183 / 1,399
ボケたのかしら?
しおりを挟む
「それで使途殿、アルテアン卿。本日はどの様なご用件でこの街に来られたのでしょうか?」
先王陛下、まだ畏まってるなあ…俺達に敬語は不要だってのに。
「先王陛下、どうか敬語などは不要に願います。私も父もグーダイド王国の貴族なれば、大公爵たる先王陛下の方が遥かに爵位が上にございます。この様な場を民に見られでもしたら、私達一家が王家に対し尊大な態度である、不敬であるなどと言われてしまいます。口さがない者どもがその様な噂を耳にでもしたら、国家転覆を疑うやもしれません。どうか普段通りにお話しください」
暗に「普通にしゃべれよおっさん!」って言ったつもりだけど、理解できたかな?
「ふぅ…そこまで言われたら、口調を変えるしかないな。気を使わせた様で申し訳ない。私が隠居したスベルドだ。質問を繰り返す様だが、このスベルド領にどの様な用件で来られたのじゃ?」
滑るの? いや、今まで盛大に滑ってたけど、マジですべるの? 名前で予告しちゃってるよ、大公爵閣下!
笑っちゃ駄目だぞ…クッ…我慢だ! 我慢しろ! ……よし、耐えた!
父さんは普通だな。まあ先王を知ってるんだから、慣れてるのか?
「実は我が領の内政を任せている者の実家がこの街にございす。またその者の母親と言うのが、我が母の実姉にあたりますが、私はまだお顔を拝見した事がございません。出来れば是非顔を合わせておきたいと、こう考えて参った次第です」
う~ん…俺の言葉遣いも大概変だよなあ…参考にしてるのが時代劇だけど良いんだろうか、これで。
「なるほどなるほど! 使途殿の領地というと、ネス様の聖地ですな? 使途殿の血縁者がスベルド領に居るとは…何と言うご家名なのじゃな?」
あれ? 名前は聞いた事があったけど、実家は何て屋号のお店だっけ? そう言えば聞いた事ないや。
「その者はマチルダ・スロストと申しまして、実家は商家を営んでいると…」
「おお、スロスト商会であるか! この街でも有数の商会じゃな。そうか、使途殿と親類関係にあったとは」
俺はまだ伯母さんを見た事も無いんだけどね…
「ええ。真アーテリオス神聖国へ行く前に、お会いしようと窺った次第です。あまり時間もございませんので、この後お伺いしたく…」
さっさとお暇しようと試みるが、先王陛下が飛行船やら蒸気自動車やらに興味深々で、なかなか放してくれない。
実は我が家の面々は、ずっと部屋の隅で立ったままなんだよ。
流石に王女でもあるメリルを立たせたままってのはまずくないか? あんたの孫だろ?
「先王陛下…メリル王女も来ておられるのですが…その…立ったままと言うのは少しまずくはないでしょうか…」
すると、先王陛下「あっ!」って…あっ!って言っちゃったよ。
結構な大きさの声で! 自爆したぞ、大丈夫かオイ!
「し…使途殿の婚約者になっておったのじゃったな、メリルは、はははははは…」
目が俺達の背後を泳ぎまくり、なぜかミルシェを見ながら、
「久しぶりじゃな、お爺ちゃんじゃよ!」
うん、思いっきり間違ってる。 さすがスベルド…
ミルシェは困惑してるし、メリルはめっちゃ額に青筋浮かんでる…怖いよ…
「お・じ・い・さ・ま。お久しぶりでございますね…そう、孫の顔を忘れるほどに。それともボケたのかしら?」
毒! めっちゃ毒吐いてるよ、王女様!
「ボケとらんわい! ちょっと間違えただけじゃろ!」
いや、そのちょっとが大事故なんだってば…
「ちょっとが大きな問題なのです! ましてや孫の顔すら忘れるとは、大ボケにも程があります!」
だよねえ…
「いや、その娘が妙に気品があって…」
またいらん事を… さすがスベルド…
「そうですか。おじいさまは私に気品が無いと仰る。ほー、へー、ふーん…良くわかりました。トール様!」
「は、はい!」
「私はおじいさまと、少しお話がございます。後ほどスロスト商会にお伺いしますので、先に向かっておいて下さいませ」
うわ! これは間違いなく我が母直伝の恐怖の説教の流れ…
「諒解しました! 先王陛下…ご武運を…」
「トール様、何かおっしゃいました?」
はっ! いかんいかん、巻き添えを喰らう所だった!
「いえ! 先王陛下、斯様に慌ただしく御前を辞去する事、何卒寛恕下さいますよう。それでは失礼します!」
逃げます…ダッシュで!
