81 / 1,466
お前、死にたいのか?
しおりを挟む
約1か月ぶりに俺のこの世界での故郷、懐かしのアルテアン領に戻って来た。
父さん直属の兵士さんが俺達の乗った馬車を先導して、ゆっくり街の中を進む。
改めて見ると、120人程しか居なかったあの小さな村が、よくここまで発展したと感慨深い物がある。
父さんの屋敷のあるこの街は、アルテアン領中心街と呼ばれている。
実は俺の領地もそうなんだが、まだ街や村に名前を付けていない。
あまりにも急激に発展してしまったので、村のつもりが気が付くと街レベルになったりしてしまって、落ち着かないからだ。
もう少ししたら、ちゃんと名前を付けたり区分けしたりしようと思っている。
俺の領地ももう少し落ち着いたら、街や村に名前を付けたいと思ってる。
出来れば父さんの領地も同じ時期に名前を付けて、ちゃんと地図を作りたい。
まあ、各村をブレンダーとクイーン一行と周ればすぐに出来るんだから、作っておいて損は無い。
他の貴族や他国の手に地図が渡ると、軍事面では問題が有るから公には出来ないけどね。
いや~やる事がまだまだあるなあ~!
『何を現実逃避してるんですか? 私とミルシェはヴァルナル様のお屋敷で待っているのですが?』
なんでだよ! 俺の家で留守番してろよ!
『先触れの兵士の話を聞いたミルシェちゃんが、早く折檻……げふんげふん。お出迎え死体、お話を危機たい、トールヴァルド様を捩じ切りたいと言うので、ヴァルナル様のお屋敷まで出張ったのです。さっさとお屋敷に来てください』
折檻ってはっきり言ったよな? 死体? 危機? 変な誤変換してるぞ!
しかも、捩じ切りたいってのは、どう考えても誤変換じゃないだろ!
『あきらめなさい、すでに試合終了です』
違うだろ! 安西〇生は、あきらめたら試合終了だよって言ったと思うんだ!
『お前はもう死○でいる』
ケーーーーーン!
▲
ええ、何を言おうと足掻こうと、父さんの屋敷前に着いてしまいました。
ちゃんと数日前から先触れを出したりしてたんで、皆さん屋敷の前にお揃いで出迎えてくれてます。
「皆の者! 此度の遠征、誠にご苦労であった。こやって全員無事に帰還出来たのは、聖なる女神ネス様のご加護のおかげであると、私は考えておる。王城にて皆にも幾何かの金子を賜ったと思うが、後程従軍してくれた皆には、私からも十分な手当てを出したいと思う。しかし本日は、まず皆を心配している家族や恋人、友に顔を見せに帰ってやって欲しい。そして身体をしっかりと休めるが良い。3日後の昼に、各隊の隊長は屋敷に来るように。では解散!」
父さんが解散を告げると、皆嬉しそうに散っていった。
ここからは家族の時間です……。
「あなた、トールちゃん、お疲れさまでした」「お父さん、お兄ちゃん、お帰りなさい!」
もちろん出迎えの中心は、母さんと、地上に舞い降りた最愛の我が妹コルネちゃん!
