それはきっと、夜明け前のブルー

遠藤さや

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5.家に帰るまでが遠足です

帰り道①

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 揺り起こされて目を覚ますと、バスは学校に到着していた。
 かなり疲れていたようで、夏梨ちゃんと話しているうちに寝てしまったらしい。
 身体中が痛い。特に靴ずれの痛みがひどくて、歩くのもやっとだ。

 まだ話し足りない夏梨ちゃんの寄り道の誘いを断り、足を引きずりなんとか駅にたどり着いたときには、水色の空にほんのりと柔らかな橙色が混じりはじめていた。
 ママに連絡して、迎えに来てもらえばよかったかな。
 そう思いながら、ホームに到着した電車に乗り込む。夕方になり、帰路に着く人で電車内は混み始めていた。
 幸運なことにひとつだけ空いている席を見つけて、まわりを確かめてからリュックを抱きしめて座る。重力から解放されて足がふあっと軽くなり、思わず息がもれた。

 ……ああ、寝ちゃいそう。

 電車の揺れが心地よくて、身体の力が抜けていく。
 眠気を誘われてついウトウトしていると、いくつ目かの駅で妊婦さんが乗り込んできた。ゆっくりお腹を守るように撫でながら歩いてきて、手すりに掴まっている。
 ハッとしてまわりを見回すと、車内はかなり混み合っていて空いている席はない。あわてて立ち上がり、声をかけた。

「あの、よかったらどうぞ。私、もう降りますので」

 降りる準備をするふりをして隣の車両に移る。降りる駅はまだ先だ。
 さっきまで心地よかった電車の揺れが、かかとの傷に響いてさらに痛む。扉に寄りかかったり手すりを持ったりして誤魔化そうとしたけれど、結局最寄り駅に着くころには立っていることもつらくなって、駅のホームのベンチに座り込んだ。
 ちょっとだけ休憩してから帰ろう。今はもう歩けそうにない。
 ベンチに腰を下ろし、かかとだけ靴を脱いで傷口を確かめる。学校を出るときに貼り替えた絆創膏にはまた真っ赤な血がにじんでいた。

「うう、これは歩けないなぁ……」

 思わず声がもれる。
 靴のかかとを踏むのはイヤだけれど、これ以上ちゃんと靴を履いては歩けない。
 仕方なく靴のかかとを中に折り込んでいると、頭上に影が差して手元がふっと陰る。それと同時に、うつむく視界に黒色のスニーカーが入ってきた。

「……さっきから、何してんの?」

 続いて降ってきた、聞き覚えのある声。

 あれ、今日お昼にも同じようなことを言われたような……。

 そう思いながらおそるおそる顔を上げると、呆れ顔の黒崎くんが立っていた。
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