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今も昔も変わらないのは…

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「おい!シュラ!昨日言ったアレ!出せ!」
今も昔もシェアルは、偉そうな所は変わってない。
「昔は、もう少し可愛げあったのにな」
ボソッと聞こえるか聞こえないか位で呟く…が
「聞こえてっからなぁ!?」
まるで獣みたいに睨みを効かせてくる。
けど、俺には効かない。
昔からされてると慣れてしまうものだ…
俺じゃなければ顔面蒼白で腰抜かしてただろうけどな。
「相変わらず、地獄耳だな…これ」
と、アレを渡す
「お前も昔は、もうちょっと表情筋柔らかかったけどな」とか言いながらクックックと笑いだす。
悪趣味な笑い方だ。
「昔と対して変わらない」
そう言い俺は、持ち場に戻る。
「そーかよー俺が名前付けてやった時めっちゃ可愛かったのになぁ?」ニヤニヤしながら言ってくる…
「そんな大昔の事覚えていない」
ふーん?と、面白そうに見てくるもんだから睨んでから戻った。
俺は、何処にでもいる普通の…
と、言いたいところだが…普通と違い過ぎるので言わないでおく。
まず、自己紹介からか?
俺は、ラガー・シュラル。
狐族で氷結魔法や水魔法を得意としている。
ラガーと言うのは、シェアルの名字に値するものだ。
今となれば、相棒なのか従者としてなのか分からないが…名前を付けてもらった事に感謝は、している。
だが、シェアルの隣に俺が居るのは、まだ不釣り合いなのだ…
あの美しい容姿もそうだが…頭脳も優れているし魔法も身体能力も共に長けている。
その点俺は、薄汚いグレーの髪の毛…目の色も灰色がかった赤色。
これは、この世界での忌み子の容姿と全く同じなのだ。
これのせいで…
いや、今は、仕事に集中すべきだ…
「あ、シュラルさん!交代の時間ですよ!」
と、部下に声をかけられ柄にも無く驚いてしまう。
「ど、どしたんすか?」
不安そうに見つめてくるのでいつもの無表情に戻ってから頭を撫でてやる。
この子は、7つの時に山に捨てられていたのを俺が拾ってしまったのだ。
今では、俺の一番信頼できる部下だ。
嬉しそうにしたあと上機嫌で仕事に戻っていった。
「シューラールー?俺には、頭撫でたりしねぇよなぁ?あぁ?そんなにアイツが大事かぁ?」
上機嫌で仕事に戻るハンクを面白くなさそうに言ってくる。
「お前は、子供じゃない。ハンクは、まだ子供だ…甘やかしてやらないとすぐ、無茶するからだ」
肩に乗せてきていた腕を振り払って休憩の為部屋に戻る。
「…お前は、俺のものだからな?忘れんなよ?シュラ」
はぁ、とため息をつきコクッと頷き部屋に戻る。
ベッドに腰掛け本を読む…
ほぼ暗記しているから面白味もない。
ダッダッダ!
「シュラルさん!来てください!!」
慌てた様子のハンクに事情を聞く。
「さっき外の見回りに出た奴等がボロボロになって帰って来たもんだから急いで治癒して話聞いたら、付近に騎士団の第一部隊が多数いたとのことで!」
騎士団……
何故こんな土地に…
「わかった、シェアルと外を見てくる、ハンク…念のためにここに結界を頼む」
そう言うと頷き結界を張りにいった。
「シェアル、聞いているんだろ、早く行こう。」
ドアの裏側から妖しい笑みを浮かべたシェアルが出てきた。
「さすが俺の相棒だなぁ、ま、んなこと言ってる場合じゃねぇな…『ご挨拶』に行くか」
自分の一番使い慣れた短刀を手に外へ向かった
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