それはきっと、夜明け前のブルー

遠藤さや

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12.いつか、きっと

インターハイ①

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 八月も半ばを過ぎ、ついにインターハイの日がやってきた。
 と言っても、今日は三日間の日程で行われる大会の最終日。
 黒崎くんが朝陽くんと対決する100m自由形とリレー競技がある。

 三日間とも応援に行くつもりで張り切っていたけれど、黒崎くんから最終日だけでいいと断られてしまった。
 彼はその理由を言わなかったけれど、もしかしたら朝陽くんと会う可能性を考えてくれたのかもしれない。

 今日も朝から快晴で、真夏日確定の水泳日和だ。日差しは朝からすでに強くて、寝不足の目には辛い。
 自分が出場するわけでもないのに、私は緊張で昨夜はほとんど眠れなかった。

 毎年この時期にある夏のインターハイは、地域による持ち回りで大会が行われている。
 幸運なことに今年は地元の関東地区での開催で、近場なこともあり、学校からの応援団も結成されていた。

 由真ちゃんと夏梨ちゃんと待ち合わせをして会場に着くと、エントランスで手作りの派手なのぼりを持った吉永先生が待ち構えていた。
 額にハチマキを巻き、首からは大きなメガホンをぶら下げていて、他校生や一般の観客がいる中でかなり目立っている。

「ヨッシーの気合いの入り方、間違ってない?」

「いい先生なんだけどね……」

 由真ちゃんたちだけでなく、他の生徒たちも少し離れて遠巻きに見ている。
 でも、水泳部の人たちが見たら喜ぶだろうな。
 そう思って、私は部から貸し出されたカメラで吉永先生の写真を撮った。
 他にも、エントランスに掲げられた全国大会の看板や観客席、プールも写真に収める。
 大会の様子を撮っていると知ると、応援に来ているクラスメイトや先輩たちも、喜んでポーズを取ってくれた。


「ね、先に黒崎のところに会いに行こうよ」

「行くっ。そのあとに選手チェックねっ」

 由真ちゃんに誘われて、すっかりスイッチが入っている夏梨ちゃんと三人で水泳部の待機場所に向かうと、すでに人だかりができていた。
 きっとこの人壁の向こうに黒崎くんはいるんだろう。
 相変わらず、彼との距離は遠い。

 黒崎くんとは、あの日以来会えていない。
 会いたいと思っても、相変わらず彼との連絡手段を持たない私は、部活の行き帰りに外からプールを覗いて姿を探すことしかできなかった。
 それでも運良く姿を見られたのはほんの数回で、結局黒崎くんに応援の言葉すら伝えられていない。
 まさかブルーに頼むわけにもいかず、ほとんど話せないまま大会当日を迎えてしまっていた。
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