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2 初夜なんて甘いもんじゃない

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 日曜日。和泉をラブホテルに呼び出した。雑居ビルのような古びた建物だ。受付の婆さんは目が悪いのか、高校生二人でも引き留められることなくすんなり入れた。
 
「んじゃまァ、早速しゃぶってもらおうかね」
 
 ベッドに腰掛けて命令する。和泉は眉一つ動かさず俺の足元に膝をついて、勃起したペニスを咥えた。
 
「ッ……ははァ、結構うまいじゃねぇの。沢井先生にもこうやってしてあげてんの?」
 
 煽っても反応はない。
 
「なァ……先生のと比べてどうだ? 俺のもなかなか立派だろ? 自分じゃ結構気に入ってるんだぜ。カリの高さがあるだろ? 形もいいし、悪くないよな? 味はどうだ?」
「ん……ごちゃごちゃうるせぇな。くっせぇチンポしやがって」
「なっ……ンだと!?」
「本当のことだろうが。昨日風呂入ったか? 洗い方知らねぇんだろ。哀れな野郎だ」
 
 和泉は俯いていた顔を持ち上げ、こっちを見上げた。挑発的な目だ。しかもうっすら笑ってもいる。沸騰するような怒りが瞬間的に込み上げる。俺は和泉の髪を乱暴に引っ掴んで、頭を上下に激しく揺さぶった。所謂イラマチオというやつだ。狭い喉を強引にこじ開けて、射精した。
 
「う゛ッ……はァ、全部飲めよ。吐いたらもっと酷くするからな」
 
 数日溜めた濃い精液をぶち撒ける。逃げないように和泉の頭を押さえ込んだが、和泉は暴れる様子もなく静かに喉を鳴らして嚥下した。自ら口を開けて、何も残っていないという証拠を見せつける。
 
「ほらよ……これで満足か」
 
 唇が切れて鮮血が滲んでいた。叩き付けた時に切れたのだろう。
 
「味はどうだ? 若いザーメンはうめぇだろ」
「……んなこと聞いて楽しいのかよ」
「うまかったんだろ? わかるぜ。うまそうにしゃぶってたもんなァ」
 
 和泉にも服を脱がせ、俺はベッドに仰向けになる。
 
「乗れよ」
 
 和泉が俺の上に跨る。尻にローションを塗りたくって勃起した陰茎を受け入れようとするが、これがなかなか滑らかには入らない。俺の硬さが足りないわけではない。単にこいつが下手なのだ。
 
「おい、もたもたしてんじゃねぇよ。さっさとしろ」
「やってんだろうが……」
「今更やっぱやだなんて通用しねぇからな」
「んなこと、言うわけねぇだろ」
「だったらなんで入らねぇんだよ。どうせ使い古しの、ガバガバケツマ×コのくせに!」
 
 俺は和泉の腰を掴み、勢いよく落とした。無理やり挿入したのだ。ぶちっ、と何かが切れるような音がした。激痛に和泉は顔を歪ませ、ギリギリと歯を食い縛る。しかし悲鳴一つ漏らさない。
 
「んだよ、全然入るじゃねぇか。やっぱりお前、本当は挿れたくなくて時間稼ぎしてたんだろ。ずりぃ野郎だ」
「んなこと……してねぇ……」
「だったら行動で証明してみせろ」
 
 和泉は眉間に皺を寄せ、はしたなく大股を開く。繋がっているところが丸見えになる。それからゆっくり腰を浮かし、落とす。もう一度、腰を浮かして落とす。だんだんストロークが速くなる。肉棒が出たり入ったりする様がよく見える。和泉の尻からは鮮血が流れ、俺のモノまでが赤く染まる。
 
「お前、慣れてるな。沢井先生も、よく騎乗位させてくんのか? はァ……すっげぇいい眺めだぜ」
 
 中古だなんてとんでもない。実に締まりのいい名器だ。挿れただけで持っていかれる。搾り取られる。こんなものを、沢井は今まで独占していたのか。
 
「なァ……先生のより、気持ちいいだろ? 俺の方が絶対硬いぜ。なァ、気持ちいいって言えよ、なァ」
「……うるせぇぞ」
「いいのかなァ、そんな口利いて」
 
 力なくだらりと垂れ下がり、腰を振る度に上下に揺れて、腹に当たってはぺちぺち間抜けな音を立てていた、和泉のペニスを指さす。
 
「それ、自分でしろよ」
「あぁ?」
けつ掘られながらセンズリこいてるとこ見せろっつってんだよ」
 
 和泉は仏頂面のまま手を前にやり、何の反応も示していないそれを握る。しかしいくら揉んでも柔らかいままで、上を向くことはない。
 
「おい、もっとちゃんと扱けよ」
「してんだろうが……」
「だったらなんで勃たねぇんだ」
「勃たねぇもんは勃たねぇ」
「……先生とする時はガチガチにおっ勃ててんだろ。けつでイキまくってんの、何回も見て知ってんだぞ。なんで今は勃たねぇんだ」
 
