システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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激甘ゲロゲロです!

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 アルテアン領から同行していた兵士さん300名と、アルテアン領に向かう冒険者と共に、のんびり領へと帰る事になった。
 参加してくれた兵士さんや冒険者さんは、誰も怪我ひとつせずそこそこの報奨金を手にする事が出来て上機嫌。

 そして……もちろんメリル王女様も一緒だ。
 俺と父さんが馬やブレンダーに乗って戦地に向かっていた事を聞いた国王様は、めちゃ豪華な箱馬車を俺にくれた。
 詰めれば10人以上乗れるんじゃね? そりゃ王女様を馬に乗せたりは出来ないよな……。
 御者を勤めるのは、なぜかメイドさん? メイド服に所々装甲がくっ付いているし、腰には細身の剣を差してるけど……メイドさん?
 俺がメイドさんを不思議そうな顔で見ていると、メリル王女様がメイド兼護衛騎士だと教えてくれた。
 日本だと女子高生ぐらいに見えるメイドさんは、ちょっと胸のボリュームが足りない感じだからか、父さんは興味を示さなかった。
 マジであんた巨乳好きだな。
 
 俺と父さん、そしてメリル王女が馬車に乗り込み、王都を出発し一路アルテアン領を目指して約2週間の旅。
 ブレンダーとクイーンとファクトリーも馬車に乗せている。
 王女様は俺の使い魔をいたく気に入り、ずっともふもふなでなでしている……俺の横にくっついて。
 俺なんかのどこが良いんだろうなあ……前世では仕事ばっかで嫁に愛想をつかされ離婚した男なのに。
 やっぱネスの使徒ってのが大きいのかなあ。
 太陽神の姫巫女ってのも、ネスの使徒との縁を求めてくるらしいけど、こっちは人質みたいなもんだろうし。
 将来の嫁は、ミルシェちゃんだけで良かったんだけど……どうしてこうなった?
 あ~……ネスをでっちあげて使徒なんて演じたから、俺の自爆ってことか。

 はあ。俺は、ただ真実の愛が欲しいだけなんだよ。
 お気楽でのんびりした生活と、幸せな家族との人生を送りたいだけなんだよ。
 ふとついたため息に王女が反応した。
「どうかされましたか、トールヴァルド様?」
 心配そうな顔で俺を覗き込んで見てるけど、
「いえ……殿下は私がネス様の使徒だから婚約をお受けになられたのですか?」
 ふと疑問に思った事を尋ねたら、急に怒りだした。
「トールヴァルド様が使徒様であるとか、全然関係ありません! そもそも最初にお見かけした時は、トールヴァルド様が使徒様である事は知りませんでした! ですが謁見でのあの堂々とした立ち居振る舞い、凛々しいお顔立ち、そしてあの近衛の副団長との戦い、全てが素敵でした。私はあの時からあなた様の事をお慕いしていましたというのに……」
 最初は怒ってたのに、だんだんと声が震えて出して……やばい! 王女様泣きそう!
「いえ、そうですよね。ネス様と出会ったのは、私も昨年の事でした……申し訳ありません……」
 じ~っと俺の顔を見ていた王女様は、また急にプンプンとオコになった。
「許しません!」
 えーーー! 不敬ですか? 死罪ですか!?
「ど、どうしたら許して頂けるのでしょうか……」
「メリルと呼んでください。婚約者なのですから、殿下とか王女様とか仰々しいのは嫌です! 呼んでくれなければ許しません!」
 あう……ハードル高いよ……ミルシェちゃんだって、まだちゃん付けなのに……。
「呼び捨てはさすがに……メリル様では?」「駄目です!」
 ダメなの?
「メリルさん……」「許しません!」
 あうあう……。
「メリル……」「はい! トールヴァルド様!」
 ものすごく良い笑顔でニッコリ笑った。
 もしかして今までの全部演技? まさか全てが計算だったのか!?
「あの、公的な場では殿下と呼ぶことをお許しください。他の貴族などの耳に入ると、何かと問題になると思いますので……」
 成り上がり者が王女と結婚とか、絶対に内心苦々しく思ってるのが居るはずだからな。
「そうですね……それは仕方がありませんね。でも婚儀を挙げたら、殿下はなしですよ?」
 まあ嫁さんにそんな呼び方する奴も居ないし、それはそうか。
「では、メリルも私の事はトールヴァルドと呼び捨てか、トールと呼んでください」
「殿方を呼び捨てなど、淑女にあるまじき行為です。はしたないので出来ません。」
 あ~この世界ってそうなのかな?
「でも……それでは、トール様と……お呼びして良いですか?」
 淑女としての妥協点がそこなんだろうな。
 上目遣いで恥ずかしそうに俺を呼ぶ王女様……クソ! これも計算なのか!?
「ええ、それで構いません、メリル」
「はい、トール様!」
 もう、計算でもいい……。
 
 よく考えたらこの馬車には父さんとブレンダーとクイーン&ファクトリーが乗ってるんだった。
 馬車内は、ガタゴトという音しかしない。
 いつの間にか車内と御者席を隔ててる壁にある小窓を開けて、御者のメイド騎士さんが聞き耳立てる気がする。
 全員が無言なのは……もしや聞いてた? 全部聞いてた?
 おい、ブレンダー! 何で体中をガシガシ掻いてんだよ! 痒いのかよ!
 クイーン! 蜂たちと何をコソコソ話してんだ! チラチラこっち見んな!
 メイド騎士さん! 何だその慈愛に満ちた微笑みは! 私は聞いてませんよ? 嘘つけ!
 父さん、なんだその呆れた表情は! え、激甘で砂糖吐きそう? 吐いてみろ!
 くそ!やっぱお前ら全員、全部聞いてたんじゃねーか!

『無論、私も聞いておりました。すでにバカップルですね。激甘ゲロゲロです!』
 あう……。
『人前で、あ~ん! するのと同じレベルで、激甘です!』
 あうあう……。
『よく居ますよね、人前でも構わずチュッチュするバカップル!』
 あうあうあう……。
『トール様。何だい? 呼んだだけ~♥ とか言いそうですね、このバカップル!』
 あうあうあうあう……。
『帰ったら、楽しい楽しいミルシェちゃんの折檻が待ってますからね!』
 ぁぅぁぅぁぅぁぅぁぅぁぅぁぅぁぅぁぅ…………。

 俺達一行とニコニコした王女様を乗せた馬車は、ガタゴトと街道をアルテアン領に向かってゆっくり進んで行った。
 旅は、超順調……兵士300人もいるもんね……そりゃ何事も起こらないわ。
 ちらちらと見覚えのある景色が車窓を通り過ぎていく。

 あと数日でアルテアン領……家に帰りたくない。
『それなら、なんで婚約をはっきり断らなかったんですか?』
 ええかげんな奴じゃけ、ほっといてくれんさい……。
『吉○拓郎なんて、すでに若い世代は理解不能なネタですよ』
 ほっといてくれんさい……。
 どうせ俺にはミルシェちゃんの、記憶が飛ぶほどの折檻が待ってるんだ……。 
『隠密同〇 心得○條! 死して〇、拾う者なし。○して屍、拾う者なし!』
 俺は隠密の同心かよ……。ってか、そうか俺は死ぬのか……。
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