵がぽつりとこぼした言葉だった。
後日談ではあるが、この日を境にアルビーン男爵領から、ほぼ全ての領民が何らかの理由をつけてアルテアン領へと逃げ出した。
逃げ出した領民は、アルテアン領へたどり着いた時、難民として保護して欲しいと訴え、伯爵領・子爵領共に全員を無条件で受け入れる事となった。
この時、難民達を護衛したのは、元男爵領の兵士達であったとか無かったとか。
男爵領からの帰りは夜間の運転だったので、ユズキにはやっぱ難しかった。
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仕方が無いので、じれた俺が途中から運転を交代した。
父さんの蒸気自動車はナディアが運転しているんで、2台揃ってそこそこの速度で夜通し走って帰って来た。
途中、猪や狸っぽいのが街道に飛び出して来たけど…無視してロードキルしちゃった…南無~。
今回、腐れ男爵家の晩餐会に参加した全員で、俺の屋敷まで戻って来た。
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ってか、男爵領から俺の家までの長距離ベルトコンベアー…じゃないバケツリレーしたのか?
すっげえな、精霊さん!
え? 父さんの家に居る妖精さんにも応援を頼んだって? 40名ほど!?
そりゃまた大勢で…いやいや、助かりました。
あ、最後に妖精さんと火の精霊さんで、証拠隠滅のために豚小屋のあちこちに火をつけたと?
そりゃ結構毛だらけ猫灰だらけ、お尻の周りはクソだらけっとくらぁ!
って、こりゃ某フーテンのタイガーさんの口上だっけ。
一応、ブレンダーとクイーンには念話で地下室の扉を開ける様にお願いしてたんだけど…
あ、ちゃんと地下室に運んでくれたのね。
みんな、本当にありがとうね。全部落ち着いたら、いっぱいちゅーちゅーしに来ていいからね。
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妖精さん方の、ボディーにぴっちりとフィットしているその素敵な革ツナギは…一体どうされたのですか?
ああ、不○子ちゃ~んの衣装を手作りしたと…そですか…
精霊さん方の、カラフルな忍者衣装はどうされたんですか?
忍び込むならくノ一の衣装だと思って、揃えてみたと…そですか…
まぁ、皆さんが良ければ私からは何も申し上げる事は御座いません…ええ、よくお似合いでございますよ…
って事で、全員で押収物をチェックして、男爵家とそれに繋がる者共の不正の証拠を掴むため、我が家でこのままお仕事に突入! 俺一人で書類整理とチェックとかしてたら、絶対に徹夜残業確定だもん!
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