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プロローグ
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私には前世の記憶がある。
この世界はBLゲームの世界。
お兄ちゃんはその主人公。
私はその妹だ。
攻略対象は4人いて、隠しキャラも一人いる。
お兄ちゃんの高校生編入学からストーリーが始まり、体育祭、文化祭、クリスマスなどのイベントを経て、一年生の終わりを迎える頃には彼らの中の誰かと愛し合ってエンディングを迎える。
はずだったんだけど。
お兄ちゃんは高校三年生になった。
そして、未だ5人の攻略対象達の誰とも恋仲になってはいない。
かといって彼女ができた気配もなく、剣道部で、精力的に部活動に勤しんでいる。
「花奈。入学おめでとう。今日から高校生だな。」
入学式の朝。
制服を着て、一階のリビングに入ってきた私にお兄ちゃんが声をかけてくれた。飲んでいた朝食後の珈琲をテーブルの上におくと、私を見て、花が咲くようににっこりと微笑む。
お兄ちゃんの名前は斎藤環。
稀に見る天使のような美少年だったんだけど、2年生になったあたりから背が伸び、部活で鍛えられたこともあり、スレンダーだけど鍛えられた肉体をもつ美青年に成長した。
妹の私から見ても、容姿端麗の言葉がしっくりくるかなりイケメンだ。
すると、お兄ちゃんの横に立っていた人が、私に近づいてきたかと思うと、手を広げて私を胸の中に迎え入れ、ぎゅっと抱きしめて、頭に優しくキスをおとしてきた。
「花奈、可愛い。制服似合ってるよ。でもなあ……ちょっとスカート短くないか?」
少し心配症なことを言うこの人は、お兄ちゃんの幼馴染み。
攻略対象の5人の内のひとり、一条蓮琉だ。
高校ではサッカー部に所属しており、コートを縦横無尽に駆け回る疾風のような攻撃を得意としている。その鍛えられた肉体に180cmをこえる背の高さに甘いマスク。彼に微笑まれた女性は間違いなく彼によろめくらしい。
爽やかスポーツマンタイプのイケメンだ。
「なに過保護な親みたいなこと言ってんの。長いほうでしょ。一条に群がる女生徒の方がよっぽど短いよ。ほら、ブサ犬ってば。早く座りなよ。折角の入学式なんだから可愛くしないと。」
座らせた私の髪を整え始めたこの人は、柴崎蓮。
お兄ちゃんの友達。
彼は、最初に会った時はいわゆる妨害キャラだった。
攻略対象の1人である四楓院先輩を尊敬するあまり、先輩がお兄ちゃんをかまうことに嫉妬して、お兄ちゃんを攻撃してきたのだ。
その影には別の妨害キャラである九条沙也加の姿がちらついていたのだけど。彼女に唆された柴崎蓮は、体育館裏で九条沙也加に示唆された男子生徒達と、お兄ちゃんを襲った。でもたまたまそこに居合わせた私を守ろうとしたことで、お兄ちゃんに許されて今は友達に落ち着いている。
将来メイクアップアーティストを目指しているらしく、練習台と言いながら、今みたいにヘアメイクをしてくれたりする。
私が昔飼っていたブサ可愛い犬に似ているらしく、私のことをブサ犬とよんでくるのは出会った頃から変わらない。
私は今日からお兄ちゃん達が通う高校に入学する。
お兄ちゃん達の高校はかなり偏差値が高い。
それはもう近隣でも有名な進学校だ。でも勉強だけじゃなくて、部活にも力をいれている文武両道な学校だ。
お兄ちゃん達の高校に受験を決めた中二の12月から苦節1年3ヶ月。
私はかなり受験勉強を頑張った。
はっきりいって、容姿も平凡だが頭の中身も平凡な私。
よく容姿端麗なお兄ちゃんとホントに兄妹?と言われるがほんとに兄妹だ。
戸籍でもきちんと証明されている。
そんなキングオブ平凡な私は、柴崎蓮の凄まじいスパルタ家庭教師に耐えた。
ボランティアで教えてくれるのに文句は言えないんだけどね。
勉強している後ろでニタリと笑いながら私を見下ろしてるんだよ?
