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お~の~れ~!

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 むぅ…怪しく明滅する水晶玉が誕生した。大きさは、ざっと直径20cmってとこかな…結構、大きい。これ、どうやって使うんだ? 
『私にもちょっと分かりませんので、システムにリンクして確認してみます…なるほど、大河さん、それ割ってください。それでこの世界に新たな法則が誕生します』
 割るって…地面にでも叩きつけたらいいのか?
『方法は何でも構いません。ただ、その水晶に込められた新たな概念が、この世界の現状と乖離すればするほど水晶の硬度は高くなりますので、ご注意ください』
 つまり、この世界を大きく変える物がこの中に入ってたら、この水晶は硬くなるって事か…でも、割ったらどうなんだろ?
『割った後ですか? 簡単に言えば、大河さんが新たな概念や法則の発見者となるという事です。ですから自然に全ての知識が頭に流れ込んできますよ。それを文章や図式にして広めるのか、それとも情報を秘匿するのかは大河さん次第って事になりますね』
 なるほど! 俺がこの概念を発見したんだから、詳細を知ってるのが当たり前の世界に改変されるって事なのか。
 どこまで広めるかはまた考えるとして、とにかく割ってみるか…

 足元に向かって…いくぞ~!
 うりゃ! どん! 
 思いっきり地面に叩きつけた水晶玉は、割れる事なくバウンドしてコロコロコロ…
 え? めっちゃ硬いんですけど。防犯用のカラーボールぐらいのイメージだったけど、これぐらいじゃダメか。
 んじゃ岩にぶつけてみようかね。岩に向かってオーバースローで、全力投球!
 そーーーーい! ガキャ! 
 あぶな! 岩に当たった水晶が俺の顔に向かって跳ね返って来た!
 この水晶、硬すぎだろ! どうやって割ったらいいんだよ?

『いや、だからどんな方法でも良いって言いましたよね? 変身して割ればいいじゃないですか。別に切ったって良いんですよ?』
 う、う~ん…出来たら生身で割りたかったなあ…仕方ない、変身しますか。

「へん…しん…トゥー!」
 月明りしかない山の中に、銀ピカの宇宙な刑事に似た、バイクにも乗らないのにライダーなトール君が降臨しました。
「んじゃま、早速…エネルギー・ブレード!」
 やっぱ、ここまでしたんだから、必殺技で叩き切ってやろう。
 さっき投げつけた岩の上に水晶を置いてっと。
 「トールちゃんダイナミック!」 
 右手に持った剣を頭の上でくるっと回して、真上から水晶に向かって振り下ろす!
 ずっぱーーーーーーーーーーーーん!
 勢い余って岩まで切っちゃったから、めっちゃ粉塵が舞い上がった…どうなった?
 
 粉塵が収まるのを待ちつつ、岩のあった場所を何となく見つめていたら、脳内にどこかで聞いた音楽が…
 タンタタタンタタタンタタタン♪ タンタタタンタタタンタンタン♪ タタタッタタッタッタ~…
 何だ…体の内から湧き上がる燃え上がる熱き想いは! 無性に走りだしたくなるこの音楽は…あ! 思いだした!これロ〇キーのテーマじゃねーか! 
 っと思った瞬間だった…

「んがぎぎゃごぎがががぐぎょぎゃごげぶごへあらごびぎゅ…!」
 頭をもの凄い激痛が襲った! 変身は強制的に解除になった様だ…
 なんだコレ! 頭に何かがもの凄い勢いで押し寄せて来た…いや何かを詰め込まれた! 目の前がチカチカするし、立ってられない。両手を地につき、晩飯に食った物をもどしてもどして、胃液が枯れても止まらない。
 涙と鼻水と涎をまき散らしながら痛みに耐えていたが、身体を支える両手に力が入らなくり、吐瀉物に顔から突っ込んだ。
 もう何が何だか理解が出来無いまま、痛みが過ぎ去るのを待った。

 って言ってるけど、あの痛みが襲って来た時は、自分の状況なんてちゃんと分ってなかったと思う。
 後でサラの証言と自分の姿を客観的に見て、ああこうだったんだなって理解したって感じだ。

 吐瀉物に塗れ汚れと臭いで酷い事になっている俺を、サラは離れた所から青い顔でガタガタ震えながら見ていた。
 お~の~れ~! お前こうなるの分かってただろ! 
『ええ、でもここまでとは…取りあえず、きちゃないので近づかないでください』
 お~の~れ~! お~の~れ~! お~の~れ~! …確かに臭いし汚い…

 まあ仕方ねえ…とりま、寒いけどネス湖で身体を洗わなきゃ家に帰れんな…
 まだ少しズキズキと痛む頭を抱えて山を下りて、ネス湖で身体と服の酷い汚れを洗い落とし、濡れたままの服を着るのも嫌なので、変身して部屋にこっそりと戻った。
 部屋で変身を解くと、途端に体中を寒気が襲い、異様にガタガタと震えがきた。
 慌てて服を着こんでベットに潜りこんだが、布団が暖まるまで、暫く震えは止まらなかった。
 はあ、風邪ひかなきゃいいけど…
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