螺旋階段

小貝川リン子

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13 修学旅行③

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 翌朝。ほんの二、三時間しか眠れなかったが、案外爽やかな朝を迎えられた。バイキング形式の朝食を終え、四日目は終日班別自由行動となる。タクシーで各々好きな場所を巡り、最終的に空港へ集合する。引率教員達は生徒が多く行きそうな場所を巡回しつつ、ある程度自由に観光を楽しんだ。女の先生などは喫茶店巡りを楽しんでいた。
 
 長かった修学旅行もいよいよ終わりだ。那覇空港を出発し、離陸時は騒がしかった機内もすぐに眠りに包まれた。羽田からのバス移動中も全く静かなもので、予定通り学校に帰ってこられた。大きな失敗もなく、事故も起きず、問題を起こす生徒もなく、本当に無事に終わって心底ほっとした。引率教員全員がそう思ったと思う。
 
 家に帰るまでが修学旅行です、と決まりきった文句で生徒達を解散させ、俺達教員も帰路に就く。悠月は校門で律儀に俺を待っており、一緒に帰った。夕暮れも過ぎていたから、こっそり手を繋いで帰った。
 
「せんせぇ……」
 
 道中何度も、悠月が切なげな眼差しを向けてきた。言いたいことは俺もわかっていて、その度に頭を撫でて宥めた。
 
 通常の倍以上も長い道のりだった。ようやくアパートに着いて玄関の扉を閉めるなり、悠月は俺の胸に飛び込んでくる。一所懸命背伸びをしてキスをせがむ。まるで興奮した子犬みたいに息が荒い。
 
「せんせぇ、せんせぇっ」
 
 俺ももう我慢なんてできなくて、靴を脱ぐ暇もないままに貪るようなキスをした。ガタン、と大きな音を立てて荷物が倒れるが気にする余裕もない。性急に舌を入れ、唾液を絡める。悠月は俺の首に腕を回し、髪の毛をくしゃりと掴んで寄り縋る。俺も悠月の腰に手を回して抱き寄せる。
 
「ん……せんせ……」
「もっと舌出せ」
「んっ……ふ……」
 
 涙が出そうになるくらい懐かしい味がする。
 
「は、ぁっ……せんせ……」
「ん、もっと」
 
 息継ぎの合間に口が離れる。それすらももったいなく感じ、俺は悠月の後頭部を押さえる。
 
 抱き寄せたままスラックス越しに尻を撫でると悠月は嫌々と首を振るが、それでも構わず尻の谷間を撫で続ける。ベルトを外して下着に手を入れ、直接後孔に指を這わすと、既に十分すぎるほど蕩けている。浅いところを掻き回すだけできゅうきゅう締まる。
 
「なぁ、なんでもう濡れてんの」
「ぅあ……しらな……」
「期待してびしょびしょにしてたんだ?」
「ちが、ぅぅ……」
「いつから? もしかして昼間から? ほんと、スケベな体しやがって」
「っふ、ぅ、だってぇ……」
 
 悠月は涙声で言い、俺の胸に頬をすり寄せる。
 
「だって、だっておれ、さみしくて……ずっとせんせぇに、さわってほしくて……ま、まってたんだ、こうなるのを、ずぅっと……だからっ、」
「ずっと我慢してたんだ」
「ぅん……さみしかったぁ」
「じゃ、いい子にはご褒美あげねぇとなぁ」
 
 前立腺を執拗に引っ掻くと、悠月は仰け反って喘ぐ。
 
「あ゛ッ! やっ、だめ、そこだめっ、せんせぇっ、」
「一回イッとけよ。ほら」
「ひっ、やッ、ぃ゛――」
 
 切羽詰まった声にもならないような悲鳴を上げ、腰を激しく跳ねさせて悠月は達した。記録に残るレベルで早い。絶頂後の弛緩した体がぐったりともたれ掛かってくる。悠月の忙しない息遣いだけが玄関に響く。
 
「は、ぅ……せんせ、ちゅ……」
 
 息も絶え絶えながら、悠月は舌を出してキスをせがむ。俺はその短い舌をぱくりと咥えて優しく吸う。悠月はビクッと全身を強張らせて俺に縋り付く。達したばかりのくせに腰を揺らし、俺の太腿にあそこを擦り付ける。
 