問題が出来なかったら笑顔で30センチ物差しでつつかれるんだよ?
頑張ったかいもあり、無事に合格できたので、この制服を着てこの場にすわってるんだけど。
お兄ちゃんがニコニコしながら私に話しかけてきた。
「学校一緒にいけるな。すげえ楽しみ。」
「ほんとだよな。今日はまだ自転車には乗れないんだよな。早く申請が通るといいんだけどなあ。あ、自転車通学の許可が降りるまで俺の後ろに乗る?」
「二人乗りは法律で禁止されてるからね?ていうか、自分の立ち位置わかってる?学校の王子様の一条が女の子を後ろに乗せて行ったら学校がパニックになるからやめときなよ。」
「確かになあ。蓮琉と一緒に登校したら、すげえ騒ぎになるかも。花奈、俺と行こうな?」
「環ばっかりずるくねえか?」
「今花奈を抱きしめてキスしてたヤツが何言ってんだよ。俺だって花奈と一緒にいたいからな。」
「ねえ知ってる?そういうのシスコンっていうんだよ?ああ。妹バカともいうね。」
口では辛口な事を言いながらも柴崎蓮の手は素早い動きで私の髪を整えていく。
「はい。できた。……うん。今日の出来はまあまあかな。どう?」
「うわあ。妹ちゃん可愛い~。」
神出鬼没。
この言葉はまさに彼のためにあると思う。
彼の名前は三田陽向。
お兄ちゃんの攻略対象である。
入学当初からお兄ちゃんになついており、タマちゃん大好き!と公言してはばからないお兄ちゃん大好き人間である。
190cmを超す長身に、今は短く刈り込まれている茶髪に、ピアス。
身長と外見のわりに、どこかゆるい雰囲気をもつ彼は、基本誘われたら誰とでも寝るいわゆる遊び人だ。私が受験勉強を頑張っている間にもいろいろとお盛んだったみたいで、女の人の香水の香りをまといながら、ふらりと私の家に現れてはお兄ちゃんに追い出されていた。
今朝もどこかで嗅いだことのあるような有名なブランドのものだと推測される香りをまとっている。
「三田。お前また!香水くさいぞ?」
「えへへ。タマちゃん、今日はメンズ用のなんだよ~?いい香り?」
「え。そうなのか?てっきりまた女のとこにしけこんでたのかと思った。決めつけて悪かったな。」
「ううん?昨日寝た子からもらったんだあ。朝までは一緒にいなかったからね。ちゃんと家に帰ってからきたんだよ?」
「あ……そう。」
ほめて、ほめて?とうしろに勢いよく振っている尻尾の幻影が見えそうな三田くんに、お兄ちゃんは引きつった笑いをもらした。
三田くんはおじいちゃんの家で昔飼っていた犬のポン太に似ている。
髪の毛の色とか、体が大きいとことか。それと……寂しがり屋なところとか。
「妹ちゃん、入学おめでとう。」
「ありがとう。三田くん。」
「ふふっ。レンレンてば今日もイイ仕事してるね。このヘアスタイル妹ちゃんにぴったり。」
「でしょ?久々の自信作なんだよね。」
「うん。このままベッドに連れ込んで、ぐちゃぐちゃに乱したいくらい。うちの学校の制服ってセーラー服だからやりやすいんだよねえ。ブレザーもいいけど。ねえ、やる時って、セーラー服のスカーフはずす派?それともそのままつけとく?」
私はだんだん話の雲行きが怪しくなる三田くんに呆れたような視線を向けた。
蓮琉くんの方を見ると三田くんをじっとり睨みつけていた。
そして、蓮琉くんは素早く動くと、三田くんの服の襟をつかんだ。
「三田。花奈の前で下ネタはやめろ。そういうの聞かせたくない。」
「一条だって、想像してみなよ。ベッドに横たわる妹ちゃん。レンレンには悪いけど、ちょっといじった後だから髪はぐしゃぐしゃ。そんで、制服の隙間から指で辿って……。いててっ?」
「蓮琉~?想像するな?三田もそんくらいにしとけ。花奈が固まってる。」
お兄ちゃんが、蓮琉くんの背中をどついた後、三田くんの耳を引っ張った。
