汀の島

小貝川リン子

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九月第一週①-② ※※

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 寝入り端に、汀は例のごとく部屋を抜け出し、こっそりと俺の布団に潜り込んだ。せっかくうとうとしていたのに、子供の熱がぺったりくっついてくるものだから、俺は目が覚めた。
 
「何だよ。今日はしないぞ」
「えー」
「毎日するもんじゃねぇんだよ。明日だって学校だろ。授業中眠くなったら困るだろうが」
「じゃあ、ちゅーだけ。ちゅー」
 
 目を閉じて、誘うように唇を差し出すので、触れるだけのキスをした。それでも汀は飽き足らず、「もっと」とねだって短い舌をちょろっと覗かせる。俺は汀の顎を掬い、唇を寄せて、寸前でやめた。
 
「たまにはお前からやってみろよ」
 
 汀は、不思議そうに目をぱちくりさせる。
 
「可愛く甘えてるだけじゃ、欲しいものは手に入らないんだぞ」
「……何したらいいの?」
「そんなの自分で考えろ」
 
 汀はしばし逡巡し、しかし意を決したように顔を上げると、ぎゅっと目を瞑って唇を重ねた。唇を震わせて舌を出し、俺の渇いた唇を舐めて、甘えるように鼻を鳴らす。
 
「んっ……」
「……可愛いんだけど、もうちょっとエロくできねぇ?」
「えろ……?」
「俺がいつもしてやってるみたいにさ。ほら、もっとベロ出せよ」
 
 俺は、結局汀の顎を掬って、親指でその唇を捲った。唇は淡い桃色なのに、内側の粘膜は艶めく柘榴色。恥ずかしがって隠れる舌は、うんと深い紅色だ。俺が舌を出すと汀も真似て、べーっと舌を出す。
 
「ベロ同士をくっつけて、舐めたり吸ったりしてみ」
 
 汀は尻込みしながらも、俺の舌の先をちろりと舐めた。先端だけでなく、裏側にもそっと舌を這わす。腰に微弱な電気が走り、甘く痺れた。犬のように唾液が溢れて止まらないが、飲み込むこともできない。
 
「ぁ……ふぁ……ぅん……っ」
 
 汀はだらしなく口を開け、涎を零して、恍惚の表情で俺の舌にしゃぶり付く。娼婦顔負けのいやらしさだった。今この瞬間、俺の舌は性器と変わらない。
 
 俺は汀を抱き上げて、腹部に跨らせた。上半身も下半身も密着して、夢中で舌を擦り合わせる。重力に従って汀の唾液が垂れてくるのを、喉を鳴らして飲んだ。
 
 じきに、汀の腰が揺らめき始める。熱の発散の仕方を知らない、幼くぎこちない動きだが、確かに、微かな萌しを俺の下腹部に押し付ける腰つきだった。その小さな新芽を擦り付けられて、俺のそこもぐんぐん伸びる。あっという間に、出荷間際のゴーヤ程度のサイズに育った。
 
「んん゛……ふぁ……がくと、さ……ッ」
 
 熱の塊をぐりぐり押し付けるのに夢中で、キスが疎かになる。俺は汀の頭を押さえて、口をすっかり覆った。舌を絡め取って、声も出せないようにして。ずっと小刻みに震えていた汀の体は、一際大きく痙攣し、ピンと張り詰めて、深呼吸と共に弛緩した。汀は激しく胸を喘がせ、俺に体重を預けてくる。
 
「……イッちゃったな」
「んん……」
「眠れそうか?」
「ん……」
 
 汀の体をころんと転がして、布団の上へ横たえる。汀はぼんやりと天井を見上げていたが、俺はとりあえず下着を脱がして、吐き出したものを拭いてやった。
 
「ゃ……くすぐったい」
「染みになったら困るだろ」
「ん……でも……」
 
 おもむろに、汀は俺のゴーヤをむんずと掴んだ。痛くはなかった。何しろ、汀の手の方が柔らかい。
 
「いいよ、俺は。早く寝ねぇと、また寝不足だぞ」
「でも、さ……白いの、出したいんじゃないの……?」
 
 穢れのない瞳に見つめられて、反論できない。そんなの、出したいに決まっているじゃないか。当たり前だ。
 
「してあげる……?」
「はぁ? 何言って――」
 
 汀は、俺の脚の間に収まると、ズボンと下着をずり下ろした。おぞましくそそり立った男の象徴が露わにされる。「わっ」と悲鳴じみた声を上げるので、俺は掌で汀の目元を覆った。睫毛が触れてくすぐったかった。
 
