システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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番外編:子爵様とお話

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 とりあえず、昨日顔合わせは済んでいるんだけど、一応自己紹介をした。
 ちゃんとここに来るまでの経過もお話した。ほとんど、僕一人で。
 柚夏は横で黙ってうんうん首を振ってるだけだった。

 子爵様曰く、転生も転移も、どちらも通常は元の世界では死んでから魂だけが世界を渡るらしい。
 その魂が相性の良い身体に乗り移って(?)、その身体を支配して新しい世界での生活が始まる。
 転生の場合は全く新しい肉体となり、転移の場合はその世界に現に生きている人の身体を乗っ取る様な形になるんだって。
 乗っ取った身体は、前世の魂の情報によって書き換えられて、元の世界の身体に近い物になるらしい。
 どちらの場合も、前世の記憶はほとんどの場合、消えてしまうんだって。

 僕たちのように、元の世界の肉体と魂のまま、次元の御壁を越えて来るケースは、本当に稀なんだそうだ。
 ラノベやアニメで見るような、世界の武力バランスを一変させるような非常識なチートを貰っての転移とか転生っていうのは、あり得ない事だとも教えてもらった。
 あと、ゲームみたい魔物を倒してレベルアップとかも無いんだって。
 ここまで聞いた時の柚夏の落ち込みは激しかった。目に光が無かったよ。
 でも魔法はあるらしい。千人に一人ぐらいしか使えないらしいけど。
 魔法と聞いて柚夏の目に、一瞬光が戻ったんだけど、千分の一と聞いてまた目が死んだ。
 そういえば、この世界に来てから魔法なんて欠片も見た事も聞いた事も無かったもんなあ。

「サラ、2人のエネルギーは?」
「ユズキさんもユズカさんも、十分にエネルギー総量は多いですね。さすがはサブカルの楽園出身者! マニアのシャングリラ ! ニートのヘブン! ヲタクの約束の地 ! コミケはもはや極楽浄土!」
 なんか…めちゃくちゃ清楚で知的なメイドさんにだと思ってた、サラさんのイメージが…ガラガラと音を立てて崩れてゆく…
「特にユズカさん!」
 ビシッ!と柚夏を指さしたサラさんは、
「あなたには素質があります! 魔法少女となれる素質が!」
 途端に、柚夏の目がキラキラと輝きだした!
「厳しくも辛い訓練が待ってます。あなたはそれに耐え、乗り越えて、プリティーでキュアな魔法少女を目指す気はありますか?」
「はい! 私はなってみせます! プリティーでキュアな魔法少女に!」
 なんか…サラさんと柚夏のテンションが変……
「はっはっはっは! まあ、彼女はそれでいいとして、柚希君はどうしたい? 君も使えると思うよ、魔法」
 子爵様の言葉に、僕はもちろん即座に頷く。
「はい、使いたいです!」
 ニッコリ笑った子爵様は、話を続けた。
「うん、近い将来なんだけどさ。この世界に危機が訪れるんだよ。戦力は多いにこしたことは無いからね」
 僕…はやまったかも…地雷ふんじゃったかも…

 子爵様の前世の話とか、サラさんの輪廻転生システムとかの難しい話も一応聞いた。
 近いうちにこの世界にやってくるという、恐怖の大王の話も。
「今日…麩の味噌汁…」
 柚夏が馬鹿なこと言ってたけど、無視して真剣に聞いた。
 そして最後に子爵様は、恐怖の大王襲来予言以上のメガトン級の爆弾を僕たちに落とした。
「俺の婚約者の姫巫女ミレーラも、元は日本人だよ。まあ記憶はないけどさ」
 あ、言われてみれば、確かに日本人顔だ。アイドル級の可愛さだけど…でも柚夏も負けてない…うん。
「出来れば、将来は結婚して俺の領地と屋敷の管理をして欲しい」
 へ? 僕と柚夏は顔を見合わせた…こいつ口開けて固まってやがる。
「もう君達、結婚しちゃいなYO! この世界は15歳で結婚できるから。日本には帰れないんだし、この世界で生きていくんなら、どの道いつかは家庭を築く事になるんだよ? それに2人は付き合ってるんでしょ? もうしちゃえしちゃえ!」
 は? もう一度、柚夏を見た…あ、よだれ垂れてる。
「今さ、俺の領地で地球式の結婚式場造ってるんだよ。チャペルだね。そこで結婚しちゃって! うん、ブライダルビジネスのテストと宣伝にもなるし、ちょうどいいや! でも、うちの婚約者~ずが一番が良いとか言いだすかな? それなら俺達の次でもいいや! うん、俺達が領地に帰る時に、連れて行くからね。準備しといてね」
 子爵様は一頻り話すと、ズズズズ…とお茶をすすった。それ、緑茶じゃないですけど…。
「あ、そうそう…」
 子爵は、茶器をテーブルにおいて、前のめりになって僕たちに顔を近づけて、 
「2人共、日本の事は内緒だよ?」
 今更ながら、小声でそんな事を言った。

 
 それからドタバタと色々と準備して、僕と柚夏は子爵様の御屋敷に行く事になった。
 ドワーフとかエルフとか人魚とか妖精さんや精霊さんもいるんだって。
 柚夏のテンションが終始変だった。
 子爵様の開発した蒸気自動車で6日も掛け、到着した子爵領は…もうそれはそれは美しい領だった。
 僕たちはここで生活するんだなあ。この美しい景色と柚夏を護るために、これからもっと頑張ろう!

「それで、いつ結婚してくれるの?」
 それは、鋭意検討中と申しますか…前向きに議論を重ねておりまして、近いうちに回答をさせて頂きたく…
「この……ヘタレーー!」
 美しいネス湖の湖畔に、柚夏の声が響いた。

 そんな事より、まずは恐怖の大王との戦いだろ?絶対に負けられないんだから! 勝たなきゃ!
 だから、こうやって毎日トールヴァルド子爵と僕と柚夏は訓練してるんじゃないか。
 魔法に剣に格闘技に、死ぬほどつらい筋トレにと、日本では考えられないぐらい、僕たちは頑張ってる。
 頑張って頑張って、頑張ったら…ヘタレも治るかなあ…。

「もう、柚希はヘタレでもいいよ! 私が強引にリードするから!」
 柚夏はそういうと、訓練で汗ばんだ顔を近づけ…ちゅっ…!?
 首筋から耳まで真っ赤な顔をした柚夏は、どや! っと僕を見つめた。
 こうして僕のファーストキスは、柚夏に奪われました。

 この先、僕たちがどうなるのか、どうなっていくのかは、また次の機会があれば、お話したいと思う。その機会の為にも色々と頑張らなきゃね。
 では、また会う日まで!
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