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6.雨の日の憂鬱
水泳部①
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写真部の活動は、週3回。プラス月に一度、参加自由の撮影会がある。
校内広報の役割はあるけれど、それ以外は基本的にのんびりで自由。カメラのことを聞けば頭がパンクするくらい詳しく教えてくれる親切な先輩もたくさんいて、初心者にも優しいクラブだ。
活動日の今日は、先日撮った各クラブの新入部員の集合写真を一年生部員で手分けして配ってまわることになっていた。
「意外に早く終わりそうだね。あとは水泳部だけ?」
夏梨ちゃんに聞かれて、念のために写真と交換に受け取った活動紹介の原稿とクラブリストを照らし合わせる。
朝から続く雨でグラウンドが使えず、室内競技と水泳部以外のほとんどのクラブがトレーニングセンターに集まっていたおかげで、かなり時間短縮ができた。
「うん、水泳部でおしまい。今日は室内プールの方で練習だって」
室内プールがある水泳部は、天候に左右されることなく練習ができる。朝は5時半から使用可能らしく、朝練に参加する部員のほとんどが始発で登校しているそうだ。黒崎くんが毎朝眠そうなのも頷ける。
室内プールへと続く渡り廊下に出ると、雨は小降りに変わっていた。西の空が少し明るくなってきている。帰るころには雨が上がっているかもしれない。
「よし、見るぞ筋肉!」
夏梨ちゃんが勢いよくプールの入口扉を開く。
遠足のときにも思ったけれど、夏梨ちゃんは実は筋肉好きだ。今日も写真部の先輩と盛り上がっていたことを思い出して、ふふっと頬がゆるむ。私にはわからない話でもはしゃぐ姿を見ているだけで楽しい。
通路を通りプールサイドの扉を開けると、室内から肌にまとわりつくような湿った空気が流れ出てきた。制服を着ているせいもあって、梅雨の時期の電車内みたいに蒸し暑い。
試合会場になることも多い学校自慢の室内プールには、階段状になった観覧席とプールサイド脇にガラス張りの観覧スペースがあって、生徒が自由に出入りできるようになっている。
マネージャーさんを探してプールサイドを歩きながらちらりと見ると、観覧スペースは見学の女の子でいっぱいだった。
離れているからよく見えないけれど、もしかしたらあの白石さんたちもいるかもしれない。そう思うと、なんとなく早足になった。
夏梨ちゃんいわく、見学している女の子のほとんどが黒崎くんのファンらしい。屋外プールで歓声をあげていた人たちを思い出し、彼の人気のすごさを改めて実感した。
あの中には、本気で黒崎くんのことが好きな子もいるのかな。今は興味がないと告白を断っている黒崎くんも、いつかこの中の誰かと付き合ったりするんだろうか。
湿度が高いせいか少し息苦しい。胸のあたりを手で押さえると、ため息がこぼれた。
黒崎くんとは、遠足の日以来まだ数えるほどしか話をしていない。と言うより、やっと挨拶を交わせるようになった程度だけれど。それだけでも私には大きな一歩だ。
黒崎くんは、口調はぶっきらぼうだけれど、嘘がなくてまっすぐだ。あの日彼の優しさに触れてから、私は少しずつそう感じるようになった。
それに、普段は無表情な彼が特に不機嫌そうに見えるときは、たいてい眠いときだ。おそらく怒ってはいない。……たぶん。
そばにいるとまだ緊張するし、何を話していいのかわからなくなるけれど、いつの間にか彼を苦手だと思うことはなくなっていた。
校内広報の役割はあるけれど、それ以外は基本的にのんびりで自由。カメラのことを聞けば頭がパンクするくらい詳しく教えてくれる親切な先輩もたくさんいて、初心者にも優しいクラブだ。
活動日の今日は、先日撮った各クラブの新入部員の集合写真を一年生部員で手分けして配ってまわることになっていた。
「意外に早く終わりそうだね。あとは水泳部だけ?」
夏梨ちゃんに聞かれて、念のために写真と交換に受け取った活動紹介の原稿とクラブリストを照らし合わせる。
朝から続く雨でグラウンドが使えず、室内競技と水泳部以外のほとんどのクラブがトレーニングセンターに集まっていたおかげで、かなり時間短縮ができた。
「うん、水泳部でおしまい。今日は室内プールの方で練習だって」
室内プールがある水泳部は、天候に左右されることなく練習ができる。朝は5時半から使用可能らしく、朝練に参加する部員のほとんどが始発で登校しているそうだ。黒崎くんが毎朝眠そうなのも頷ける。
室内プールへと続く渡り廊下に出ると、雨は小降りに変わっていた。西の空が少し明るくなってきている。帰るころには雨が上がっているかもしれない。
「よし、見るぞ筋肉!」
夏梨ちゃんが勢いよくプールの入口扉を開く。
遠足のときにも思ったけれど、夏梨ちゃんは実は筋肉好きだ。今日も写真部の先輩と盛り上がっていたことを思い出して、ふふっと頬がゆるむ。私にはわからない話でもはしゃぐ姿を見ているだけで楽しい。
通路を通りプールサイドの扉を開けると、室内から肌にまとわりつくような湿った空気が流れ出てきた。制服を着ているせいもあって、梅雨の時期の電車内みたいに蒸し暑い。
試合会場になることも多い学校自慢の室内プールには、階段状になった観覧席とプールサイド脇にガラス張りの観覧スペースがあって、生徒が自由に出入りできるようになっている。
マネージャーさんを探してプールサイドを歩きながらちらりと見ると、観覧スペースは見学の女の子でいっぱいだった。
離れているからよく見えないけれど、もしかしたらあの白石さんたちもいるかもしれない。そう思うと、なんとなく早足になった。
夏梨ちゃんいわく、見学している女の子のほとんどが黒崎くんのファンらしい。屋外プールで歓声をあげていた人たちを思い出し、彼の人気のすごさを改めて実感した。
あの中には、本気で黒崎くんのことが好きな子もいるのかな。今は興味がないと告白を断っている黒崎くんも、いつかこの中の誰かと付き合ったりするんだろうか。
湿度が高いせいか少し息苦しい。胸のあたりを手で押さえると、ため息がこぼれた。
黒崎くんとは、遠足の日以来まだ数えるほどしか話をしていない。と言うより、やっと挨拶を交わせるようになった程度だけれど。それだけでも私には大きな一歩だ。
黒崎くんは、口調はぶっきらぼうだけれど、嘘がなくてまっすぐだ。あの日彼の優しさに触れてから、私は少しずつそう感じるようになった。
それに、普段は無表情な彼が特に不機嫌そうに見えるときは、たいてい眠いときだ。おそらく怒ってはいない。……たぶん。
そばにいるとまだ緊張するし、何を話していいのかわからなくなるけれど、いつの間にか彼を苦手だと思うことはなくなっていた。
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