「ガキが気ぃ遣ってんじゃねぇよ。俺は自分で勝手にどうにでもするから」
「じゃあ、またお尻使う?」
「おま、そんな言い方すんな」
「じゃあ、口でする?」
 
 目元を隠しているだけで、随分と大人びた表情に見えた。小さな口から覗く舌が、誘うように揺らめく。
 
「お前……そんなの、どこで覚えてきたんだよ」
「岳斗さんが昨日教えてくれたんじゃん」
 
 そういえばそうだった。何という罪深いことをしてくれたんだ、と昨夜の自分を殴り倒したくなる。けれど、汀のこの甘く清らかな舌と唇を穢すことを思うと、後ろ暗い興奮が腹の奥に芽生えるのもまた事実で。
 
 滴るほどの唾液を纏った薄い肉片が、醜い肉の塊に触れた。肉塊が溢れさす粘液と唾液とが混ざり合い、透明な糸を引く。己の罪を直視するようで恐ろしいのに、俺は目を離せなかった。そのくせ、汀の目元は隠したままだ。汀は手探りで肉塊を握る。しかも両手で。小さくて温かくて滑らかな手に直接触れられて、俺は一層硬くした。
 
 汀は、アイスキャンデーを舐める要領で、先端だけをぺろぺろ舐める。その仕草があまりにも幼くて、罪悪感と昂揚感を覚えた。もっと奥まで咥えさせたい。ぺろぺろする姿が可愛い。こんなにも愛らしい口を卑しい棒切れで汚してしまったのに、これ以上を望む自分が恐ろしい。けれど、こうなったからにはもう、取り返しのつかないところまで奪ってしまいたい。
 
 俺は、汀の頭をそっと掴み、その口に先端を滑り込ませた。汀が目を瞬かせるのが、睫毛が掌を撫でる感覚で分かった。独特の食感と風味に、汀は少し怯んでいるようだったが、怖気付いて口を離したりはしなかった。それどころか、舌を使って自ら奥へと招き入れる。
 
「んむ……」
 
 しかし、そんな風に頑張っても、先端の丸い部分しか汀の口には入らなかった。一生懸命口を開いて呑み込もうとするが、入らないものは入らない。針の穴に棒を通そうとしても無理な話だ。
 
「無理すんな。顎痛めるぞ」
「ん、ぅ……でもぉ……」
「いいから。そのまま舐めてみろ」
 
 汀は、先端を口に含んだ状態で、舌をちろちろ動かした。ちょうど、ロリポップキャンディを舐めるような感じだ。技巧も何もあったもんじゃない拙い舌遣いだが、アイスキャンデーのようにぺろぺろするよりはずっと様になっていた。何より、汀の口の中は柔らかくて温かくて窮屈で、処女の膣に似た質感があった。そう思うと、我慢汁がドバドバ溢れる。
 
 つい昨日までこの行為の存在すら知らなかった無垢なる子供の、物を食べるためにしか使われてこなかった清純な舌で、薄汚れた男の肉体を愛撫させている。興奮でくらくらした。欲に任せて腰を振り、汀の喉を突きたいところだが、僅かに残った理性が野性の暴走を許さなかった。
 
 俺は、汀の頭を掴んで股間から引き剥がした。ほとんど同時に雄の汁を噴き出したが、なけなしの冷静さでもって掌に受け止めた。汀の、真ん丸に開いた黒い瞳には、俺のこの醜態はどう映っただろうか。
 
「……飲みたかったのに」
 
 唾液塗れの口元を手で拭い、汀は言った。
 
「飲むもんじゃねぇって、昨日も言ったろ」
「でも、岳斗さんのなら不味くないかも」
「昨日不味がってただろうが」
「じゃなくて、その……」
 
 もじもじしながら、ぐっと顔を近付ける。
 
「……す、好きな人の、だから……」
 
 濡れた睫毛が、潤んだ瞳を彩る。俺はもう堪らなくなって、口づけをした。俺のものを舐めた汀の唇は、今までと変わらず甘かった。
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