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二
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3人の若者達は道無き道を掻き分けて
山奥へと進む。
鬱蒼とした林を超えて、
岩肌が露出している山道を進んでいく。
「随分と進んだけんども…、
まだ着きそうにねぇど」と七兵衛が呟く。
こうも道なき道を進んでいると、
流石に疲れを感じてくる。
それにめげずに進んでいると
平助が突然口を開いた。
「お…おい…なんか音がしないか?」
「音だど…どんな?」
吐く息混じりに七兵衛が聞き返す。
「ガラガラッ…というか、
ゴロゴロッ…というか…」
2人が辺りを見回したが、
特に変わったところはない。
「平助…
あんまりめった事言うもんでねぇど…」
少々うんざりしたような口調で
七兵衛が言った。
「ほ…本当に聞こえたんだ…!」
平助は焦った様子で言い返す。
「……でも、何にも聞こえな…」
溜息をついてやれやれという様子で
反論しようとした
その時だった。
「‼︎…2人とも止まれ‼︎」
義助が突然声を上げた!
ゴド…ゴドゴド…
左側から一抱え以上ありそうな大岩が
転げて来るのが目に入った。
「‼︎おぉわぁぁ!」
七兵衛が思わず驚きの声を上げる。
ゴゴ…ゴドゴド…ゴドン‼︎
大岩は3人の行く手を塞いでしまった。
「…平助がいなければ
タダでは済まなかったな…」
義助が安堵の息を漏らす。
「すまねぇ…めったな事言ってたのは
オイの方だど…」
尻餅をついたまま、
七兵衛が詫びた。
「おぉぉ…」
当の本人は腰が抜けてしまったようだったが…
夜を一度超えて、朝の薄暗い杉林の中を
歩いているとそれはいきなり現れた。
高くそびえる岩石の絶壁、
その足元にはポツンと小さな祠があった。
「…間違いないここだ」
「こぉれかぁ…いやぁくたびれたどぉ~」
「…思ったより…小さいなぁ…」
祠に近づき、手分けして辺りを見廻す。
鬼を封じたというなら
どこかに何らかの痕跡が見つかる筈だからだ。
だが、なかなか怪しいところが見当たらない。
何もないのではないかと全員が感じ始めていたその時‼︎
「……!、ちょっと手を貸してくれ、
これかもしれん」
祠の真裏、明らかに周りの岩と大きさの違う石が何かを塞ぐように積まれている。
誰かが何かを隠そうとしなければ、
このような不自然な状態にはなり得ない。
「これをどかせばいいんだど?」
「…で…でも、
本当に動かしていいだろうか…」
「他に怪しいところは無い、やってみよう」
祠の両端と中央に手を掛け、息を合わせて持ち上げる。
右にずらしてみると、小石の壁が現れたので手で掘り返す。
半刻ほど掘り進んだだろうか、七兵衛が声を上げた。
「………!、穴だ、穴が開いてるど!」
急いで掘り出すと地下に通ずる洞穴が現れた。
「この先にヤツがいるのか…」
深い深い闇の中へとゆっくりと進んでいく。
丁度目が慣れてきだした頃、
恐る恐るついてきていた
平助が何かに気付いた。
「お…おい…なんか音がしないか…」
「そりゃあ、鬼がいるってんだから……
鬼の声かなんかだど……」
グウォォォォ……‼︎
ゴドドドド…
ここにいる者達は皆、今の今まで鬼が
封じられていると信じきれていなかったが、
怪しく凄まじいこの音と振動が
その存在を確実なものとした。
背筋が凍り、頭から血の気が引き切るような
感覚を全員が感じた。
正直、逃げてしまいたくなるほどだったが、
そうはいかないのは重々承知していた。
だからこそ、感覚を研ぎ澄まし
少しの異変も見逃すわけにもいかなかった。
洞窟の突き当たりまで進んだ頃だろうか、
ヒンヤリと冷え切った空気に
妙な熱を感じるようになってきた。
義助が左腕を広げ、2人の行く手を制した。
洞穴の突き当たりに小山のようなモノが
蠢いているのがうっすら見えた。
「間違い無い…鬼だ」
義助は静かに呟いた。
山奥へと進む。
鬱蒼とした林を超えて、
岩肌が露出している山道を進んでいく。
「随分と進んだけんども…、
まだ着きそうにねぇど」と七兵衛が呟く。
こうも道なき道を進んでいると、
流石に疲れを感じてくる。
それにめげずに進んでいると
平助が突然口を開いた。
「お…おい…なんか音がしないか?」
「音だど…どんな?」
吐く息混じりに七兵衛が聞き返す。
「ガラガラッ…というか、
ゴロゴロッ…というか…」
2人が辺りを見回したが、
特に変わったところはない。
「平助…
あんまりめった事言うもんでねぇど…」
少々うんざりしたような口調で
七兵衛が言った。
「ほ…本当に聞こえたんだ…!」
平助は焦った様子で言い返す。
「……でも、何にも聞こえな…」
溜息をついてやれやれという様子で
反論しようとした
その時だった。
「‼︎…2人とも止まれ‼︎」
義助が突然声を上げた!
ゴド…ゴドゴド…
左側から一抱え以上ありそうな大岩が
転げて来るのが目に入った。
「‼︎おぉわぁぁ!」
七兵衛が思わず驚きの声を上げる。
ゴゴ…ゴドゴド…ゴドン‼︎
大岩は3人の行く手を塞いでしまった。
「…平助がいなければ
タダでは済まなかったな…」
義助が安堵の息を漏らす。
「すまねぇ…めったな事言ってたのは
オイの方だど…」
尻餅をついたまま、
七兵衛が詫びた。
「おぉぉ…」
当の本人は腰が抜けてしまったようだったが…
夜を一度超えて、朝の薄暗い杉林の中を
歩いているとそれはいきなり現れた。
高くそびえる岩石の絶壁、
その足元にはポツンと小さな祠があった。
「…間違いないここだ」
「こぉれかぁ…いやぁくたびれたどぉ~」
「…思ったより…小さいなぁ…」
祠に近づき、手分けして辺りを見廻す。
鬼を封じたというなら
どこかに何らかの痕跡が見つかる筈だからだ。
だが、なかなか怪しいところが見当たらない。
何もないのではないかと全員が感じ始めていたその時‼︎
「……!、ちょっと手を貸してくれ、
これかもしれん」
祠の真裏、明らかに周りの岩と大きさの違う石が何かを塞ぐように積まれている。
誰かが何かを隠そうとしなければ、
このような不自然な状態にはなり得ない。
「これをどかせばいいんだど?」
「…で…でも、
本当に動かしていいだろうか…」
「他に怪しいところは無い、やってみよう」
祠の両端と中央に手を掛け、息を合わせて持ち上げる。
右にずらしてみると、小石の壁が現れたので手で掘り返す。
半刻ほど掘り進んだだろうか、七兵衛が声を上げた。
「………!、穴だ、穴が開いてるど!」
急いで掘り出すと地下に通ずる洞穴が現れた。
「この先にヤツがいるのか…」
深い深い闇の中へとゆっくりと進んでいく。
丁度目が慣れてきだした頃、
恐る恐るついてきていた
平助が何かに気付いた。
「お…おい…なんか音がしないか…」
「そりゃあ、鬼がいるってんだから……
鬼の声かなんかだど……」
グウォォォォ……‼︎
ゴドドドド…
ここにいる者達は皆、今の今まで鬼が
封じられていると信じきれていなかったが、
怪しく凄まじいこの音と振動が
その存在を確実なものとした。
背筋が凍り、頭から血の気が引き切るような
感覚を全員が感じた。
正直、逃げてしまいたくなるほどだったが、
そうはいかないのは重々承知していた。
だからこそ、感覚を研ぎ澄まし
少しの異変も見逃すわけにもいかなかった。
洞窟の突き当たりまで進んだ頃だろうか、
ヒンヤリと冷え切った空気に
妙な熱を感じるようになってきた。
義助が左腕を広げ、2人の行く手を制した。
洞穴の突き当たりに小山のようなモノが
蠢いているのがうっすら見えた。
「間違い無い…鬼だ」
義助は静かに呟いた。
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