「ああ、ただいま。今回はトールが全て終わらせてしまったから、ただ旅してただけだがな。わっはっは!」
「お母さん、コルネリア、ただいま」
うん……ここまではいい、ここまでは。
「ウルリーカ、紹介しておこう。このたびトールヴァルドと婚約を結んだグーダイド王国第四王女のメリル・ラ・グーダイド様だ」
俺の後ろにひっそりと控えていたメリル王女が、すっと前に出て
「アルテアン伯爵夫人、コルネリア嬢。このたびトールヴァルド卿と婚約をさせて頂きましたメリル・ラ・グーダイドと申します。将来は義理とはいえ親子となるのですから、メリルと気軽にお呼びくださいませ」
そう言って母さんにお辞儀をした。
もちろん母さんもコルネちゃんもちょっと驚いた様だが、すぐに自己紹介をした後、
「ここは王都と比べて何もない田舎です。トールちゃんの領地はさらに山向こうの大森林の中。煌びやかで豪華な晩餐会も無ければ舞踏会もありません。貴族と言えども泥にまみれ働かなくてはなりません。王城暮らしのお姫様にその様な生活、耐える事が出来ますか?」
さすが片田舎で父さんを支え続けて来た母さん。
鋭い視線で王女様を見つめながら覚悟を聞きにきた。
「もちろんでございます。私は贅を尽くした王都の生活よりも、トールヴァルド様と共に生きる事を望みます。トールヴァルド様と共に居られるのであれば、例え風餐露宿の生活であろうとも!」
王女の答えを聞いた母さんは、ニッコリいつもの笑顔で王女様の手を取って、
「ようこそ将来の我が娘。さあ、コルネリア。あなたのお姉さんになる方ですよ」
コルネちゃんと母さんがキャッキャしながら、王女様の手を取って屋敷に向かって行った。
「あ、あなた達も、中でゆっくり休んでくださいね」
俺と父さんはついでかよ……。
屋敷に向かって歩きだそうとした俺と父さんの足が凍り付いた。
出迎えた使用人の列からの、絶対零度の視線によって凍らされた。
俺と父さんだけじゃない……周囲の使用人も、馬車をここまで曳いて来た馬でさえも、周囲の全てが凍り付いた。
使用人の列の最前列に居る、小柄なミルシェちゃんからの凍てつく視線と可視化された不機嫌オーラで全員の精神は既にパンク寸前。
屋敷前に居る全員、ガタガタと身体の芯から震えが来た。
「トール……ミルシェとも婚約するからな。グラルとはもう話が出来ている」
ガタガタ震えながら父さんが俺に囁いた。
「い……いいの?」
「お……お前、死にたいのか?」
ううん、死にたくない…
『トールヴァルド様……私もちびりそうです! 早く止めてください!』
俺は、少しだけちびっちゃったよ……。
父さん直属の兵士さんが俺達の乗った馬車を先導して、ゆっくり街の中を進む。
改めて見ると、120人程しか居なかったあの小さな村が、よくここまで発展したと感慨深い物がある。
父さんの屋敷のあるこの街は、アルテアン領中心街と呼ばれている。
実は俺の領地もそうなんだが、まだ街や村に名前を付けていない。
あまりにも急激に発展してしまったので、村のつもりが気が付くと街レベルになったりしてしまって、落ち着かないからだ。
もう少ししたら、ちゃんと名前を付けたり区分けしたりしようと思っている。
俺の領地ももう少し落ち着いたら、街や村に名前を付けたいと思ってる。
出来れば父さんの領地も同じ時期に名前を付けて、ちゃんと地図を作りたい。
まあ、各村をブレンダーとクイーン一行と周ればすぐに出来るんだから、作っておいて損は無い。
他の貴族や他国の手に地図が渡ると、軍事面では問題が有るから公には出来ないけどね。
いや~やる事がまだまだあるなあ~!
『何を現実逃避してるんですか? 私とミルシェはヴァルナル様のお屋敷で待っているのですが?』
なんでだよ! 俺の家で留守番してろよ!
『先触れの兵士の話を聞いたミルシェちゃんが、早く折檻……げふんげふん。お出迎え死体、お話を危機たい、トールヴァルド様を捩じ切りたいと言うので、ヴァルナル様のお屋敷まで出張ったのです。さっさとお屋敷に来てください』
折檻ってはっきり言ったよな? 死体? 危機? 変な誤変換してるぞ!
しかも、捩じ切りたいってのは、どう考えても誤変換じゃないだろ!
『あきらめなさい、すでに試合終了です』
違うだろ! 安西〇生は、あきらめたら試合終了だよって言ったと思うんだ!
『お前はもう死○でいる』
ケーーーーーン!