こうして先王陛下の部屋から、我が家の面々は逃げ出す事が出来ました。
部屋からはもの凄いメリルの怒鳴り声が響いていたけど、聞こえなかった事にしよう…後が怖いから…
先王陛下、まだ畏まってるなあ…俺達に敬語は不要だってのに。
「先王陛下、どうか敬語などは不要に願います。私も父もグーダイド王国の貴族なれば、大公爵たる先王陛下の方が遥かに爵位が上にございます。この様な場を民に見られでもしたら、私達一家が王家に対し尊大な態度である、不敬であるなどと言われてしまいます。口さがない者どもがその様な噂を耳にでもしたら、国家転覆を疑うやもしれません。どうか普段通りにお話しください」
暗に「普通にしゃべれよおっさん!」って言ったつもりだけど、理解できたかな?
「ふぅ…そこまで言われたら、口調を変えるしかないな。気を使わせた様で申し訳ない。私が隠居したスベルドだ。質問を繰り返す様だが、このスベルド領にどの様な用件で来られたのじゃ?」
滑るの? いや、今まで盛大に滑ってたけど、マジですべるの? 名前で予告しちゃってるよ、大公爵閣下!
笑っちゃ駄目だぞ…クッ…我慢だ! 我慢しろ! ……よし、耐えた!
父さんは普通だな。まあ先王を知ってるんだから、慣れてるのか?
「実は我が領の内政を任せている者の実家がこの街にございす。またその者の母親と言うのが、我が母の実姉にあたりますが、私はまだお顔を拝見した事がございません。出来れば是非顔を合わせておきたいと、こう考えて参った次第です」
う~ん…俺の言葉遣いも大概変だよなあ…参考にしてるのが時代劇だけど良いんだろうか、これで。
「なるほどなるほど! 使途殿の領地というと、ネス様の聖地ですな? 使途殿の血縁者がスベルド領に居るとは…何と言うご家名なのじゃな?」
あれ? 名前は聞いた事があったけど、実家は何て屋号のお店だっけ? そう言えば聞いた事ないや。
「その者はマチルダ・スロストと申しまして、実家は商家を営んでいると…」
「おお、スロスト商会であるか! この街でも有数の商会じゃな。そうか、使途殿と親類関係にあったとは」
俺はまだ伯母さんを見た事も無いんだけどね…
「ええ。真アーテリオス神聖国へ行く前に、お会いしようと窺った次第です。あまり時間もございませんので、この後お伺いしたく…」
さっさとお暇しようと試みるが、先王陛下が飛行船やら蒸気自動車やらに興味深々で、なかなか放してくれない。
実は我が家の面々は、ずっと部屋の隅で立ったままなんだよ。
流石に王女でもあるメリルを立たせたままってのはまずくないか? あんたの孫だろ?
「先王陛下…メリル王女も来ておられるのですが…その…立ったままと言うのは少しまずくはないでしょうか…」
すると、先王陛下「あっ!」って…あっ!って言っちゃったよ。
結構な大きさの声で! 自爆したぞ、大丈夫かオイ!
「し…使途殿の婚約者になっておったのじゃったな、メリルは、はははははは…」
目が俺達の背後を泳ぎまくり、なぜかミルシェを見ながら、
「久しぶりじゃな、お爺ちゃんじゃよ!」
うん、思いっきり間違ってる。 さすがスベルド…
ミルシェは困惑してるし、メリルはめっちゃ額に青筋浮かんでる…怖いよ…
「お・じ・い・さ・ま。お久しぶりでございますね…そう、孫の顔を忘れるほどに。それともボケたのかしら?」
毒! めっちゃ毒吐いてるよ、王女様!
「ボケとらんわい! ちょっと間違えただけじゃろ!」
いや、そのちょっとが大事故なんだってば…
「ちょっとが大きな問題なのです! ましてや孫の顔すら忘れるとは、大ボケにも程があります!」
だよねえ…
「いや、その娘が妙に気品があって…」
またいらん事を… さすがスベルド…
「そうですか。おじいさまは私に気品が無いと仰る。ほー、へー、ふーん…良くわかりました。トール様!」
「は、はい!」
「私はおじいさまと、少しお話がございます。後ほどスロスト商会にお伺いしますので、先に向かっておいて下さいませ」
うわ! これは間違いなく我が母直伝の恐怖の説教の流れ…
「諒解しました! 先王陛下…ご武運を…」
「トール様、何かおっしゃいました?」
はっ! いかんいかん、巻き添えを喰らう所だった!
「いえ! 先王陛下、斯様に慌ただしく御前を辞去する事、何卒寛恕下さいますよう。それでは失礼します!」
逃げます…ダッシュで!
こうして先王陛下の部屋から、我が家の面々は逃げ出す事が出来ました。
部屋からはもの凄いメリルの怒鳴り声が響いていたけど、聞こえなかった事にしよう…後が怖いから…
応援ありがとうございます!
4
お気に入りに追加
1,596
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる