システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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お前、死にたいのか?

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 約1か月ぶりに俺のこの世界での故郷、懐かしのアルテアン領に戻って来た。
 父さん直属の兵士さんが俺達の乗った馬車を先導して、ゆっくり街の中を進む。
 改めて見ると、120人程しか居なかったあの小さな村が、よくここまで発展したと感慨深い物がある。
 
 父さんの屋敷のあるこの街は、アルテアン領中心街と呼ばれている。
 実は俺の領地もそうなんだが、まだ街や村に名前を付けていない。
 あまりにも急激に発展してしまったので、村のつもりが気が付くと街レベルになったりしてしまって、落ち着かないからだ。
 もう少ししたら、ちゃんと名前を付けたり区分けしたりしようと思っている。
 俺の領地ももう少し落ち着いたら、街や村に名前を付けたいと思ってる。
 出来れば父さんの領地も同じ時期に名前を付けて、ちゃんと地図を作りたい。
 まあ、各村をブレンダーとクイーン一行と周ればすぐに出来るんだから、作っておいて損は無い。
 他の貴族や他国の手に地図が渡ると、軍事面では問題が有るから公には出来ないけどね。

 いや~やる事がまだまだあるなあ~!
『何を現実逃避してるんですか? 私とミルシェはヴァルナル様のお屋敷で待っているのですが?』
 なんでだよ! 俺の家で留守番してろよ!
『先触れの兵士の話を聞いたミルシェちゃんが、早く折檻……げふんげふん。お出迎え死体、お話を危機たい、トールヴァルド様を捩じ切りたいと言うので、ヴァルナル様のお屋敷まで出張ったのです。さっさとお屋敷に来てください』
 折檻ってはっきり言ったよな? 死体? 危機? 変な誤変換してるぞ!
 しかも、捩じ切りたいってのは、どう考えても誤変換じゃないだろ!
『あきらめなさい、すでに試合終了です』
 違うだろ! 安西〇生は、あきらめたら試合終了だよって言ったと思うんだ!
『お前はもう死○でいる』
 ケーーーーーン!

 ▲

 ええ、何を言おうと足掻こうと、父さんの屋敷前に着いてしまいました。
 ちゃんと数日前から先触れを出したりしてたんで、皆さん屋敷の前にお揃いで出迎えてくれてます。

「皆の者! 此度の遠征、誠にご苦労であった。こやって全員無事に帰還出来たのは、聖なる女神ネス様のご加護のおかげであると、私は考えておる。王城にて皆にも幾何かの金子を賜ったと思うが、後程従軍してくれた皆には、私からも十分な手当てを出したいと思う。しかし本日は、まず皆を心配している家族や恋人、友に顔を見せに帰ってやって欲しい。そして身体をしっかりと休めるが良い。3日後の昼に、各隊の隊長は屋敷に来るように。では解散!」
 父さんが解散を告げると、皆嬉しそうに散っていった。

 ここからは家族の時間です……。
「あなた、トールちゃん、お疲れさまでした」「お父さん、お兄ちゃん、お帰りなさい!」
 もちろん出迎えの中心は、母さんと、地上に舞い降りた最愛の我が妹コルネちゃん!
「ああ、ただいま。今回はトールが全て終わらせてしまったから、ただ旅してただけだがな。わっはっは!」
「お母さん、コルネリア、ただいま」
 うん……ここまではいい、ここまでは。
「ウルリーカ、紹介しておこう。このたびトールヴァルドと婚約を結んだグーダイド王国第四王女のメリル・ラ・グーダイド様だ」
 俺の後ろにひっそりと控えていたメリル王女が、すっと前に出て
「アルテアン伯爵夫人、コルネリア嬢。このたびトールヴァルド卿と婚約をさせて頂きましたメリル・ラ・グーダイドと申します。将来は義理とはいえ親子となるのですから、メリルと気軽にお呼びくださいませ」
 そう言って母さんにお辞儀をした。
 もちろん母さんもコルネちゃんもちょっと驚いた様だが、すぐに自己紹介をした後、
「ここは王都と比べて何もない田舎です。トールちゃんの領地はさらに山向こうの大森林の中。煌びやかで豪華な晩餐会も無ければ舞踏会もありません。貴族と言えども泥にまみれ働かなくてはなりません。王城暮らしのお姫様にその様な生活、耐える事が出来ますか?」
 さすが片田舎で父さんを支え続けて来た母さん。
 鋭い視線で王女様を見つめながら覚悟を聞きにきた。
「もちろんでございます。私は贅を尽くした王都の生活よりも、トールヴァルド様と共に生きる事を望みます。トールヴァルド様と共に居られるのであれば、例え風餐露宿の生活であろうとも!」
 王女の答えを聞いた母さんは、ニッコリいつもの笑顔で王女様の手を取って、
「ようこそ将来の我が娘。さあ、コルネリア。あなたのお姉さんになる方ですよ」
 コルネちゃんと母さんがキャッキャしながら、王女様の手を取って屋敷に向かって行った。
「あ、あなた達も、中でゆっくり休んでくださいね」 
 俺と父さんはついでかよ……。
 
 屋敷に向かって歩きだそうとした俺と父さんの足が凍り付いた。
 出迎えた使用人の列からの、絶対零度の視線によって凍らされた。
 俺と父さんだけじゃない……周囲の使用人も、馬車をここまで曳いて来た馬でさえも、周囲の全てが凍り付いた。
 使用人の列の最前列に居る、小柄なミルシェちゃんからの凍てつく視線と可視化された不機嫌オーラで全員の精神は既にパンク寸前。
 屋敷前に居る全員、ガタガタと身体の芯から震えが来た。
 
「トール……ミルシェとも婚約するからな。グラルとはもう話が出来ている」
 ガタガタ震えながら父さんが俺に囁いた。
「い……いいの?」
「お……お前、死にたいのか?」
 ううん、死にたくない…
『トールヴァルド様……私もちびりそうです! 早く止めてください!』
 俺は、少しだけちびっちゃったよ……。
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