「はぁ、も、ほしぃ、せんせぇ……」
「歩ける?」
「んん……だっこして」
「抱っこって……赤ちゃんかよ」
「だって足……力ぬけて……」
 
 仕方ないので悠月の靴を脱がしてやり、俺も靴を脱ぎ、お姫様抱っこで布団まで運んだ。窓際の陽当たりのいい場所に布団を干して出掛けたので、敷く手間が省けた。仄かにお日様の香りがする。
 
「せんせぇ、ちゅうしてぇ」
「待て、服が……」
「やだ、ちゅうして」
「お前、わがままだぞ」
「帰ったらいっぱいしてくれるって、せんせぇ言ったもん」
「言ったか? そんなこと」
 
 悠月に頭を抱えられてキスをしながら、俺は手探りで服を剥いでいく。シャツのボタンを外し、スラックスを下着ごと下ろす。俺自身も暑くて敵わず、上も下も脱いで裸になる。引き出しからゴムを取り出そうとすると、悠月から待ったが掛かった。
 
「ごむやだ、なまでしてよぉ」
「でも後処理面倒だろ? 垂れてきたりとか」
「やだ、なまがいい……せんせぇ……」
 
 これ以上ないくらい甘えた声でねだってくるから堪らない。俺は悠月の足をうんと開かせて、思い切り腰を突き入れた。一気に奥まで入ってしまい、悠月は目を剥いて二度目の絶頂に至る。今回は精液が飛び出した。熟れた媚肉がビクビク波打つ。快感で腰がびりびり痺れる。
 
「ぁう゛、んん゛っ、せんせぇッ」
 
 達したばかりで辛いのか、悠月は俺の肩に齧り付いて悶える。しかし俺も俺で余裕がなく、悠月を優しく抱きしめつつ激しく腰を振る。浅いところを擦り上げ、奥まで穿つ。溶けた肉襞がねっとりと纏わり付く。
 
「あ゛、んぁ゛ッ、せんせすき、ん゛ッ、すきぃ、せんせぇ、すきッ」
「かわいいな、お前は」
「ぅぅう゛、すき、すきぃ、せんせぇ、すきだよぉ、すきっ」
 
 悠月はハートが乱舞しているような蕩けた声で狂ったように好き好き連呼する。あまりにも素直に求められて気恥ずかしいというか、尻の辺りがむず痒くなる。だけど胸がぽかぽかして、締め付けられるように苦しくて、なんだか泣きたくなる。
 
 俺だってこいつが何よりも大切だし、自分の一部だと思えるくらい愛している。ほんの四日触れられなかっただけなのに、今こうして狂ったように抱き潰している。四日ぶりに抱く悠月の体は柔らかく、いい匂いがし、舐めるとどこもかしこも甘かった。やや俯瞰すると、悠月の肌は四日前と比べて若干小麦色で、南国の太陽に灼かれたのだなとわかった。
 
 体を離したのが不安だったのか、悠月は両腕を延ばして俺を求める。もっとぎゅっとしてそばにいてほしい、と全身で訴えている。求めに応じて体を密着させ、抱きしめてやる。悠月も俺の背に手を回して抱きつく。汗で少し湿っている。
 
「せんせっ、もうおれ、ほしい、せんせぇのぜんぶ、ほしいよぉ、」
「ああ、俺はお前のもんだよ」
「んんぅ゛ッ、せんせぇすき、ぁん、すきぃ、すきだよぉ、せんせぇッ――」
 
 涙を流して叫び、悠月は三度目の絶頂を迎えた。俺も悠月の体内に精を吐き出す。四日も溜め込んだ精液は元気に悠月の胎へと帰っていく。
 
 俺がまだ全てを出し切らないうちに、悠月は電源が切れたみたいにすっと眠りに落ちてしまった。後はもういくら揺すっても大声を出してもぴくりとも起きない。俺も散々疲れていたので、風呂にも入らず荷物も片さず、悠月と寄り添って布団を被った。荷解きも洗濯も明日の自分に丸投げである。
 
 翌日昼までたっぷり眠り、二人で狭い風呂に入り、洗濯機を二度回した。昨日はずいぶん甘えてたなぁと揶揄うと、すっかり冷静になったらしい悠月がつれない態度を取るので、土産に買ってきたちんすこうを口に突っ込んでやった。結構おいしい、と言うので俺も食べた。甘じょっぱくて癖になる味だった。
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