上 下
187 / 1,399

完全に嵌められた

しおりを挟む
 人様にお見せできない状況になってしまった俺の部屋…明るい状況で見たら、全員着衣の乱れが…
 大体、こういう時に災いはやって来る(経験則)のは、お約束だ。
「トールちゃん、朝ご飯の時間だけど…みんな…ここにいたの?」
 入り口を、バーーン! と効果音を付けてあげたくなるような勢いで開けた母さんが、惨状を見て固まった。
 いや、母さんを見た俺も固まったけど…
「「「「「「「……………」」」」」」
 ユズキ、ユズカ…『うゎぁ~!』って顔して、母さんの後ろから見んな!
 なんでサラまで母さんの後ろから覗いてるんだよ! お前はこっち側の人間だろーが!
「昨晩はお楽しみでしたね♡」
 母さんの前でいらん事を言うな! 見ろ、母さんのこめかみに青筋が…
「そう…トールちゃんは、昨晩お楽しみだったのね」
「いや、母さん違うんだ! 俺が寝てたら、みんなが酔っぱらって俺を襲撃しに来たんだ! 俺は被害者だから!」
 いや、マジだから、信じて!
「メリル、ミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネス…トールちゃんの言っている事は、事実ですか?」
 母さん…氷の視線…
「「「「「……ぁぅ………」」」」」
 うん、襲撃組はしょんぼり。母さんの恐怖の説教タイムが待ってるもんな! 俺はセーフだった! やった!

「そう。それじゃ朝ご飯にしましょう。みんな顔を洗って身支度してきなさい」
 潮がひく様に、みんな一斉に俺の部屋から出て行っちゃった…あ、あっれ~? 母さんの説教タイムは? 
「トールちゃんも男なんだから、どーーんと受け入れてあげなさい。でも旅先では控えなさい。ほどほどにね?」
 何故に? 母さん、女性陣には何故に寛容!? 
「マチルダとイネスも、この際まとめてもらっちゃいましょう。ちょうど姉さんたちも居る事だし、話を通しておきますから」
「え、ちょ! もうこれ以上は無理だよ!」
 ハーレムはいらないから! 3人でもハーレム野郎って読者は思ってるはず! って、読者って何だよ、俺!
「義兄さんの商会と取引するのでしょう? ここでがっちりした関係を築いておけば、将来安泰なのだから、諦めなさい」
 諦めろって言ったよ! 実の息子に、諦めろって! 
「そ、それはそうかもしれないけど、じゃイネスさんは何でだよ!」
「イネス? ついでよついで」
 ついでって、母さん…あんたって人は…
「これでハーレム野郎一直線ね」
「いーやーだー!」
「諦めなさい。それが運命なのよ(嗾けたのは私だけど…ボソ…)」
「ちょっとまてーーい! 今、母さん何か言ったよね? 嗾けた? ねえ、言ったよね?」
 すべては母さんの手のひらの上なのか?
「記憶に無いわ。トールちゃん、朝から煩いわよ」
「俺の人生がかかってるんだよ! まさか、母さんが計画立案者なのか!?」
 絶対に母さんの仕業だな! 確信した!
「あなたは優し過ぎる。忘れないで、その優しさが、もっと大きな悲しみを呼び寄せることもあるのよ」
 あんたは、暁美 ほむ〇ちゃんかよー! なんでそのセリフ知ってんだよ! ってか、意味わかんねーよ! 
 どこ見てんだよ! 母さん、絶対に退く気がないな…
「もう、いいよ。母さんの言う通りにするよ…」
「そ? 分かってくれて嬉しいわ。それじゃ早く食堂に来なさいね」
 クソッ! めっちゃ良い笑顔だな、母さん!
 もう、どうにでもなれ…

 ▲

 食堂に行くと、スロストさんから、
「マチルダを娶って頂けるとお聞きしましたぞ! 本当にありがとうございます。ええ、マチルダとも話しまして、将来生れる子供共々、爵位継承権は放棄しますので、決してお家騒動などの火種にはしません! どうぞご安心ください! いや~本当に良かった!」
 めっちゃ話が進んでるよ…ってか、俺が食堂に来る間に、そこまで話できてたの? 絶対に嘘でしょ! 俺、完全に嵌められたよな…
「トールヴァルド様。今度王都に行かれる時には、是非とも両親に紹介させてください!」
 ああ、イネスさんも完全にその気になってるし…
「トールよ、しっかり子供を作らないとな! 将来は全アルテアン領を治める事になるのだから。街の数だけ代官が必要だから…少なくとも1ダースは作るんだぞ」
 ダースって…父さんも無茶苦茶言ってるな…
 そうか、父さんも含めて全員がグルだったってわけか。
「まあトールよ、こればっかりは諦めろ。アルテアン領には秘密が多すぎる。他から嫁を迎えるなど論外。リスクが高すぎる。この先の領の内政は、完全に身内で固めた方が良い。これは決定事項だ」
「わかったよ…」
 一応、父さんも考えてるんだな…でも、コレ絶対に母さんの仕込みだ。
 間違いなく、黒幕は母さんだ。 
 つまりは5人も嫁が出来るが、決してハーレムなんかじゃ無く、俺は子供を量産するための種馬って事なのか…泣ける…

『大河さん、大河さん。でも、ちゃんとみんな大河さんを愛してくてれますよ?』
 …ぐすん…本当?
『きゅん♡ 涙目で弱ってるいたいけな少年…はぁはぁはぁ…これは…逝ける…』
 もうヤダぁ~~~~~!!
『ああああ~いっくぅぅぅぅぅ!!』
 どっかに行ってしまえ!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:745pt お気に入り:9,828

断罪なんて嘘でしょ!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:912

魔探偵探偵事務所

ミステリー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

妹と婚約者が浮気していると妹本人が告発してきた。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:12

一般人な僕は、冒険者な親友について行く

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:5,398

転生人生ごっちゃまぜ~数多の世界に転生を繰り返す、とある旅人のお話~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:222

紅蓮の島にて、永久の夢

BL / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:78

処理中です...