「君たちさあ、高校三年生になったんだから、もう少し落ち着かない?」
柴崎蓮が呆れたような声をだした。
「ていうか、そろそろ時間だよ。入学式行くんでしょ?」
「ほんとだ。花奈、行くぞ?父さんと母さんは仕事先から直接来るって言ってたからな。」
「はあい。」
慌てて立ち上がったお兄ちゃんに続いて立ち上がった私は、玄関に急いだ。
みんなが家から出た後にお兄ちゃんが玄関の鍵を閉めると、私を見て微笑んだ。
「よし。花奈いこうか。」
私は今日高校に入学する。
新しい環境に臨むことに、少し不安そうな顔をしたのかもしれない。
中学の時に仲が良かった彩子は近隣の女子高に入学したので人間関係もはじめからだ。
そんな私の様子に気がついた蓮琉くんが安心させるように私の頭をなでてくれてた。
三田くんはお兄ちゃんに抱きつきながら私をこっそりと伺っている。
柴崎蓮は、私の頬をムギュっと引っ張った。
「ほら、そんな顔しない。なんとかなるから。」
「大丈夫。俺も環もいるからな。なにかあったら言うんだぞ?すぐにかけつけるからならな?」
「はい!俺も!俺もいるし。俺タマちゃんと毎日会いに行く!」
元気づけてくれるお兄ちゃん達に、私は勇気づけられてふんわりと笑った……つもりだった。
「なにいってんの。斎藤も三田も一条も、学校で有名人でしょ。入学した途端悪目立ちさせる気?」
私は柴崎蓮をマジマジと見た。
中学校に入学した時のことを思い出す。
あの時も三年生のお姉様にかこまれて、あんた一条くんのナニ?って凄まれたんだった。
私は蓮琉くんと三田くんからジリジリと距離をとった。
「すみません!お気持ちだけ頂きます!行ってきまあす!」
「あっ……花奈!」
「妹ちゃん?」
後ろで蓮琉くんと三田くんの声がしたけど、私はこころを鬼にして走り出した。
ごめんなさい!
私は高校生活の三年間を平凡無事に送りたいのです!
この世界はBLゲームの世界。
お兄ちゃんはその主人公。
私はその妹だ。
攻略対象は4人いて、隠しキャラも一人いる。
お兄ちゃんの高校生編入学からストーリーが始まり、体育祭、文化祭、クリスマスなどのイベントを経て、一年生の終わりを迎える頃には彼らの中の誰かと愛し合ってエンディングを迎える。
はずだったんだけど。
お兄ちゃんは高校三年生になった。
そして、未だ5人の攻略対象達の誰とも恋仲になってはいない。
かといって彼女ができた気配もなく、剣道部で、精力的に部活動に勤しんでいる。
「花奈。入学おめでとう。今日から高校生だな。」
入学式の朝。
制服を着て、一階のリビングに入ってきた私にお兄ちゃんが声をかけてくれた。飲んでいた朝食後の珈琲をテーブルの上におくと、私を見て、花が咲くようににっこりと微笑む。
お兄ちゃんの名前は斎藤環。
稀に見る天使のような美少年だったんだけど、2年生になったあたりから背が伸び、部活で鍛えられたこともあり、スレンダーだけど鍛えられた肉体をもつ美青年に成長した。
妹の私から見ても、容姿端麗の言葉がしっくりくるかなりイケメンだ。
すると、お兄ちゃんの横に立っていた人が、私に近づいてきたかと思うと、手を広げて私を胸の中に迎え入れ、ぎゅっと抱きしめて、頭に優しくキスをおとしてきた。
「花奈、可愛い。制服似合ってるよ。でもなあ……ちょっとスカート短くないか?」
少し心配症なことを言うこの人は、お兄ちゃんの幼馴染み。
攻略対象の5人の内のひとり、一条蓮琉だ。
高校ではサッカー部に所属しており、コートを縦横無尽に駆け回る疾風のような攻撃を得意としている。その鍛えられた肉体に180cmをこえる背の高さに甘いマスク。彼に微笑まれた女性は間違いなく彼によろめくらしい。
爽やかスポーツマンタイプのイケメンだ。