▲
ええ、何を言おうと足掻こうと、父さんの屋敷前に着いてしまいました。
ちゃんと数日前から先触れを出したりしてたんで、皆さん屋敷の前にお揃いで出迎えてくれてます。
「皆の者! 此度の遠征、誠にご苦労であった。こやって全員無事に帰還出来たのは、聖なる女神ネス様のご加護のおかげであると、私は考えておる。王城にて皆にも幾何かの金子を賜ったと思うが、後程従軍してくれた皆には、私からも十分な手当てを出したいと思う。しかし本日は、まず皆を心配している家族や恋人、友に顔を見せに帰ってやって欲しい。そして身体をしっかりと休めるが良い。3日後の昼に、各隊の隊長は屋敷に来るように。では解散!」
父さんが解散を告げると、皆嬉しそうに散っていった。
ここからは家族の時間です……。
「あなた、トールちゃん、お疲れさまでした」「お父さん、お兄ちゃん、お帰りなさい!」
もちろん出迎えの中心は、母さんと、地上に舞い降りた最愛の我が妹コルネちゃん!
「ああ、ただいま。今回はトールが全て終わらせてしまったから、ただ旅してただけだがな。わっはっは!」
「お母さん、コルネリア、ただいま」
うん……ここまではいい、ここまでは。
「ウルリーカ、紹介しておこう。このたびトールヴァルドと婚約を結んだグーダイド王国第四王女のメリル・ラ・グーダイド様だ」
俺の後ろにひっそりと控えていたメリル王女が、すっと前に出て
「アルテアン伯爵夫人、コルネリア嬢。このたびトールヴァルド卿と婚約をさせて頂きましたメリル・ラ・グーダイドと申します。将来は義理とはいえ親子となるのですから、メリルと気軽にお呼びくださいませ」
そう言って母さんにお辞儀をした。
もちろん母さんもコルネちゃんもちょっと驚いた様だが、すぐに自己紹介をした後、
「ここは王都と比べて何もない田舎です。トールちゃんの領地はさらに山向こうの大森林の中。煌びやかで豪華な晩餐会も無ければ舞踏会もありません。貴族と言えども泥にまみれ働かなくてはなりません。王城暮らしのお姫様にその様な生活、耐える事が出来ますか?」
さすが片田舎で父さんを支え続けて来た母さん。
鋭い視線で王女様を見つめながら覚悟を聞きにきた。
「もちろんでございます。私は贅を尽くした王都の生活よりも、トールヴァルド様と共に生きる事を望みます。トールヴァルド様と共に居られるのであれば、例え風餐露宿の生活であろうとも!」
王女の答えを聞いた母さんは、ニッコリいつもの笑顔で王女様の手を取って、
「ようこそ将来の我が娘。さあ、コルネリア。あなたのお姉さんになる方ですよ」
コルネちゃんと母さんがキャッキャしながら、王女様の手を取って屋敷に向かって行った。
「あ、あなた達も、中でゆっくり休んでくださいね」
俺と父さんはついでかよ……。
屋敷に向かって歩きだそうとした俺と父さんの足が凍り付いた。
出迎えた使用人の列からの、絶対零度の視線によって凍らされた。
俺と父さんだけじゃない……周囲の使用人も、馬車をここまで曳いて来た馬でさえも、周囲の全てが凍り付いた。
使用人の列の最前列に居る、小柄なミルシェちゃんからの凍てつく視線と可視化された不機嫌オーラで全員の精神は既にパンク寸前。
屋敷前に居る全員、ガタガタと身体の芯から震えが来た。
「トール……ミルシェとも婚約するからな。グラルとはもう話が出来ている」
ガタガタ震えながら父さんが俺に囁いた。
「い……いいの?」
「お……お前、死にたいのか?」
ううん、死にたくない…
『トールヴァルド様……私もちびりそうです! 早く止めてください!』
俺は、少しだけちびっちゃったよ……。
42
お気に入りに追加
1,833
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?
後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。
目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。
日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。
そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。
さて、新しい人生はどんな人生になるのかな?
※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします!
◇◇◇◇◇◇◇◇
お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。
執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇
9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます!
9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~
はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま)
神々がくじ引きで決めた転生者。
「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」
って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう…
まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる