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4.ハードモードなハイキング
飯盒炊爨②
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「わ、フラれた?」
「公開告白が公開処刑になっちゃったかぁ」
「自信満々だったのに、恥ずかしいね」
さっきの女の子たちが、声をおとして話しながらクスクス笑っている。
……ああ、やだな。
悪意にふれると、息苦しくなる。きっと、私も同じように言われていたんだろう。そう思うとチクチクと心が痛む。
でも、意気地なしの私は彼女たちに何か言うこともできなくて、モヤモヤした気持ちを野菜にぶつけるしかなかった。
……告白だったのかな。
どうしても気になって、もう一度かまどの方を見る。黒崎くんの姿を探すと、彼は何事もなかったように男の子たちと話していた。
あんなに注目を集めていたのに、まったく気にしてないみたいだ。
前に由真ちゃんと夏梨ちゃんが言っていた、黒崎くんが告白を「興味ない」のひとことで断ったという話を思い出す。
今回もそうだったのかな。勇気を出してした告白をそんなひとことで断るのは、ちょっとひどいなと思ってしまう。
想いをこめて告白してそんなふうに切り捨てられたら、私もきっと泣いちゃうだろうな……。
そこまで考えて、急に恥ずかしくなった。男の子が苦手な私が告白なんて、考えるだけでおこがましい気がした。
私には縁のないことだ。
頭の中の想像をパッパッとふり払う。気を取り直して、切った野菜とお肉を鍋で順番に炒めていく。
今のところ順調だ。でき上がったら、写真を撮って由真ちゃんに送ろう。
よし、と心の中でひとり頷いた、そのとき。
「北野」
名前を呼ばれてふり向くと、黒崎くんが立っていた。
わ、わわわっ。
さっきまで渦中にいた人が現れて、ドキッと心臓が跳ね上がる。同時にその場の空気がざわりと波立ち、一気にこちらに向けられるたくさんの視線を肌で感じた。
「何か手伝うことある?」
「だ、だいじょぶ……煮込んでる、ので、あっあとはルーを」
話しかけられたことと注目を集めていることで、いつも以上にしどろもどろになる。噛みまくっていることが恥ずかしくて、じわじわと頬が熱くなっていくのがわかった。
「その、入れるだけ、だから……」
徐々に声がしぼんでいく。いつものように黒崎くんの表情が不機嫌になるのを見たくなくて、私はお鍋の様子を見るふりをして、すっと目をそらした。
さっき作業台の向こうにいた女の子たちが、視界の端でこちらを見て何か話している。私がこっぴどくフラれたという噂話をまた思い出し、ずしりと気が重くなった。
「公開告白が公開処刑になっちゃったかぁ」
「自信満々だったのに、恥ずかしいね」
さっきの女の子たちが、声をおとして話しながらクスクス笑っている。
……ああ、やだな。
悪意にふれると、息苦しくなる。きっと、私も同じように言われていたんだろう。そう思うとチクチクと心が痛む。
でも、意気地なしの私は彼女たちに何か言うこともできなくて、モヤモヤした気持ちを野菜にぶつけるしかなかった。
……告白だったのかな。
どうしても気になって、もう一度かまどの方を見る。黒崎くんの姿を探すと、彼は何事もなかったように男の子たちと話していた。
あんなに注目を集めていたのに、まったく気にしてないみたいだ。
前に由真ちゃんと夏梨ちゃんが言っていた、黒崎くんが告白を「興味ない」のひとことで断ったという話を思い出す。
今回もそうだったのかな。勇気を出してした告白をそんなひとことで断るのは、ちょっとひどいなと思ってしまう。
想いをこめて告白してそんなふうに切り捨てられたら、私もきっと泣いちゃうだろうな……。
そこまで考えて、急に恥ずかしくなった。男の子が苦手な私が告白なんて、考えるだけでおこがましい気がした。
私には縁のないことだ。
頭の中の想像をパッパッとふり払う。気を取り直して、切った野菜とお肉を鍋で順番に炒めていく。
今のところ順調だ。でき上がったら、写真を撮って由真ちゃんに送ろう。
よし、と心の中でひとり頷いた、そのとき。
「北野」
名前を呼ばれてふり向くと、黒崎くんが立っていた。
わ、わわわっ。
さっきまで渦中にいた人が現れて、ドキッと心臓が跳ね上がる。同時にその場の空気がざわりと波立ち、一気にこちらに向けられるたくさんの視線を肌で感じた。
「何か手伝うことある?」
「だ、だいじょぶ……煮込んでる、ので、あっあとはルーを」
話しかけられたことと注目を集めていることで、いつも以上にしどろもどろになる。噛みまくっていることが恥ずかしくて、じわじわと頬が熱くなっていくのがわかった。
「その、入れるだけ、だから……」
徐々に声がしぼんでいく。いつものように黒崎くんの表情が不機嫌になるのを見たくなくて、私はお鍋の様子を見るふりをして、すっと目をそらした。
さっき作業台の向こうにいた女の子たちが、視界の端でこちらを見て何か話している。私がこっぴどくフラれたという噂話をまた思い出し、ずしりと気が重くなった。
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