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番外編:呆然自失の2人
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まさか、ここが異世界? 僕の思考は、ちょっと迷走中。
「柚希! 異世界転移だよ! チート無双キタコレ!」
お馬鹿な幼馴染は、つないだ手をブンブン振り回して興奮してるけど、頼むからちょっと落ち着いて。
「あのさ…もしも異世界転移が間違いなかったとして、この後僕たちはどうなるの?」
僕の質問に、お馬鹿な幼馴染は、
「冒険者ギルドで登録がテンプレだけど…あれ? 私達チートは?」
やっと気づいたか。
「柚夏は、神様とかに会った?」
「会ってない…」
「何か特別な力ある様に感じる?」
「感じない…」
「それで、どんな無双するの?」
「……」
あ、何か柚夏が泣きそう…
「柚希…どうしよ…」
チートねえ。何故か周囲のどう見ても外人さんの言葉が分かるだけでも、十分にチートだと思うけど。
何となくポケットを漁ってみた。出てきたのは、スマホと財布。
まあ、柚夏の持ってるトートバッグの中身だって、似た様なもんだろう。
現状の自分を俯瞰して、やけに冷静な自分がいる事に驚くという、妙な感覚。
僕はまあ男だから野宿でもいい…いや、何のサバイバル術も持たない現代っ子に野宿が出来るのか?
せいぜい、学校で行った自然学校のキャンプしか経験ないぞ? あ、あれは野宿とは言わないか。
あの時のカレーって美味かったよなあ。うん、思い出した。飯も食えないじゃん、僕たち金ないし!
僕をうるうるした目で見つめる柚夏だけは、何とか安全な宿泊施設に放り込みたい。実は、結構かわいいんだよ。野宿なんかしてたら、絶対に襲われる。
僕が助けるとか言いたいけど、僕ははっきりいって非力だから、護りきれる自信が無い。だって、歩いてる人の体格が、みんなプロレスラー? ってぐらいの人ばっかだぞ! 勝てるわけ無いじゃん!
柚夏じゃないけど、チートでも無けりゃ、こんな世界で生き抜く自身ないよ……
2人は手を繋いだまま、次の行動に移せず、ただぼ~っとしてた。
「…ちょっと…ち、…か…?」
時間が解決してくれる問題でもないのに、無為に時間を使ってしまった。
「…てる…どう…い? …だい…?」
もう、太陽がかなり傾いてる。つまり夜が近いって事だ。
「…か…の…だれか…えいへ…れよ!」
どうしよ……
「あんたたち、大丈夫かい!? 聞こえてるの? 言葉通じないのかい?」
ん?
「あんた達だよ! そこで手を繋いでぼ~っとしてる黒い髪の子!」
僕たちの事? 柚夏も頭にクエスチョンマークをくっ付けてる。
「えっと…僕たちの事でしょうか?」
声の方を向くと、大体20年前ぐらいは、お姉さんと呼んでもおかしくなかっただろう、ちょっとふくよかな女性が居た。
早い話が、太ったおばさんだ。
「そうだよ! あんた達、昼過ぎからずっとそこで突っ立ってるけど、何かあったのかい?」
気の良さそうな、赤毛のおばちゃんは、コッチャコイコイと手招きをしてた。
頼る人もいない現状で、優しい言葉を掛けてくれたからだろうか、ついつい2人ともおばちゃんの元へ歩を進めていた。
これが吊り橋効果って言うんだっけ? 違う様な…まあ、いいや。
「いえ、僕たち2人共、遠くからいきなり連れてこられて、ここに放り出されて、どうしたらいいのか…」
「何だい!? 人さらいにでも遭ったのかい! すぐに衛兵に届けなきゃ!」
すぐに衛兵? に通報しそうなおばさんを引き留めつつ、
「いえ、違うんです。どうやってここまで連れてこられたのかも分からないんです。でも人さらいじゃないと思います」
神様にさらわれたのかも知れないけど、それは言わない方が良いだろうな。
「そうなのかい? それで2人は行くあてとかあるのかい? 王都に知り合いは?」
めちゃくちゃ心配してくれてる…
「いえ、全く行くあてなんて無いです。これからどうやって生きて行けば良いのか分からず、呆然としてました」
うん、嘘は言ってないと思う。
「う~~~~~ん…ちょっと待ってな!」
そう言っておばさんは、目の前の建物の中に入って行った。
建物の入り口の上には、【NOTTO NO MISE】と、看板らしきものがあった。
「柚希…どうしよう…私、どうしよう…」
柚夏は、ただいま絶賛錯乱中。
「どうしようねえ…」
僕だって、こんな時の対処マニュアルんなんて持ってないんだから、分かるはずない。
そもそも、アニメや漫画に詳しい柚夏の方が、異世界に関する知識は多いはずなんだが。
とは言っても、所詮は異世界を知らない人間が書いた本だもんな。
実際に体験しないで書いたんだもん、こんな事態に遭遇した時の有効な手だてなんてある訳ないか。
そんな、この事態を何一つ好転させる手段も思いつかないまま、僕はただ柚夏の手を強く握っていた。
決して離さない様に。
すると、ドタドタと足音が聞こえて来たかと思うと、バーン! と勢い良く建物の扉が開いて、おばさんが飛び出して来た。
「あんたら、行くあてが無いんだろ! 部屋片付けてきたから、うちに泊まんな!」
この瞬間、僕にはこのおばさんが女神に見えた……気がしただけだった。
「柚希! 異世界転移だよ! チート無双キタコレ!」
お馬鹿な幼馴染は、つないだ手をブンブン振り回して興奮してるけど、頼むからちょっと落ち着いて。
「あのさ…もしも異世界転移が間違いなかったとして、この後僕たちはどうなるの?」
僕の質問に、お馬鹿な幼馴染は、
「冒険者ギルドで登録がテンプレだけど…あれ? 私達チートは?」
やっと気づいたか。
「柚夏は、神様とかに会った?」
「会ってない…」
「何か特別な力ある様に感じる?」
「感じない…」
「それで、どんな無双するの?」
「……」
あ、何か柚夏が泣きそう…
「柚希…どうしよ…」
チートねえ。何故か周囲のどう見ても外人さんの言葉が分かるだけでも、十分にチートだと思うけど。
何となくポケットを漁ってみた。出てきたのは、スマホと財布。
まあ、柚夏の持ってるトートバッグの中身だって、似た様なもんだろう。
現状の自分を俯瞰して、やけに冷静な自分がいる事に驚くという、妙な感覚。
僕はまあ男だから野宿でもいい…いや、何のサバイバル術も持たない現代っ子に野宿が出来るのか?
