それはきっと、夜明け前のブルー

遠藤さや

文字の大きさ
上 下
20 / 109
4.ハードモードなハイキング

飯盒炊爨②

しおりを挟む
「わ、フラれた?」

「公開告白が公開処刑になっちゃったかぁ」

「自信満々だったのに、恥ずかしいね」

 さっきの女の子たちが、声をおとして話しながらクスクス笑っている。

 ……ああ、やだな。

 悪意にふれると、息苦しくなる。きっと、私も同じように言われていたんだろう。そう思うとチクチクと心が痛む。
 でも、意気地なしの私は彼女たちに何か言うこともできなくて、モヤモヤした気持ちを野菜にぶつけるしかなかった。

 ……告白だったのかな。

 どうしても気になって、もう一度かまどの方を見る。黒崎くんの姿を探すと、彼は何事もなかったように男の子たちと話していた。
 あんなに注目を集めていたのに、まったく気にしてないみたいだ。
 前に由真ちゃんと夏梨ちゃんが言っていた、黒崎くんが告白を「興味ない」のひとことで断ったという話を思い出す。
 今回もそうだったのかな。勇気を出してした告白をそんなひとことで断るのは、ちょっとひどいなと思ってしまう。

 想いをこめて告白してそんなふうに切り捨てられたら、私もきっと泣いちゃうだろうな……。 

 そこまで考えて、急に恥ずかしくなった。男の子が苦手な私が告白なんて、考えるだけでおこがましい気がした。
 私には縁のないことだ。
 頭の中の想像をパッパッとふり払う。気を取り直して、切った野菜とお肉を鍋で順番に炒めていく。
 今のところ順調だ。でき上がったら、写真を撮って由真ちゃんに送ろう。
 よし、と心の中でひとり頷いた、そのとき。

「北野」

 名前を呼ばれてふり向くと、黒崎くんが立っていた。

 わ、わわわっ。

 さっきまで渦中にいた人が現れて、ドキッと心臓が跳ね上がる。同時にその場の空気がざわりと波立ち、一気にこちらに向けられるたくさんの視線を肌で感じた。

「何か手伝うことある?」

「だ、だいじょぶ……煮込んでる、ので、あっあとはルーを」

 話しかけられたことと注目を集めていることで、いつも以上にしどろもどろになる。噛みまくっていることが恥ずかしくて、じわじわと頬が熱くなっていくのがわかった。

「その、入れるだけ、だから……」

 徐々に声がしぼんでいく。いつものように黒崎くんの表情が不機嫌になるのを見たくなくて、私はお鍋の様子を見るふりをして、すっと目をそらした。
 さっき作業台の向こうにいた女の子たちが、視界の端でこちらを見て何か話している。私がこっぴどくフラれたという噂話をまた思い出し、ずしりと気が重くなった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ
青春
K市内一と言われる超絶美少女の高校三年生柊美久。そして同じ高校三年生の武智悠斗は、何故か彼女に絡まれ疎まれる。何をしたのか覚えがないが、とにかく何かと文句を言われる毎日。だが、それでも彼女に歯向かえない事情があるようで……。疋田美里という、主人公がバイト先で知り合った可愛い女子高生。彼女の存在がより一層、この物語を複雑化させていくようで。 しょっぱなヒロインから嫌われるという、ちょっとひねくれた恋愛小説。

【完結】カワイイ子猫のつくり方

龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。 無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

ハヤテの背負い

七星満実
青春
父の影響で幼い頃から柔道に勤しんできた沢渡颯(さわたりはやて)。 その情熱は歳を重ねるたびに加速していき、道場の同年代で颯に敵う者は居なくなった。 師範からも将来を有望視され、颯は父との約束だったオリンピックで金メダルを獲るという目標に邁進し、周囲もその実現を信じて疑わなかった。 時は流れ、颯が中学二年で初段を取得し黒帯になった頃、道場に新しい生徒がやってくる。 この街に越して来たばかりの中学三年、新哲真(あらたてっしん)。 彼の柔道の実力は、颯のそれを遥かに凌ぐものだったーー。 夢。親子。友情。初恋。挫折。奮起。そして、最初にして最大のライバル。 様々な事情の中で揺れ惑いながら、高校生になった颯は全身全霊を込めて背負う。 柔道を通して一人の少年の成長と挑戦を描く、青春熱戦柔道ストーリー。

夏休み、隣の席の可愛いオバケと恋をしました。

みっちゃん
青春
『俺の隣の席はいつも空いている。』 俺、九重大地の左隣の席は本格的に夏休みが始まる今日この日まで埋まることは無かった。 しかしある日、授業中に居眠りして目を覚ますと隣の席に女の子が座っていた。 「私、、オバケだもん!」 出会って直ぐにそんなことを言っている彼女の勢いに乗せられて友達となってしまった俺の夏休みは色濃いものとなっていく。 信じること、友達の大切さ、昔の事で出来なかったことが彼女の影響で出来るようになるのか。 ちょっぴり早い夏の思い出を一緒に作っていく。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

処理中です...