「なに過保護な親みたいなこと言ってんの。長いほうでしょ。一条に群がる女生徒の方がよっぽど短いよ。ほら、ブサ犬ってば。早く座りなよ。折角の入学式なんだから可愛くしないと。」
座らせた私の髪を整え始めたこの人は、柴崎蓮。
お兄ちゃんの友達。
彼は、最初に会った時はいわゆる妨害キャラだった。
攻略対象の1人である四楓院先輩を尊敬するあまり、先輩がお兄ちゃんをかまうことに嫉妬して、お兄ちゃんを攻撃してきたのだ。
その影には別の妨害キャラである九条沙也加の姿がちらついていたのだけど。彼女に唆された柴崎蓮は、体育館裏で九条沙也加に示唆された男子生徒達と、お兄ちゃんを襲った。でもたまたまそこに居合わせた私を守ろうとしたことで、お兄ちゃんに許されて今は友達に落ち着いている。
将来メイクアップアーティストを目指しているらしく、練習台と言いながら、今みたいにヘアメイクをしてくれたりする。
私が昔飼っていたブサ可愛い犬に似ているらしく、私のことをブサ犬とよんでくるのは出会った頃から変わらない。
私は今日からお兄ちゃん達が通う高校に入学する。
お兄ちゃん達の高校はかなり偏差値が高い。
それはもう近隣でも有名な進学校だ。でも勉強だけじゃなくて、部活にも力をいれている文武両道な学校だ。
お兄ちゃん達の高校に受験を決めた中二の12月から苦節1年3ヶ月。
私はかなり受験勉強を頑張った。
はっきりいって、容姿も平凡だが頭の中身も平凡な私。
よく容姿端麗なお兄ちゃんとホントに兄妹?と言われるがほんとに兄妹だ。
戸籍でもきちんと証明されている。
そんなキングオブ平凡な私は、柴崎蓮の凄まじいスパルタ家庭教師に耐えた。
ボランティアで教えてくれるのに文句は言えないんだけどね。
勉強している後ろでニタリと笑いながら私を見下ろしてるんだよ?
問題が出来なかったら笑顔で30センチ物差しでつつかれるんだよ?
頑張ったかいもあり、無事に合格できたので、この制服を着てこの場にすわってるんだけど。
お兄ちゃんがニコニコしながら私に話しかけてきた。
「学校一緒にいけるな。すげえ楽しみ。」
「ほんとだよな。今日はまだ自転車には乗れないんだよな。早く申請が通るといいんだけどなあ。あ、自転車通学の許可が降りるまで俺の後ろに乗る?」
「二人乗りは法律で禁止されてるからね?ていうか、自分の立ち位置わかってる?学校の王子様の一条が女の子を後ろに乗せて行ったら学校がパニックになるからやめときなよ。」
「確かになあ。蓮琉と一緒に登校したら、すげえ騒ぎになるかも。花奈、俺と行こうな?」
「環ばっかりずるくねえか?」
「今花奈を抱きしめてキスしてたヤツが何言ってんだよ。俺だって花奈と一緒にいたいからな。」
「ねえ知ってる?そういうのシスコンっていうんだよ?ああ。妹バカともいうね。」
口では辛口な事を言いながらも柴崎蓮の手は素早い動きで私の髪を整えていく。
「はい。できた。……うん。今日の出来はまあまあかな。どう?」
「うわあ。妹ちゃん可愛い~。」
神出鬼没。
この言葉はまさに彼のためにあると思う。
彼の名前は三田陽向。
お兄ちゃんの攻略対象である。
入学当初からお兄ちゃんになついており、タマちゃん大好き!と公言してはばからないお兄ちゃん大好き人間である。
190cmを超す長身に、今は短く刈り込まれている茶髪に、ピアス。
身長と外見のわりに、どこかゆるい雰囲気をもつ彼は、基本誘われたら誰とでも寝るいわゆる遊び人だ。私が受験勉強を頑張っている間にもいろいろとお盛んだったみたいで、女の人の香水の香りをまといながら、ふらりと私の家に現れてはお兄ちゃんに追い出されていた。
今朝もどこかで嗅いだことのあるような有名なブランドのものだと推測される香りをまとっている。
「三田。お前また!香水くさいぞ?」
