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国境の河

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 我が家の皆は、順調に真アーテリオス神聖国へと、空の旅を楽しんでいた。
 やっと家族だけで気楽なキャビンになったので、お菓子や飲み物を片手に、皆わいわいお喋りに夢中だ。
 ミレーラも、笑顔で積極的に真アーテリオス神聖国の事を話したりしている。
 うん、やっぱ里帰りは嬉しいんだな。

 ちょっと違うけど、俺も前世の子供の頃は、夏休みとかに田舎に行くの楽しみだったもんな。
『それ、大分違いますけど?』
 いいんだよ、雰囲気と気分の事なんだから。 
『まあ、分からなくもないですけど、私は里帰りは嫌ですね』
 ん? どうしてだ?
『私の‟製造元”は、輪廻転生局です。来る日も来る日もシステムの管理で、自由なんて無かったですからね。今が一番楽しいです』
 ん? サラって、製造されたの? 
『そうですよ? 輪廻転生局システム・管理用特殊AI搭載・人型情報通信端末、モデル≪SALA≫が正式名称です。言ってませんでしたか?』
 初耳だ…ってか、サラって名前じゃないのか?
『ええ、モデル名です。他にも人型情報端末は色々と居ますけど…言ってみれば、長門さんと朝倉さんみたいな違いです』
 おい、それは危険な話題だと何回言ったら…まあ、いい。
『だから、あんなクソ退屈な所には戻りたくありません。この世界でこのボディーを失うと、強制的にあの世界に引き戻されますので、全力で世界の危機に対処します!』
 あ~、なんかすっげー個人的な理由なんだな…それでも恐怖の大王に対処してくれるなら、ありがとう…なのかな。
『任せてください! それまでは、グータラしますけど!』
 いや、ちょっとは働けよ…

 あの真アーテリオス神聖国との戦争時に対峙した、河川が見える所までやってきました。
 本日は、この付近で停泊しますよ~。
 うん、神聖国側が騒がしくなってきたね。
 ホワイト・オルター号が見えたんだろうなあ…あ、騎士団かな? こっちに向かって来てるな。
 あ~めっちゃ怪しまれてるな。
 ねえねえ、ミレーラ。ちょっと正装に着替えて来てくれる? 俺も着替えるんで。
 ちょっと神聖国の皆さんに挨拶をしておこうと思うんだよ。
「トールさま…みなさん殺気立ってますけど…大丈夫ですか?」
「ネス様か俺の許可なくこの船には近づけないから、結界越しに挨拶だけでもしておこう。大丈夫、誰にもミレーラを傷付けさせやしないから」
「ぽっ…♥」
 ミレーラが真っ赤な顔して走り去ってしまった…まあ、ちょっと格好つけすぎなセリフだったかな。
 さて、着替えましょうか。

 ゆっくりと騎士さん達が集まっている、河川に架かる橋の近くにある広場に無理やり着陸させ、シールドを張ったままゴンドラからタラップをミレーラと2人で降りた。
 ホワイト・オルター号を取り囲むように展開していた彼等の前に、俺とミレーラが姿を現すと、神聖国の騎士達の間に大きなどよめきが走った。
 俺達を知ってる人が居たのかな?
「ミレーラ! トールヴァルド殿!」
 んあ? 誰だろ? でっかい騎士が近づいて来たが…
「べダム兄様!」
 おう!? こんなでっかい声でミレーラが叫んだのは初めてじゃないか?
 ってか、べダムさんか! 一応、この国の首長だったよな。 安全性が担保されてないこんな場所に出て来ていいのか? ま、挨拶挨拶。
「べダム様、ご無沙汰しております。グーダイド王国子爵、トールヴァルド・デ・アルテアンです。此度は、ネス様より使徒としての使命を果たすため賜った、このホワイト・オルター号のお披露目と、ミレーラのご両親にご挨拶をと思いやって参りました。先触れを出さず、神聖国へと至るは無礼であろうと考え、ここで一泊した後、改めて先触れを出そうと考えていましたが…」
 相手に考える暇を与えずに、一気に言い切るのが吉。
「どうやら、神聖国側からもこのホワイト・オルター号が見えていた御様子。お騒がせした様で、申し訳ありません」
 べダムさんが騎士達に下がる様に指示をしながら、数歩こちらに歩み寄ってきた。
「トールヴァルド子爵…いえ、使徒殿。遠きところ良くいらっしゃいました。そしてミレーラ、久しぶりだな。元気そうで何よりだ。此度は、この空飛ぶ船のお披露目との事ですが…」
 うん、こんな巨大な乗り物ってこの世界には無いから、そりゃ驚くしビビるよね。
「明日ですが、太陽神様と月神様も揃って、お姿を顕形し給われる事になると思います。また、ネス様のご意向により、太陽神様が今後この国へと度々お姿を顕形すると思われますので、その説明に伺ったのが目的の一つ。そして、たった一人で私の元に輿入れして来たミレーラの里帰りとご両親へのご挨拶を兼ねた訪問がの二つ目の目的ですね」

 やはり、他国に姫巫女をたった一人で残して来てしまった事には、色々と思う事もあったのだろう。
 べダムさんだけでなく、背後に控える数名の騎士の目には、うっすらと涙が滲んでいた。
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