それはきっと、夜明け前のブルー

遠藤さや

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3.前途多難な石の日々

石③

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 このままずっとテスト期間が続けばいいのに。
 そう願っても叶うわけはなく、中間考査の全日程が終わってまた窓際の四面楚歌席に戻った日。吉永先生から、遠足のお知らせがあった。

「配ったしおりの通り、六月一日に遠足があります。内容はハイキングと飯盒炊さん。ハイキングと聞くとピクニックみたいなイメージを持つかもしれませんが、実際は山の中を10kmほど歩きます。はっきり言って、ハードです」

 教室内がとたんに騒がしくなった。長谷くんが立ち上がり、先生におやつのことを質問してさっそく笑いを誘っている。
 ざわめきの中には長距離を歩くことへの不満の声も多いけれど、私は密かにワクワクしていた。
 学校の外で友だちと過ごすのは楽しいし、実はこう見えても、けっこう運動が得意だったりする。泳ぐのは苦手だけれど、前の学校では陸上部に入っていたくらい走るのも歩くのも好きだ。
 問題は行動グループの班分けのみ。できれば、女の子だけの班がいい。


「今回の班分けは出席番号順です。1番から5番が一班。6番から10番が二班」

 わわわ……!

 吉永先生の言葉に、思わずピンと背筋が伸びた。
 出席番号順なら、11番の由真ちゃんと12番の私は同じ班になる。他に男の子がいたとしても、由真ちゃんが一緒なら全然いい。

「今から出席番号順に座って、班ごとに係を決めていってね」

 先生が黒板に係名を書いていく。私はこみ上げてくる嬉しさでゆるむ口元を、誰にも見られないようにしおりで隠した。
 今日はこのことを手紙に書こう。
 そう思いながら由真ちゃんの姿を探し、12番の席へと向かう。由真ちゃんは、すでに同じ班の人と机をくっつけ始めていた。

「由真ちゃん、一緒の班だよ! 私、めちゃくちゃ美味しいカレー作るねっ」

 嬉しくてたまらなくて、背中に飛びつく。けれど、振り向いた由真ちゃんは、微妙な表情をしていた。

「詩、がんばろうね。休むのは絶対ナシだからねっ」

「う、うん、休まないよ。どうしたの?」

 不思議に思って聞き返すと、生温かい笑みを浮かべたまま、由真ちゃんが大きな目だけをゆっくりと動かして後ろを指し示す。その視線を追って、私は彼女の表情と言葉の意味を知った。

 あ……。

 さっきまでのワクワクがすうっと消えていく。顔に出しちゃダメだと思ったけれど、落胆は隠せなかった。

 そこには、不機嫌そうな黒崎くんが立っていた。
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