 苛立ちを隠せずに責めると、和泉は唇の端に微かな笑みを湛える。
 
「てめぇの短小チンポじゃあ、イけるもんもイけねぇよ」
「てッンめェ……ナメた口利きやがって! 自分の立場ってもんがわかってねぇのかァ!?」
 
 腸が煮えくり返る。俺は和泉に拳を一発お見舞いし、その勢いのままベッドへ押し倒した。膝裏を持って股を大きく開かせ、正常位で突き上げる。乾いた腸壁と擦れて痛い。尻からの出血も止まっていない。和泉は苦しそうに息を切らしているが、決して声は漏らさない。突かれる度に、乾いた空気が抜けるだけだ。
 
「クソ、クソ、ムカつくんだよ、てめぇッ! いつもいつも、俺の邪魔ばっかしやがってよォ! クソッ、何だよその目は! 嗤ってんだろ、俺のこと、嗤ってんだろッ!?」
 
 そうだ、この目。蔑むような目。こいつはいつもそうだ。何も言いはしないが、いつだって白い目で俺を見下している。内心嗤っているのだ。俺が気づかないとでも思っているのか。今、俺の方が圧倒的優位に立っているはずなのに、どうしてこいつは平気でこういう目をするんだ。自分の立場を弁えろ。
 
「クソッ、クソッ、ムカつくんだよッ、てめぇッ、中古便器のくせにッ……くっ……う゛ッ……!!」
 
 一番奥へと精液を叩き付ける。たっぷり注ぎ込んで、体に刻み付けてやる。和泉は不快そうに目元を引き攣らせる。
 
「はァ、はは……使い古しにしちゃあ、なかなかいいマ×コだったぜ。ザーメン零さねぇように、しっかり締めとけよ」
 
 ペニスを抜き去ると、粘着いた水音を立てて白濁が零れる。アナルからどろりと垂れていく。血と混じって薄く色付いている。和泉はティッシュを一枚取り、零れた精液を拭き取った。
 
「……次はてめぇが約束を果たす番だ」
「んあ? ……あー、あれねェ……」
 
 俺は気怠い体をベッドに横たえ、腕枕して考える。和泉はさっさと下着を履き、服を着始めている。男らしい精悍な肉体が、布の下に隠されていく。
 
「んじゃあ……今日は二回射精したから、動画二本消してやるよ」
「……はぁ?」
 
 和泉は感情を剥き出しにして俺を睨み付け、勢いよく胸倉を掴み持ち上げた。
 
「てめぇ、どういうつもりだ」
「言葉のまんまだけど? 射精一回につき動画一本消してやる」
「話が違ぇぞ」
「話って何だよ。一回寝ただけで全部思い通りになるなんて、そんな甘い話があるわけねぇだろ。頭悪ぃな」
「……騙したのか」
「だから、騙したって何の話だよ。そもそも約束なんかしてねぇって――」
 
 バギ、と左頬に重い衝撃。顔が半分潰れた。脳天に振動が走る。と思いきや、俺はベッドの上に蹲り、灼けるように痛む左頬を押さえて呻いていた。
 
「何が一回一本だ。馬鹿らしくて付き合ってられねぇ」
 
 和泉は身を翻して帰ろうとする。俺は呻きながら、どうにかこうにか声を発した。
 
「てめッ……ばらまいてやるからな……!」
「勝手にしろ。今更惜しくもねぇ」
「は、わかってねぇようだな……あの動画には、てめぇの先生も映ってんだぜ……!」
 
 ぴたり、と和泉は歩みを止める。一旦開いたドアが閉まる。
 
「はは、ひひひ……わかるか? 俺の言った意味がよォ……学校と、教育委員会と、あと警察にも送り付けてやるぜ。ネットにだってアップしてやる。そうしたらどうなるか、わからねぇわけじゃねぇだろう? てめぇの大事な、仁先生がよォ……」
 
 和泉は黙ったまま振り返らない。しかしその後ろ姿だけで、怒りの炎がめらめらと燃え滾っているのがわかる。
 
「今回だけは許してやるけどよォ、今度もしこんなことしたら、タダじゃ済まねぇからな。肝に銘じとけよ」
「……約束は……」
「あンだって?」
「一回一本っつう約束は、絶対に守ると誓えるのか」
「そりゃあ誓うぜ。男に二言はねぇっつうしな。まァでも、百――いや、二百……三百? とにかくすげぇ数溜め込んでっからな。何か月かかることやら」
 
 和泉は拳を握りしめる。わなわな震えている。
 
「絶対か」
「絶対だ。今日みてぇのをずうっと続けてりゃあ、いずれ解放してやるぜ。もちっと従順になったら、一回で二本消してやってもいい」
「……わかった」
 
 和泉は結局一度も振り返らないまま、ホテルの部屋を出ていった。冷たい音を立ててドアが閉まった。
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