「えへへ。タマちゃん、今日はメンズ用のなんだよ~?いい香り?」
「え。そうなのか?てっきりまた女のとこにしけこんでたのかと思った。決めつけて悪かったな。」
「ううん?昨日寝た子からもらったんだあ。朝までは一緒にいなかったからね。ちゃんと家に帰ってからきたんだよ?」
「あ……そう。」
ほめて、ほめて?とうしろに勢いよく振っている尻尾の幻影が見えそうな三田くんに、お兄ちゃんは引きつった笑いをもらした。
三田くんはおじいちゃんの家で昔飼っていた犬のポン太に似ている。
髪の毛の色とか、体が大きいとことか。それと……寂しがり屋なところとか。
「妹ちゃん、入学おめでとう。」
「ありがとう。三田くん。」
「ふふっ。レンレンてば今日もイイ仕事してるね。このヘアスタイル妹ちゃんにぴったり。」
「でしょ?久々の自信作なんだよね。」
「うん。このままベッドに連れ込んで、ぐちゃぐちゃに乱したいくらい。うちの学校の制服ってセーラー服だからやりやすいんだよねえ。ブレザーもいいけど。ねえ、やる時って、セーラー服のスカーフはずす派?それともそのままつけとく?」
私はだんだん話の雲行きが怪しくなる三田くんに呆れたような視線を向けた。
蓮琉くんの方を見ると三田くんをじっとり睨みつけていた。
そして、蓮琉くんは素早く動くと、三田くんの服の襟をつかんだ。
「三田。花奈の前で下ネタはやめろ。そういうの聞かせたくない。」
「一条だって、想像してみなよ。ベッドに横たわる妹ちゃん。レンレンには悪いけど、ちょっといじった後だから髪はぐしゃぐしゃ。そんで、制服の隙間から指で辿って……。いててっ?」
「蓮琉~?想像するな?三田もそんくらいにしとけ。花奈が固まってる。」
お兄ちゃんが、蓮琉くんの背中をどついた後、三田くんの耳を引っ張った。
「君たちさあ、高校三年生になったんだから、もう少し落ち着かない?」
柴崎蓮が呆れたような声をだした。
「ていうか、そろそろ時間だよ。入学式行くんでしょ?」
「ほんとだ。花奈、行くぞ?父さんと母さんは仕事先から直接来るって言ってたからな。」
「はあい。」
慌てて立ち上がったお兄ちゃんに続いて立ち上がった私は、玄関に急いだ。
みんなが家から出た後にお兄ちゃんが玄関の鍵を閉めると、私を見て微笑んだ。
「よし。花奈いこうか。」
私は今日高校に入学する。
新しい環境に臨むことに、少し不安そうな顔をしたのかもしれない。
中学の時に仲が良かった彩子は近隣の女子高に入学したので人間関係もはじめからだ。
そんな私の様子に気がついた蓮琉くんが安心させるように私の頭をなでてくれてた。
三田くんはお兄ちゃんに抱きつきながら私をこっそりと伺っている。
柴崎蓮は、私の頬をムギュっと引っ張った。
「ほら、そんな顔しない。なんとかなるから。」
「大丈夫。俺も環もいるからな。なにかあったら言うんだぞ?すぐにかけつけるからならな?」
「はい!俺も!俺もいるし。俺タマちゃんと毎日会いに行く!」
元気づけてくれるお兄ちゃん達に、私は勇気づけられてふんわりと笑った……つもりだった。
「なにいってんの。斎藤も三田も一条も、学校で有名人でしょ。入学した途端悪目立ちさせる気?」
私は柴崎蓮をマジマジと見た。
中学校に入学した時のことを思い出す。
あの時も三年生のお姉様にかこまれて、あんた一条くんのナニ?って凄まれたんだった。
私は蓮琉くんと三田くんからジリジリと距離をとった。
「すみません!お気持ちだけ頂きます!行ってきまあす!」
「あっ……花奈!」
「妹ちゃん?」
後ろで蓮琉くんと三田くんの声がしたけど、私はこころを鬼にして走り出した。
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