せいぜい、学校で行った自然学校のキャンプしか経験ないぞ? あ、あれは野宿とは言わないか。
あの時のカレーって美味かったよなあ。うん、思い出した。飯も食えないじゃん、僕たち金ないし!
僕をうるうるした目で見つめる柚夏だけは、何とか安全な宿泊施設に放り込みたい。実は、結構かわいいんだよ。野宿なんかしてたら、絶対に襲われる。
僕が助けるとか言いたいけど、僕ははっきりいって非力だから、護りきれる自信が無い。だって、歩いてる人の体格が、みんなプロレスラー? ってぐらいの人ばっかだぞ! 勝てるわけ無いじゃん!
柚夏じゃないけど、チートでも無けりゃ、こんな世界で生き抜く自身ないよ……
2人は手を繋いだまま、次の行動に移せず、ただぼ~っとしてた。
「…ちょっと…ち、…か…?」
時間が解決してくれる問題でもないのに、無為に時間を使ってしまった。
「…てる…どう…い? …だい…?」
もう、太陽がかなり傾いてる。つまり夜が近いって事だ。
「…か…の…だれか…えいへ…れよ!」
どうしよ……
「あんたたち、大丈夫かい!? 聞こえてるの? 言葉通じないのかい?」
ん?
「あんた達だよ! そこで手を繋いでぼ~っとしてる黒い髪の子!」
僕たちの事? 柚夏も頭にクエスチョンマークをくっ付けてる。
「えっと…僕たちの事でしょうか?」
声の方を向くと、大体20年前ぐらいは、お姉さんと呼んでもおかしくなかっただろう、ちょっとふくよかな女性が居た。
早い話が、太ったおばさんだ。
「そうだよ! あんた達、昼過ぎからずっとそこで突っ立ってるけど、何かあったのかい?」
気の良さそうな、赤毛のおばちゃんは、コッチャコイコイと手招きをしてた。
頼る人もいない現状で、優しい言葉を掛けてくれたからだろうか、ついつい2人ともおばちゃんの元へ歩を進めていた。
これが吊り橋効果って言うんだっけ? 違う様な…まあ、いいや。
「いえ、僕たち2人共、遠くからいきなり連れてこられて、ここに放り出されて、どうしたらいいのか…」
「何だい!? 人さらいにでも遭ったのかい! すぐに衛兵に届けなきゃ!」
すぐに衛兵? に通報しそうなおばさんを引き留めつつ、
「いえ、違うんです。どうやってここまで連れてこられたのかも分からないんです。でも人さらいじゃないと思います」
神様にさらわれたのかも知れないけど、それは言わない方が良いだろうな。
「そうなのかい? それで2人は行くあてとかあるのかい? 王都に知り合いは?」
めちゃくちゃ心配してくれてる…
「いえ、全く行くあてなんて無いです。これからどうやって生きて行けば良いのか分からず、呆然としてました」
うん、嘘は言ってないと思う。
「う~~~~~ん…ちょっと待ってな!」
そう言っておばさんは、目の前の建物の中に入って行った。
建物の入り口の上には、【NOTTO NO MISE】と、看板らしきものがあった。
「柚希…どうしよう…私、どうしよう…」
柚夏は、ただいま絶賛錯乱中。
「どうしようねえ…」
僕だって、こんな時の対処マニュアルんなんて持ってないんだから、分かるはずない。
そもそも、アニメや漫画に詳しい柚夏の方が、異世界に関する知識は多いはずなんだが。
とは言っても、所詮は異世界を知らない人間が書いた本だもんな。
実際に体験しないで書いたんだもん、こんな事態に遭遇した時の有効な手だてなんてある訳ないか。
そんな、この事態を何一つ好転させる手段も思いつかないまま、僕はただ柚夏の手を強く握っていた。
決して離さない様に。
すると、ドタドタと足音が聞こえて来たかと思うと、バーン! と勢い良く建物の扉が開いて、おばさんが飛び出して来た。
「あんたら、行くあてが無いんだろ! 部屋片付けてきたから、うちに泊まんな!」
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